Bluetooth対応USB-DAC
iFi audioのポータブルUSB-DAC/ヘッドホンアンプ「xDSD」に秘められた想いを開発陣に聞く
これまでnano iDSD やmicro iDSD など、コンパクトながらもハイスペック、そして高音質なプロダクトをリリースしてきたiFi audio。その最新モデルとなるxDSD が大きな注目を集めている。コンパクトな筐体には、果たしてどのような技術と想いが込められているのか。2人のキーパーソンに話を聞いた。
■コンパクト機の集大成上位機譲りのハイスペック
ハイレゾ時代の革命児たる存在のiFiオーディオから、また新たな次元を切り拓くコンセプトを内包したコンパクト機xDSDがこの春誕生。これまでのラインアップもポータブル機とは思えないほどの機能性を内包するモデルを数多く手掛けてきたが、xDSDはその集大成ともいえる内容を誇る。
まず従来のシリーズから大幅にリニューアルされた外観は、マグネシウムアルミ合金製でいくつもの波型シェイプを組み合わせた手に持ちやすいスタイルだ。渋い光沢を放つチタン真空イオンメッキの仕上げも大人びている。そしてもうひとつ、従来からの変化として挙げられるのが操作系のシンプルさだ。スイッチ類は正面中央部のロータリーエンコーダー+センターボタン、そして背面部のフィルター切り換えだけである。USB入力はmicroiDSD
BL譲りの768kHz/32bit・PCM&DSD22 ・4MHz対応(MQA対応のファームウェアではPCM384kHz/32bit&DSD11・2MHzまで)というハイスペックを誇り、もうひとつのフィーチャーであるBluetooth接続機能もAAC、aptXコーデックに対応。DACチップも上級機譲りのバーブラウン製DSD1793を搭載し、フェムト秒精度のGMTやメモリーバッファによるジッター低減も行うなど、コンパクト仕様といえど妥協はない。
このxDSD開発経緯をiFiオーディオの主任エンジニア、トルステン・レッシュ氏に伺った。
「開発当初は現在のサイズの倍ほど大きく、基板の段数を調節するなどして小さくまとめました。スイッチも限りなく少なくしています。スイッチの品質そのものが音を悪くすることもあり得るので、“サイバードライブ”と呼ぶ新たなソリューションを開発し、物理的なスイッチを減らすことにしたのです」(トルステン氏)
■普通の人でも扱いやすい優しいUIを心がけた
ではそこまでしてサイズを小さくしなくてはいけなかった理由とは何だったのか。このxDSDはシンプルに、ヘッドフォンとiPhoneだけ一緒に持ち出して楽しめるプロダクトとして、さらに幅広いオーディエンスに向けてアピールするために開発されたという。デザインもオーディオ分野以外で活躍していたというデザイナー、ジュリアン・ハジザ氏が手掛けることで、より一般的なリスナーからの目線を大事にしたという。
「普通の人たちはもっとシンプルなものを欲しがっています。iPhoneを繋いでスイッチを入れればすぐにいい音で楽しめるシステムが理想ですね。メインスイッチを長押ししてBluetoothと切り換える、ボリュームもロータリーエンコーダーの回転スピードで変化率を変えるなど、優しいUIを心掛けています」(ハジザ氏)
■アナログのパラメーターをデジタルでコントロール
xDSDの中でもポイントとなっている技術がトルステン氏の話にもある“サイバードライブ”であるが、アナログ回路のパラメーターをデジタルコントロールで行うことにより回路の小型化に結びついているとのこと。そのために独自の超低ノイズFET入力オペアンプOV4627とデジタル制御のステップ式アッテネーターW990VSTを組み合わせている。このW990VSTはチップメーカーに頼み込んで最新のものよりも前の仕様に戻してもらうなど、交渉を重ねたそうだ。
