低音をほどよく締めるのに効果大!
手軽な設置で大幅な音質向上。オーディオ評論家がヤマハの調音パネル「ACP-2」を導入レポート
ブースのACP-2を数枚設置してみると、ブーミーで不明瞭な低域が締まり、全帯域のフォーカスが良くなったのだ。印象的だったのが、音がおとなしくなったり変な音色になったりするような悪影響は感じられず、楽器やヴォーカルのリアリティが上がったこと。流石は楽器メーカーの調音パネルだなと感心した。その結果もあってか、イベントは大成功。そして後日、ACP-2を自宅2階のオーディオルームに導入したのだ。
■導入前の問題点は、低域がブーミーで全帯域の明瞭度が低い
筆者の家は木造二階建て。2階のオーディオルームは8畳で、すでに書斎として使っていたため、ある程度の家具が置いてある。スピーカーにはディナウディオ「Special Forty」、アンプにはソウルノート「A-1」を使用している。この環境でACP-2のさまざまな設置方法を試して、サウンドがいかに変化したかをレポートしよう。
今回用意した音源は全てハイレゾ楽曲ファイル。女性ジャズヴォーカルからは2タイトル、キャンディス・スプリングス『インディゴ』では、ヴォーカルのセンター定位と透明感ある彼女の声を引き出すこと、伊藤君子『Kimiko sings』では大きめに入っているベースのリアリティを確認。そして、アンドリス・ネルソンス『ショスタコーヴィチ:交響曲第4番&第11番』では、オーケストラを構成するサウンドステージの奥行きや高さ方向の表現力をチェックした。
まず、パネルを導入しない状態の音を確認する。床はカーペットだから天井と床のフラッターエコーは存在しない。しかし、低域がブーミーで部屋全体の響きはライヴだ。日本家屋の洋室でよくある環境とも言えるが、全帯域の明瞭度が低く、しかも音に躍動感がない。かなり手強い環境だ。
(1)フロントセンター1枚「ヴォーカルと低域に若干の効果」
まずは1枚のパネルをスピーカー中央の壁面に設置してみた(事前にスピーカーの一時反射となる左右には、これまでも使用してきた他のパネルを設置してある)。ヴォーカルの明瞭度や低域の締まりが若干良くなるが、情報量の向上やフォーカスにはあまり影響がないようだ。トーンバランスや音色の変化は少なく、オーケストラのサウンドステージが若干小さくなる。
(2)フロントスピーカー後方2枚「ブーミーだった低域が締まる明瞭度も上がる。効果大!」
次に(1)で設置した1枚のパネルを一旦外し、2枚のパネルをそれぞれスピーカーの後方に設置してみた。ブーミーだった低域が締まり、ベースのリアリティが大きく向上する。さらに全帯域の明瞭度も上がり、オーケストラのサウンドステージも立体的になる。とても効果が高い。
またパネルを動かしやすいので、スピーカーに対するパネルの距離を可変させ、低域の量をコントロールできる。角度を変えたり距離を変えたりを繰り返し、スピーカーの後方30cmのところに落ち着いた。
(3)フロント3枚「音が前へ!スピーカーの角度調整でさらに追い込む」
フロント中央にパネルを追加してフロント3枚の構成にした。この状態だと、フロント2枚の効果に加えて、より中高域の混濁が減り、音が前に出てくるようになる。取材担当者との話し声がクリアに聴こえるから不思議だ。
さらに、内振りにしていたスピーカーの角度を若干広げると、サウンドステージが広がり、中央にヴォーカルがピンポイントで定位。パネルがない時に比べ、スピーカーの内振り角度に対する変化がより感じられるようになった。
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