米Qualcommのシニア・マネージャーに話を聞く
完全ワイヤレスイヤホンを次世代のレベルへ導く新技術、「Qualcomm TWS Plus」に迫る
米Qualcomm(クアルコム)は、今年1月に開催されたCES 2018にて、Bluetoothオーディオ向けの新SoC「QCC5100」を発表した(山本敦氏によるレポート)。このチップを組み込んだ完全ワイヤレスイヤホンは、特にクアルコムのモバイル向けチップセットのフラグシップSoC「Snapdragon 845」シリーズを搭載するスマートフォンなどの端末との組み合わせで、「音が切れにくく」「バッテリーが長持ちする」ようになると言われている。新技術の名称も「Qualcomm TrueWireless Stereo Plus」に決定した。
QCC5100を搭載するワイヤレスオーディオ機器でどのようなことができるのか、何が便利になるのか。米クアルコムのVoice and Music部門 プロダクトマーケティングのシニア・マネージャーであるGuy Gampell氏に改めて詳細を伺いながら、情報をブラッシュアップしてみたい。
■クアルコムが「QCC5100」を開発した背景
「半導体メーカーが開発するオーディオ用ICチップは、音楽リスニングのトレンドを映し出す鏡」だとGampell氏が語る。ポータブルオーディオのメインデバイスとして、いまや世界中で多くのユーザーがスマートフォンを選ぶようになった。2016年秋にアナログイヤホン端子のないiPhone 7シリーズが発売されてからは、ワイヤレスタイプのヘッドホン・イヤホンが勢いよく伸び続けている。
デジタル音楽ソースのトレンドもCDからCDリッピングした音楽ファイル、インターネット配信によるダウンロードファイルへと変遷してきた。最近ではSpotifyやApple Musicなどのクラウド配信型のストリーミングサービスが主流になっている。QCC5100は、スマートフォンによるモバイルリスニングの利便性を起点に、音楽体験全体をより充実したものにすることを目指して開発されたSoCだと言える。
■従来のチップから何が進化したのか
QCC5100は、通信分野のエキスパートである米クアルコムがオーディオ向け半導体の開発に長い歴史を持つ英CSRを2015年にグループ傘下としてから、両社の技術資産によるシナジーにより生まれた初めてのBluetoothオーディオ向けコンポーネントだ。
QCC5100の開発がスタートした時に掲げられた目標は「低消費電力化」だったとGampell氏は振り返る。「ワイヤレスイヤホンの小型化が進む中で、従来のバッテリーサイズでもより長い駆動時間を確保できる省電力性能に優れるチップが必要になると考えました」。
QCC5100では、クアルコムが提供する現行のBluetoothオーディオ向けSoC「CSR8675」シリーズと比べて約65%の消費電力低減を達成している。最終製品に実装された場合を単純比較すると、CSR8675を搭載するワイヤレスイヤホンの連続駆動が約3時間までだとすれば、QCC5100では約9時間まで伸ばせることになる。
チップのフットプリントも小型化されているので、基板の実装面積も抑えられるという。ところがICチップ全体のパフォーマンスについては一切妥協することなく、集積効率を高めたことで小型化・低消費電力化が実現できていることが大きなポイントだ。QCC5100にはクアッドコアのCPUとDSPを搭載。CSR8675に比べて約2倍に匹敵する処理能力を備えている。
「コーデックはaptXとaptX HDの両方をサポートします。Bluetooth 5.0に対応して、BLEの最大速度・最大通信距離のパフォーマンスが向上しています。FF(フィードフォワード)とFB(フィードバック)のハイブリッド・ノイズキャンセリング機能も搭載しました。
さらにセンシングデバイスから送られてくる情報も処理できるよう、高性能なDSPもビルトインしています。またAIアシスタントなどに連動する音声インターフェースも組み込めるよう、発声されたトリガーワードを正確に検知して、続く機能を素速くアクティベートするためのSVA(Snapdragon Voice Activation)の機能も乗せています。
つまりこの高度な機能を統合したSoCを採用することにより、他の半導体を付け足すことなく最先端のスマートオーディオを容易に開発できるようになります」(Guy Gampell氏)。
QCC5100を搭載するワイヤレスオーディオ機器でどのようなことができるのか、何が便利になるのか。米クアルコムのVoice and Music部門 プロダクトマーケティングのシニア・マネージャーであるGuy Gampell氏に改めて詳細を伺いながら、情報をブラッシュアップしてみたい。
■クアルコムが「QCC5100」を開発した背景
「半導体メーカーが開発するオーディオ用ICチップは、音楽リスニングのトレンドを映し出す鏡」だとGampell氏が語る。ポータブルオーディオのメインデバイスとして、いまや世界中で多くのユーザーがスマートフォンを選ぶようになった。2016年秋にアナログイヤホン端子のないiPhone 7シリーズが発売されてからは、ワイヤレスタイプのヘッドホン・イヤホンが勢いよく伸び続けている。
デジタル音楽ソースのトレンドもCDからCDリッピングした音楽ファイル、インターネット配信によるダウンロードファイルへと変遷してきた。最近ではSpotifyやApple Musicなどのクラウド配信型のストリーミングサービスが主流になっている。QCC5100は、スマートフォンによるモバイルリスニングの利便性を起点に、音楽体験全体をより充実したものにすることを目指して開発されたSoCだと言える。
■従来のチップから何が進化したのか
QCC5100は、通信分野のエキスパートである米クアルコムがオーディオ向け半導体の開発に長い歴史を持つ英CSRを2015年にグループ傘下としてから、両社の技術資産によるシナジーにより生まれた初めてのBluetoothオーディオ向けコンポーネントだ。
QCC5100の開発がスタートした時に掲げられた目標は「低消費電力化」だったとGampell氏は振り返る。「ワイヤレスイヤホンの小型化が進む中で、従来のバッテリーサイズでもより長い駆動時間を確保できる省電力性能に優れるチップが必要になると考えました」。
QCC5100では、クアルコムが提供する現行のBluetoothオーディオ向けSoC「CSR8675」シリーズと比べて約65%の消費電力低減を達成している。最終製品に実装された場合を単純比較すると、CSR8675を搭載するワイヤレスイヤホンの連続駆動が約3時間までだとすれば、QCC5100では約9時間まで伸ばせることになる。
チップのフットプリントも小型化されているので、基板の実装面積も抑えられるという。ところがICチップ全体のパフォーマンスについては一切妥協することなく、集積効率を高めたことで小型化・低消費電力化が実現できていることが大きなポイントだ。QCC5100にはクアッドコアのCPUとDSPを搭載。CSR8675に比べて約2倍に匹敵する処理能力を備えている。
「コーデックはaptXとaptX HDの両方をサポートします。Bluetooth 5.0に対応して、BLEの最大速度・最大通信距離のパフォーマンスが向上しています。FF(フィードフォワード)とFB(フィードバック)のハイブリッド・ノイズキャンセリング機能も搭載しました。
さらにセンシングデバイスから送られてくる情報も処理できるよう、高性能なDSPもビルトインしています。またAIアシスタントなどに連動する音声インターフェースも組み込めるよう、発声されたトリガーワードを正確に検知して、続く機能を素速くアクティベートするためのSVA(Snapdragon Voice Activation)の機能も乗せています。
つまりこの高度な機能を統合したSoCを採用することにより、他の半導体を付け足すことなく最先端のスマートオーディオを容易に開発できるようになります」(Guy Gampell氏)。
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