「チップメーカーが良かれと思ってつけている機能が音質的に悪く作用したり、設計の自由度を損なうこともあります。W990VSTもそうした理由で前世代の仕様に戻してもらいました。同じような機能性を持つ電子ボリューム用チップはJRC製のものでもあるのですが、価格が高くxDSDのようなプロダクトに使うのでは割に合わなかったのです。これはBluetooth回りのソリューションでも起こっているのですが、ひとつひとつていねいにこうしたプロセスを解決していくことで音もどんどん良くなります」(トルステン氏)
■ヘッドフォンアンプxCANにも高まる期待
新境地を作り出したxDSDをはじめとするxシリーズの第二弾として、ヘッドホンアンプxCANの発売も予定されている。こちらは純粋なアナログ構成で、2.5mmバランス駆動出力も搭載されているという。特にここ日本のユーザーからの強い要望でバランス駆動用出力を望む声があり、リクエストにこたえる形で採用したそうだ。ほかにもLDACなど、さまざまな市場情勢を鑑み、製品に対して採用するかどうか検討しているという。xシリーズの動向を含め、iFiオーディオの製品展開には目が離せそうにない。
(岩井 喬)
<specification>●USB 入力:High-Speed Asynchronous USB 2.0 メス、最大PCM768kHz & DSD512(24.6/22.6MHz) ●S/PDIF同軸及び光入力:最大192kHz/24Bit ●ダイナミックレンジ: >113dB (A) ●ボリュームコントロール:101dB( 1dBステップ)●出力:3.5mm ミニプラグ・ヘッドフォン出力兼ライン出力×1(3極TRS&4極 TRRS「S-Balanced」兼用)●出力電圧:>2.82V/500mW@16Ω、>3.7V/270mW@50Ω、>3.8V/48 mW @300 Ohm, > 3.8V/24mW@600Ω ●ライン出力レベル:>2.1V@0dBFS(& 0dB Volume) ●全高調波歪率 (1V/16R):<0.005% 出力インピーダンス:<1Ω ●バッテリー: 3.8V/2200mAh ●サイズ:95L×66.5W×19Hmm ●質量:127g ●取り扱い:ENZO j-Fi LLC.、(有)トップウイング
本記事は『NetAudio Vol.31』からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。
■コンパクト機の集大成上位機譲りのハイスペック
ハイレゾ時代の革命児たる存在のiFiオーディオから、また新たな次元を切り拓くコンセプトを内包したコンパクト機xDSDがこの春誕生。これまでのラインアップもポータブル機とは思えないほどの機能性を内包するモデルを数多く手掛けてきたが、xDSDはその集大成ともいえる内容を誇る。
まず従来のシリーズから大幅にリニューアルされた外観は、マグネシウムアルミ合金製でいくつもの波型シェイプを組み合わせた手に持ちやすいスタイルだ。渋い光沢を放つチタン真空イオンメッキの仕上げも大人びている。そしてもうひとつ、従来からの変化として挙げられるのが操作系のシンプルさだ。スイッチ類は正面中央部のロータリーエンコーダー+センターボタン、そして背面部のフィルター切り換えだけである。USB入力はmicroiDSD
BL譲りの768kHz/32bit・PCM&DSD22 ・4MHz対応(MQA対応のファームウェアではPCM384kHz/32bit&DSD11・2MHzまで)というハイスペックを誇り、もうひとつのフィーチャーであるBluetooth接続機能もAAC、aptXコーデックに対応。DACチップも上級機譲りのバーブラウン製DSD1793を搭載し、フェムト秒精度のGMTやメモリーバッファによるジッター低減も行うなど、コンパクト仕様といえど妥協はない。
このxDSD開発経緯をiFiオーディオの主任エンジニア、トルステン・レッシュ氏に伺った。
「開発当初は現在のサイズの倍ほど大きく、基板の段数を調節するなどして小さくまとめました。スイッチも限りなく少なくしています。スイッチの品質そのものが音を悪くすることもあり得るので、“サイバードライブ”と呼ぶ新たなソリューションを開発し、物理的なスイッチを減らすことにしたのです」(トルステン氏)
