驚くほどの臨場感
この首掛けスピーカーがすごい! 音楽も映画もOKの万能モデル、JBL「SOUNDGEAR」レビュー
■音の広がり感、臨場感がすごい!ヘッドホンでもスピーカーでもない新感覚
さて、いよいよ音のチェックだ。静かな環境で音楽を聴いてみることにした。iPhoneとBluetoothで接続した。SOUNDGEARのBluetoothはSBCとaptXに対応しており、一方のiPhoneはSBCとAACに対応している。つまり、iPhoneとSOUNDGEARの接続はSBCで行われているはずだ。
まず再生したのはエルヴィス・コステロ、1999年の名曲「She」。コステロのしゃがれたボーカルの実在感が高く、目の前で歌っているかのようだ。細かな息づかいまでを克明に再現する。流麗なストリングスの響きも美しく、声や弦楽器の帯域が大得意であることはすぐにわかる。
音の広がり感、開放感は非常にハイレベルで、これはヘッドホンでは味わえない感覚だ。また、直接耳を覆わないので圧迫感もない。一方で通常のスピーカーのように、絶対的なボリュームを上げる必要もない。サラウンドスピーカーでもヘッドホンでもない、独特な感覚だ。
音が出てくる場所もユニークで、ボーカル帯域などは頭の少し後ろから聞こえてくる感覚だ。個人差はあるだろうが、少し時間が経つと慣れた。
次に女性ボーカルの実力を確かめる。再生したのはカーペンターズ「I need to be in love」だ。
カレン・カーペンターの澄んだ歌声がスムーズに上まで伸びきる。カレンの声は常に潤いを湛えていながら、わずかに低くドライな響きが潜んでいるのが魅力の一つと個人的に考えているのだが、その細かなニュアンスまでしっかり描き出すのは見事だ。さらにこの曲でも、ストリングスや多重録音したバックコーラスなどは左右に広がり、その真ん中にボーカルがビシッと定位する。音の広がりと定位感を両立できている。
続いて曲をジョン・メイヤー「New Light」に変えても、コーラスが本当に遠くから響いているかのように聞こえる。この臨場感は凄い。
続いてピアノ曲。チョ・ソンジンが弾くショパン「バラード 第1番 ト短調 作品23」を再生する。ショパンらしい、もの悲しくも美しい旋律が心地よく耳に飛び込んで来る。ピアノとも相性が良いことは明らかだ。序盤、ゆるやかに進行するところは安定感たっぷりに描き出す。そして中盤から終盤にかけての、鍵盤を強く打ち叩いて激しく展開する部分のダイナミクスも、見事に追従。ポテンシャルの高さを実感した。
■SBCでもリップシンクはほぼ完璧、サウンドバーより高コスパ?
続いては映像作品を視聴する。iPadでNetflixのSFドラマ「ロスト・イン・スペース」を再生。SBCで接続しているにも関わらず、俳優が喋った際、口の動きと音のズレがないことに驚く。遅延が感じられず、いわゆるリップシンクがほとんど完璧に取れている。もちろんBluetoothの接続状況によっては遅延が生じる可能性もあるが、SBCでもここまでできるとは、正直驚きだ。
音も素晴らしい。音楽を聴いて、音の広がり感が高く、音場をしっかり表現できることはわかっていたが、映画やドラマでも、その能力がいかんなく発揮される。
セリフはくっきりはっきり表現され、しっかり中央に定位する。その上で、周囲を吹き荒れる風の音、水中に飛び込んだ際のポコボコと空気が吹き荒れる音、氷を打ち叩く音など、様々な効果音が頭の周りを飛び交い、まるで劇中に入り込んだような実在感を伴って耳に飛び込んで来る。さらには劇伴の聞こえ方も、まるで本格的なサラウンドシステムで聴いているかのような広がり感が得られ、作品への没入感を高めてくれる。また低域が豊かであることも映画向きだ。
テレビの内蔵スピーカーはもちろん、同価格帯やもう少し上の価格帯のサウンドバーと比べても、SOUNDGEARの方が音に迫力があると感じる方は多いだろう。
さらに大音量で楽しんでも、周りに音がそれほど聞こえないのが嬉しい。構造上、音が漏れないということはあり得ず、それなりには聞こえるのだが、同じ迫力をテレビのスピーカーやサウンドバーなどで楽しもうと思ったら、家族や隣人からクレームが来かねない。そういった気兼ね無しにボリュームを上げられる。
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