[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第214回】夏の注目イヤホン&ヘッドホン総ざらい! ポタ研&ポタフェス「高橋敦のベスト5」
【番外】あれこれピックアップ
その他に気になったものをいくつか…。
まずはイヤホン。
Noble Audio「EDC Bell」。夏のうちに2万円台で発売予定とのこと。
好評のダイナミック型ドライバー搭載機「EDC Velvet」をベースに、ノズルまで含めて筐体の素材を真鍮に変更し、フィルターによるアコースティックチューニングも変更。
サウンドの向上は著しい。声の鈴鳴り感やベースのボディ感など音の質感や手応えといったところの魅力を会場試聴レベルでも十分に感じられた。同社としてはチャレンジであったダイナミック型ドライバーの扱いにもさらに磨きがかかり、EDCシリーズの基本設計に秘められていた潜在能力がさらに引き出されてきたか?
イヤホンではいよいよ発売開始となったAr:tio「RK01」にも改めて注目。実売3万円弱のダイナミック型ドライバー搭載機。
装着ポジションに少し癖があり、耳にピタッとくる位置や角度を見つけるまでに少し手間取るかもしれない。しかしそれが見つかったときには、独特でいて破綻のない、ならではでありつつ整ってもいる、魅力的なサウンドを聞かせてくれる。
シンバルの爽快な抜けっぷりや金属の質感、ベル系の音色の輝きをしっかり出してくる鋭い描写。しかし声の息遣いを出しすぎてそこを刺さらせてしまうなんてことはない。「他の音域に影響を与えずに6kHz付近の音域だけを抑制」という独自技術、そしてそれを含めてのチューニングによるものだろう。ベースなど低音楽器の柔軟性豊かな弾力、空間の左右の広がりなども印象的だ。
日本進出を予告していたFAudioは、ポタフェスにユニバーサルモデルの最終版=製品版ラインナップを展示。
同社本流ハイエンドの「Major」はメディカルファイバー+チタニウムコーティグの振動板を採用したダイナミック型ドライバーを搭載。その音を耳に伝えるサウンドチューブは無酸素銅製。筐体内部には3室からなる複雑なエアチャンバー構造を備える。腰が強くてぐっとくるベース、高域の美しい鈴鳴り感が印象的だ。
BAモデル「Harmony」は日本代理店側主導でのチューニングとのことだが、クリアさやスッキリとした空間表現などは上記のダイナミック型モデルと共通する要素。ブランドの音作りが確固たるものとして存在し、代理店側もそれを理解。その上でのコラボレーションがこのモデルのチューニングということだろう。
【第3位】AKG初のヘッドホンアンプはすべてがピュア!
AKGは、意外にも同社初!なヘッドホンアンプ「K1500」を出展。以前から展示はされていたが「7月27日発売で直販価格は税抜5万9880円」と確定した。
純A動作回路の据置型ヘッドホンアンプ。据え置き型にしてはコンパクトな部類だ。入力端子はRCA端子の他、XLRバランスも備えており、プロオーディオ機器との組み合わせにも都合が良い。
主電源スイッチは背面。しかしボリュームがスイッチノブになっており、音量を絞り切るとスタンバイモードになる仕組み。なので背面の主電源はオンのままでの運用が基本であり、操作性の面でも問題ない。スタンバイにする=音量を絞るという動作になるので、不意の爆音事故も起こりにくいはず。
特記事項は本当にそれくらいしかないのだが、そこが逆によい。デジタルな部分はないのでスペック競争的なものに巻き込まれることはない。音もアンプ側の個性は主張せず「ヘッドホンの性能を引き出す!」という基本に忠実なものなのでこちらも流行り廃りとは無関係。ひたすらピュアそしてシンプルに「ヘッドホンアンプそのものなヘッドホンアンプ」だ。「これ買っとけば向こう十年はこれでいけるのでは?」というような期待を持てる。