■普通の人でも扱いやすい優しいUIを心がけた
ではそこまでしてサイズを小さくしなくてはいけなかった理由とは何だったのか。このxDSDはシンプルに、ヘッドフォンとiPhoneだけ一緒に持ち出して楽しめるプロダクトとして、さらに幅広いオーディエンスに向けてアピールするために開発されたという。デザインもオーディオ分野以外で活躍していたというデザイナー、ジュリアン・ハジザ氏が手掛けることで、より一般的なリスナーからの目線を大事にしたという。
「普通の人たちはもっとシンプルなものを欲しがっています。iPhoneを繋いでスイッチを入れればすぐにいい音で楽しめるシステムが理想ですね。メインスイッチを長押ししてBluetoothと切り換える、ボリュームもロータリーエンコーダーの回転スピードで変化率を変えるなど、優しいUIを心掛けています」(ハジザ氏)
■アナログのパラメーターをデジタルでコントロール
xDSDの中でもポイントとなっている技術がトルステン氏の話にもある“サイバードライブ”であるが、アナログ回路のパラメーターをデジタルコントロールで行うことにより回路の小型化に結びついているとのこと。そのために独自の超低ノイズFET入力オペアンプOV4627とデジタル制御のステップ式アッテネーターW990VSTを組み合わせている。このW990VSTはチップメーカーに頼み込んで最新のものよりも前の仕様に戻してもらうなど、交渉を重ねたそうだ。
「チップメーカーが良かれと思ってつけている機能が音質的に悪く作用したり、設計の自由度を損なうこともあります。W990VSTもそうした理由で前世代の仕様に戻してもらいました。同じような機能性を持つ電子ボリューム用チップはJRC製のものでもあるのですが、価格が高くxDSDのようなプロダクトに使うのでは割に合わなかったのです。これはBluetooth回りのソリューションでも起こっているのですが、ひとつひとつていねいにこうしたプロセスを解決していくことで音もどんどん良くなります」(トルステン氏)
■ヘッドフォンアンプxCANにも高まる期待
新境地を作り出したxDSDをはじめとするxシリーズの第二弾として、ヘッドホンアンプxCANの発売も予定されている。こちらは純粋なアナログ構成で、2.5mmバランス駆動出力も搭載されているという。特にここ日本のユーザーからの強い要望でバランス駆動用出力を望む声があり、リクエストにこたえる形で採用したそうだ。ほかにもLDACなど、さまざまな市場情勢を鑑み、製品に対して採用するかどうか検討しているという。xシリーズの動向を含め、iFiオーディオの製品展開には目が離せそうにない。
(岩井 喬)
<specification>●USB 入力:High-Speed Asynchronous USB 2.0 メス、最大PCM768kHz & DSD512(24.6/22.6MHz) ●S/PDIF同軸及び光入力:最大192kHz/24Bit ●ダイナミックレンジ: >113dB (A) ●ボリュームコントロール:101dB( 1dBステップ)●出力:3.5mm ミニプラグ・ヘッドフォン出力兼ライン出力×1(3極TRS&4極 TRRS「S-Balanced」兼用)●出力電圧:>2.82V/500mW@16Ω、>3.7V/270mW@50Ω、>3.8V/48 mW @300 Ohm, > 3.8V/24mW@600Ω ●ライン出力レベル:>2.1V@0dBFS(& 0dB Volume) ●全高調波歪率 (1V/16R):<0.005% 出力インピーダンス:<1Ω ●バッテリー: 3.8V/2200mAh ●サイズ:95L×66.5W×19Hmm ●質量:127g ●取り扱い:ENZO j-Fi LLC.、(有)トップウイング
本記事は『NetAudio Vol.31』からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。