【特別企画】刷新された中核プリメイン/プリアンプ
デザイン・サイズ・音質の3拍子がそろう真空管アンプ。Carot Oneの新「FABRIZIOLO/ERNESTOLO」
両機は、筐体デザインと共にパーツ類にもグレードアップが施されている。日本限定仕様として旧モデルの「EXエディション」で採用されていた、ムラード製ECC802Sの復刻モデルとして定評ある真空管「 JJ 製 ECC 802 S」の接続ピンに金メッキを施して、さらなる音質を追求。それに併せて、ガラス管にあるロゴ・プリントもレギュラーのレッドからゴールドに変更されている。
さらに、RCA端子やスピーカーターミナルも、新たな筐体デザインを引き立てる、より高級感を持ったパーツへとバージョンアップされた。
なお、プリアンプ、及びヘッドホンアンプの信号増幅を担う先述の真空管とオペアンプは、輸入元であるユキムのメンテナンス・サービスでアッセンブルされ、バイアス調整とサウンドチェックが行われたうえで出荷されるという。日本限定モデルならではの手厚い配慮が嬉しい。
■ディティールを聴かせつつ柔らかい肌触りで描写するERNESTOLO 50k EX
早速そのサウンドをチェックしてみよう。まずはプリメインアンプ「ERNESTOLO 50k EX」から。スピーカーにELAC「BS 403」を接続してCDやハイレゾなど、様々なソースを試聴してみた。まず耳に飛び込んでくるのは、心地よい音色表現だ。ハイハットなどのシンバル類は、クリアでくっきりとした音像ながら、アタックが耳に優しい。
ピアノの音色もディティールを聴かせながらも柔らかい肌触りで描かれ、ビロードのような滑らかさを持つ。同時に、アコースティックギターやチェンバロの表現には、楽器の箱鳴りを思わせる仄かな響きが生み出され、演奏が明るい表情で描かれる。ヴァイオリンやチェロなどの擦弦楽器も、ボウイングに程よい粘りと明るさがもたらされ、明朗かつ快適に音楽を歌い上げる。
低音は開放的な鳴り方で、エレクトリックベースのピッキングやウッドベースのピチカート、そしてバスドラムのヒットが、重たくならずに前面へと快活に繰り出してくる。全体的に、繊細さと大らかさが巧みに同居したサウンドで、実にウェルバランスといえる。
内蔵のヘッドホンアンプを使って、SHUREのヘッドホン「SRH1540」やEtimotic Research「ER4SR」を鳴らしてみる。こちらも、スピーカー出力同様の音色を楽しめるのが特徴的だ。音楽全体を柔らかいタッチで描き、繊細さと大らかさが絶妙に同居する。低域表現はそこまで積極的に押し出してくるわけではないが、逆にそれが心地よい聴き易さにも繋がっている。
■FABRIZIOLO 30k EXは価格差のあるパワーと組み合わせても美点が引き立つ
続いて、プリアンプ兼ヘッドホンアンプの「FABRIZIOLO 30k EX」を試聴する。パワーアンプにアキュフェーズ「A-36」を据え、スピーカーには先ほどと同じくエラックのBS 403を接続した。
すると、先ほどプリメインアンプ ERNESTOLO 50k EXで感じた魅力に、さらなる駆動力と表現力が加わった。この辺りの表現は、さすがにその価格約45万円というフルサイズA級アンプ「A-36」の力が大きいだろう。ボーカル音像の定位がさらなる奥行きを伴って音場空間に定位。ベース楽器やバスドラムなどの低域も、より立体的な表現となる。