ハイエンド機の試聴経験などを総動員
安くて旨いアンプを選ぶ! 5万円で買えるプリメイン、注目9製品を一斉比較レビュー(前編)
<試聴モデル2>
FOSTEX 「AP20d」 14,800円(税抜)
【主なスペック】出力:20W×2(4Ω)、入力端子:アナログRCA×1/ステレオミニジャック×1、スピーカー端子:バネ式、外形寸法:108W×42H×138Dmm、質量:520g
■モニター的でストレートな音が特徴。凜としたボーカル表現が印象的
ダイレクトでモニター的な音が楽しめる、シンプルな小型デジタルアンプ。フォステクスのパーソナルアンプAPシリーズの最上位機種だが、驚くべきコストパフォーマンスを保持しており、筆者も小型スピーカー用のリファレンスアンプとして活用している。
スピーカー端子がバネ式で細い径のスピーカーケーブルにしか対応しないのが残念だが、プリアウトも備えるので、サブウーファーを追加した2.1や2.2ch構成に発展できるのが嬉しい。とにかく小型で場所を圧迫しないことも魅力だ。
ポップスやロックでは、凜としたボーカル表現が特に印象的だ。歌声の輪郭が明瞭で、歌い手の魅力が滑舌良く迫ってくる。エレキギターがチョーキングされる際の音の伸びや微細な音程変化、オーバードライブの歪みのディテール、そしてツインギターの重なり具合など、細かい部分もカチリと明解に引き出してくる。バスドラムが踏み鳴らされて響くアンビエンスまでも明瞭だ。
ピアノトリオでは、グランドピアノの低弦の厚みをしっかりと描き、よりリッチな質感を引き出す。打鍵のパワー感やウッドベースの重みなど、演奏のエネルギーがしっかりと出てくる。ミキシングの内容が明確に引き出され、トリオの楽器それぞれが豊かな立体感を伴う。本体サイズのわりに、中々に骨太な表現と繊細な情報を楽しめる。
クラシックは、ストレートな表現でエネルギッシュに描写されるため、オーケストラのフォルティッシモでは少々硬い表情ものぞかせる場面もあったが、とにかく余韻表現が正確で長く、演奏空間のホールを適切な広さで再現する。
【音楽ジャンル相性】
ポップス/ロック:A+
ジャズ:A+
クラシック:A
<試聴モデル3>
CAMBRIDGE AUDIO 「AM5」 19,800円(税抜)
【主なスペック】出力:25W×2(8Ω)、入力端子:アナログRCA×4/ステレオミニジャック×1、スピーカー端子:バナナプラグ対応、外形寸法:430W×80H×340Dmm、質量:5.1kg
■音楽のボトムを安定度高く再現。ロックとの相性の良さが光る
英国らしい、フルサイズながら薄型コンパクトな筐体と、輸入製品ながら驚くべきコストパフォーマンスが実現されたシンプルなプリメインアンプだ。同社の中でも、エントリークラスに位置するシリーズの製品となっている。
このブランドの特徴は、ブリティッシュロックを始めとした、ポップスやR&Bなどを用いて音決めチューニングがなされていること。そのため、ロック/ポップス系との相性が極めて良好である。
ロックソースでは、その相性の良さが光る。バスドラムやエレクトリックベースの低域付近に確かなボリュームが持たされており、音楽のボトムを安定度高く再現する。また、ロックなどで要となる、ディストーションやオーバードライブなどで歪ませられたエレクトリックギターの音色が、鋭角的にならずに聴きやすいサウンドで引き出されるのが絶妙で、この手の音楽を心地よく快適に楽しめる。音の解像度や明瞭度を前に押し出してくるタイプではないのだが、それが全体的な一体感や聴き心地の良さにつながっているのである。
アコースティックな楽器編成のピアノトリオでは、楽器音像のクリアネスは控えめだが、中低域に厚みがあり、懐の広いおおらかな低域表現を楽しませてくれた。ドラムスは、スネアやシンバルのアタックが鋭くなり過ぎず、バスドラムに適度な厚みがあるので、心地よい響きだ。
一転してクラシックでは、それらの特徴から少々ゆったりと重めの再現になるようで、楽器本来が持つ音色の表出は控えめとなる印象であった。よって、ロックやポップス、R&Bなどを聴く人にとっては、特にマッチングが高いアンプだろう。明確な方向性を持っていることが快い。
【相性】
ポップス/ロック:A+
ジャズ:A
クラシック:B