高性能なオールインワンモデル
エソテリックのA級プリメイン「F-03A」を聴く。レコードも解像度高く堪能できる秀作
■エソテリックのプリメインアンプ「F-03A」。非常に高い剛性を持った重量級の筐体
「F-03A」は、エソテリックのセカンドトップのプリメインアンプである。同時にリリースされた「F-05」とは双子の間柄にあり、F-05がAB級動作機であるのに対して、本機はA級方式で動作する。A級動作ゆえに最大出力は30W×2(8Ω)/60W×2(4Ω)と控えめだが、メーカーによるとAB級動作時には70W×2(8Ω)ほどの出力が確保されているとのことだ。
筐体の剛性は非常に高い。質量は32kgで、同程度の出力のモデルより遥かに重い。入出力は豊富で、オプションのUSB入力(PCM 384kHz/DSD 11.2MHzまで対応)付きのDAコンバーターをスロットインさせることが可能だ。スピーカー端子は2系統で、リアパネルの両端にマウントされている。これはシンメトリーな回路レイアウトの証左といえよう。
ノブ類の操作感は非常に良好で、特にアルミ削り出しのボリュームノブの感触は生理的快感ですらある。このノブのメカニズムは同社のお家芸であるVRDSの軸受けを応用したもので、最上級の“Grandioso”シリーズと同じものだ。
■電源トランスは強力なEI型を採用。フォノ回路も本格的
筐体の中央には巨大な電源回路が鎮座する。電源トランスはEIコアタイプで、容量は940VA。ブロックコンデンサーは10000μFのものが4本使用されている。リアパネルの直近にマウントされているプリアンプ部は非常に凝ったものだ。
回路はフルバランス/デュアルモノで、3バンドのトーンコントロール回路を擁している。この回路もフルバランス/デュアルモノなので、合計12回路によって構成される。音量調整回路とトーンコントロール回路は電子式で、通常の可変抵抗器は使用されていない。興味深いことに、このプリアンプ部にはフォノイコライザー回路が搭載されている。これはMM/MC対応の本格的なデュアルモノ構成で、独自の電源回路が与えられている。
左右のサイドパネル側にはパワーアンプ部がマウントされている。回路はグランディオーソ直系の三段ダーリントン式3パラレル・プッシュプルで、終段の素子はバイポーラトランジスタだ。ドライバー段と終段の間にはエソテリック独自の低インピーダンス回路が入っている。
次ページ音質はA級らしい美しく心地良い余韻。アナログでは情報量の多さを柔らかく包む