Jubilee 300B、AirForce Zeroなど
独HIGH ENDで聴いた「特別な音」<1> レコードプレーヤー/真空管アンプ注目新製品の音質をレポート
昨年のHIGH ENDで最新アームのプロトタイプを出展して話題を呼んだサエクは、完成したばかりのトーンアーム「WE-4700」を公開。筆者が3月末に試聴したWE-4700は、細部の仕上げを追い込んでいる段階の試作品だったので(当時のレビューはこちら)、最終仕様の完成品にはミュンヘンの会場で初めて遭遇した。
オリジナルのWE-407/23以上に各パーツの精度を高めた結果、外見もさらに精密感が増しており、細部を追い込んだ状態では全体の統一感という点でもいよいよ完成の域に達した。ちなみにサエクの名はドイツのオーディオファンにも浸透しており、今回の新製品も憧れの対象になっているようだ。
カートリッジの話題作もいくつか登場したが、これは滅多に聴けない音だと実感したのはvan den Hulの「Colibri MS XGW」である。すでに日本にも導入されている製品で筆者もエソテリックの試聴室で音を確認済みだが、ミュンヘンではDIAPASON(ディアパソン)のスピーカーをはじめ、まったく異なるシステムで鳴らしていたので、同じカートリッジの別の側面を体験することができた。
針先とコイルを近接させ、余分な構造を排した特殊な設計で、しかも一品ずつの完全なハンドメイドとあって価格はカートリッジ史上最高水準だが、MCはカートリッジとしては異例ともいえる高出力(1.1mv)ということもあってハンドリング自体は難しくない(実際に針を落とすときは緊張する……)。
繊細さをきわめた部分が前面に出るかと思ったが、それ以外にもヴォーカルのなめらかな質感、余韻の柔らかさや微粒子感など、聴きどころはたくさんある。吟味したリアルウッドをボディ素材に使っていることもあり、オリジナルモデルのColibriとの音の違いも予想以上に大きい。実際に入手するにはハードルが高い製品だが、機会があればぜひ聴いておきたいカートリッジだ。
(山之内 正)