上位モデルの音質思想を継承
デノン “新世代エントリー”、CDプレーヤー「DCD-800NE」とプリメイン「PMA-800NE」の実力を探る
一般的なトランジスターの3倍のピーク電流供給能力を持つというHC(High Current)トランジスターの採用によって定格出力50W+50W(8Ω)が確保された増幅回路自体も、上位機の構成を継承。プリアンプでの増幅を行わず、1段構成のハイゲインパワーアンプのみで増幅を行うことで、回路や経路をシンプル化して音の純度を高めている。
同様に、入力カップリングコンデンサーの排除、モーター駆動のアナログ方式ボリュームの採用や、ソースダイレクトやフォノ入力へのリレー切り替え式の採用など、とにかく回路のシンプル&ストレート化を徹底。鮮度の低下や色付けの付加を避ける信号伝送にこだわり抜かれている。アンプの生命線とも言える電源回路には、大型EIコアトランスと、本機専用の新開発カスタム大容量コンデンサー(8,200μF)、および大容量整流ダイオードを採用し、電源供給能力を支える。
各回路における信号の相互干渉への配慮も入念だ。筐体内の各回路レイアウトを分離する「S.L.D.C.(Signal Level Divided Construction)」構造を採用することで、回路間の相互干渉を抑制。デジタル入力基板自体も、シールドケースに封入して、デジタルオーディオ回路からの輻射ノイズの影響を回避する。また、アナログ入力時には、デジタル入力回路への給電を断って完全停止させる「アナログモード」も搭載。そのほか、振動対策や筐体剛性強化などもDCD-800NEと同様で、「ダイレクト・メカニカル・グラウンド・コンストラクション」を採用するとともに、リブ入り高剛性フットや、14%増し厚のフロントパネルを装備している。
入力構成も豊富だ。デジタル入力は、光デジタルを3系統、同軸デジタルを1系統備え、いずれも最大192kHz/24bitの入力に対応。アナログ入力はアンバランスRCAを4系統、フォノ(MM/MC)を1系統搭載している。出力構成は、アナログRCA(RECORDER)を1系統、ヘッドホン出力を1系統備え、スピーカー端子はバナナプラグ対応のスクリュータイプが採用され、A/Bの2系統を備えるなど、入門機としては充実した内容となっている。
■4通りの組み合わせで音質をレビュー
さて、いよいよ音質レビューに移りたい。試聴であるが、それぞれの音質をチェックするため、以下の組み合わせにてテストを行った。まずは、両機を組み合わせるのではなく、「DCD-800NE」はアキュフェーズのプリメインアンプ「E-470」と、「PMA-800NE」はラックスマンのDAC「DA-06」と組み合わせて試聴し、それぞれの音質を確認。その後、両機を組み合わせて試聴した。
これらの試聴には、リファレンス・スピーカーとしてB&W「803D3」(270万円/ペア)を使用。そして最後に、より実際的な組み合わせを想定し、ダリ「DALI Menuet」(14.5万円/ペア)を組み合わせて試聴した。
■「DCD-800NE」のCD再生とUSB入力のハイレゾ再生の実力をテスト
まず、DCD-800NEでCDを再生する。エネルギッシュな音色表現が実に印象的だ。この辺りは、上位NEシリーズとよく似た傾向を持っていることがすぐに分かる。ボーカル歌唱は発音が明瞭で、滑舌には爽快感が満ちている。ギターのストロークは歯切れがよく、ピッキングの一音一音がクリア。清潔で心地よい硬質感に溢れている。ボーカルの発音やギターのストローク、そしてパーカッションのアタックが、前方にグイと迫り出てくるが、質感自体には、ほんの少しの滑らかさが聴き取れて快い。低域方向は、濃密になり過ぎず適度に淡泊な軽妙さを持っており、演奏が鈍重にならない。
次に、フロントパネルのUSB-A入力を使用し、ハイレゾ音源を再生する。まず気づくのは再生スタートの素早さだ。USBメモリーを挿して楽曲を読み込み、再生を開始するのだが、その反応が素早く、楽曲自体の送り戻しもレスポンスがスピーディーで、CD再生時よりも早く感じられた。そしてその音質も、ファイル再生の優位性を大いに享受できるものだった。
再生に静けさが加わり、先述の溌剌としたサウンドが持っていた輪郭の彫り込みがさらに深くなる。また、ハイレゾ音源ならではの立体感や見通しの良さも如実に再現。再生情報量が大幅にアップする。同時に、クリアながらもより滑らかな質感が実現され、上質な音楽再生を楽しむことができた。質のよいファイル&ハイレゾ再生が手軽に行えるプレーヤーという意味でも魅力的だ。そして、CDとファイル再生の双方共に、上位機で培ったノウハウがしっかりと活かされたサウンドであった。
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