タウンユースに納得の機能
AKGの“外音取り込み”だから安心の使い心地とサウンド! BTイヤホン「Y100 WIRELESS」レビュー
アンビエントアウェアボタンを押すと、まず音楽の音量が一旦ぐっと下がり、同時にマイクで集音した周囲の音が再生音にミックスされて聞こえるようになる。この状態が続くのが3秒ほどだ。
その後、音楽の再生音量が少し上がり、アンビエントアウェア開始直後よりは大きいけれど通常時よりは小さいというレベルに落ち着く。もちろん外音取り込みは継続している。
どういうことかというと、例えば「あ! いま電車のアナウンスを聞きたい!」とボタンを押したその瞬間は外音を特に重視して再生音と外音をミックスし、アナウンスを確認しやすくする。以降はミックスのウェイトを少し音楽に戻しつつ、続報のアナウンスが来ればそれに気付けるような状態をキープ、というような便利さをイメージしてもらえればと思う。
そのように公式に案内されているわけではないが、おそらくはそういった狙いだろう。実際に試してこの挙動に気付いたときには「なるほど」と納得させられた。
外音取り込みの強さについても触れておこう。イヤホンとしてのパッシブな遮音性もしっかりしているので、音楽を停止した状態でも外音の聞こえやすさは普通に「裸耳>アンビエントアウェア>装着通常時」となる。
しかし外の音をがっつり聴きたい、会話をしたいというときはイヤホンを耳から外せばよいわけで、特にこのモデルはネックバンド型なので、それもさほど難しくない。アンビエントアウェアの強さを「音楽は流したまま、外音もある程度確認したい」というところに合わせてチューニングしているのはごく自然なことだ。
では最後に「肝心の」、しかしAKG製品なので「安心の」サウンドをチェックしたい。
大まかな傾向としては、中高域のシャープさ、ぎゅっとした密度は出さず適度なスペースをすっと空けた空間表現が持ち味というタイプ。〇〇系で言い表すなら、ナチュラル系でもパワフル系でもなく「スッキリ系」あたりがしっくりくる。
さらに詳細に分析していこう。バンドサウンドで細かなリズムを刻むハイハットシンバルはスパッとしたキレがある。「ワイヤレスイヤホンにおけるシャープさの表現」として、この簡潔な「スパッと感」は納得だ。また騒がしい屋外でもリズムのニュアンスがわかりやすいので、屋外向けチューニングとしても納得。
ボーカルもシャープ。シャープでいてサ行の刺さりも嫌な感じにはなっていない。その音色と空間のスペースの余裕のおかげか、全体として磨き上げられたステンレス素材のような、華やかな明るさを備えている。
ベースやバスドラムなどの低音楽器は、ズシンと腰を沈めた重みではなく重心は少し上げて、ぱっとわかりやすい太さの帯域をプッシュ。高域のシャープさにしても低域のプッシュにしても、過剰演出にならない範疇での「わかりやすい明快な音作り」というのが、このモデルのチューニングのポイントのようだ。
より下の価格帯のモデルからステップアップしたときの音質向上のわかりやすさ。屋外の騒音下でもわかりやすいリズム表現。このモデルならそのどちらもハッキリ、それも価格以上に実感できることだろう。
AKGらしい堅実な完成度。正統派だけれど堅苦しくはなく、音のよさを実感しやすい音作り。シンプルな使い勝手による実用的な提案性を備えたアンビエントアウェア。Y100 WIRELESSは、数多あるワイヤレスイヤホンの中で、スタンダードモデルのひとつとなり得る実力を備えている。