HOME > レビュー > 現代スピーカーの理想像を示す、巧みな音楽性と美しい意匠。FOCAL「Kanta N°1」を聴く

次世代のオーディオを表す、完成度の高さを実現

現代スピーカーの理想像を示す、巧みな音楽性と美しい意匠。FOCAL「Kanta N°1」を聴く

公開日 2019/04/10 06:00 土方久明
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

続いて、デザインから音質対策に話を移したい。先述の通り、エンクロージャーは複数の素材で構成されているのだが、サイドとリアは合板を一体成型として、フロントバッフルに高密度ポリマーを用い、数種類の素材を使うことで剛性を高めて不要共振を防止している。

27mm口径のトゥイーターは、本シリーズ用に新規開発されたIAL3(インフィニット・アコースティカル・ローディング3)を搭載する。振動板はアルミニウムの約13倍の剛性を持つベリリウムを逆ドーム型として使用。これは、フォーカルがよく採用するものだが、本機では3層のユニット構造を採用し、背圧のコントロールと吸音(消音)が行われている。

トゥイーターには27mm口径の新開発IAL3(インフィニット・アコースティカル・ローディング3)を搭載

特徴的な外観の16.5cm口径を持つウーファーは、Kanta N°2でミッドレンジユニットに採用されていたものだ。麻よりも柔らかくかつ強靭な天然亜麻(フランス産)をグラスファイバーでサンドしたフラックス素材を用いている。またウーファーユニットのエッジ部には、厚さの違う2本の円形リブで相違する共振を利用し、歪みを減少させるTMD(チューンド・マス・ダンパー)を搭載する。

さらに、磁気回路における磁界乱れを抑えるショートリング・NIC(ニュートラル・インダクタンス・サーキット)を採用。ウーファーとトゥイーターのクロスオーバーは2.4kHz。再生周波数帯域は46Hz〜40kHzとワイドレンジで高域の限界特性に優れていることも注目点だ。

このようにKanta N°1は、エンクロージャーからユニットまで、フォーカルの持つ技術が惜しげも無く投入された、極めて先進的なアプローチのスピーカーなのである。

また、他のフォーカル製品同様、ユニットとキャビネットは自社で設計と生産が行われている。近年では、アジアや南米などで生産を行うスピーカーメーカーも増えているが、頑なにメイドインフランスに徹して品質を担保するその姿勢も評価に値する。

「オーディオ製品の外観は音を表す」と良く言われるが、木目のエンクロージャーと、少しギラっとした質感を持つツイーター/ウーファー周りのユニットの本機を見ていると、様々な音楽ジャンルを上手に再生してくれるのではと期待した。

今回は、ハイレゾのデジタルファイル楽曲を用いて、洋楽ポップス、洋楽ロック、Jazzボーカル、クラシックという幅広いソースを再生して、各ジャンルへの対応力とクオリティーチェックを行った。

ハイレゾのデジタルファイル楽曲を用いて、様々なジャンルの音楽を試聴。対応力とクオリティをチェック

再生システムは、Mac用再生プレーヤーソフト「AudirvanaPlus」をインストールしたMacbookProを、アコースティックリバイブ製USBケーブルを用いて、ラックスマンのD/Aコンバーター「DA-06」に接続。そのアナログ出力をプリメインアンプ「L-550AX」につないで再生した。スピーカーセッティングについては、左右のエンクロージャーの間隔を220cmにした上で若干内振りにした。

プリメインアンプにはラックスマン「L-550AX」(価格360,000円/税抜)を使用

D/Aコンバーターにはラックスマン「DA-06」(価格300,000円/税抜)

まずは、女性ジャズボーカルで筆者が最近リファレンスにしている、キャンディス・スプリングス『インディゴ』(44.1kHz/24bit)を聴いた。一聴して、透明感のある歌声に鳥肌が立つ。原音に対して忠実な表現力を持ちながら、バックミュージックも含めとにかく音が美しい。

ブックシェルフということで周りに空間が稼げるため、音像定位が良く、目の前には等身大のアーティストが定位する。それにしてもこの音の美しさは素晴らしい、女性ボーカルの表現力の高さは本スピーカーの大きなアドバンテージと断言できる。

次に聴いたのは、今年のグラミー賞で最優秀新人賞を受賞したデュア・リパのアルバム「Dua Lipa」(44.1kHz/24bit)。いわゆるEDM調の今風のポップス楽曲だ。最低帯域をダラっと伸ばさず、立ち上がりの良いエレクトリックドラムが聞き応え抜群だ。

ポップスとKanta N°1の相性も良いことが分かる。その聴き所は大きく2つある。1つは音色の良さで、エレクトリックシンセサイザーの音が色彩感に溢れている点、もう1つはサウンドステージが広いことだ。スピーカー左右を大きく超えて、透明感あるシンセサイザーサウンドが表現される。グルーブ感が高くオーディオ的な再生能力と楽しい音が両立している。

次ページ原音忠実ながら音の“美しさ”が際立つ

前へ 1 2 3 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク