リアルでより音楽的な再生音を緻密に再現
Grandiosoの遺伝子を継承したSACDディスクプレーヤー銘機。エソテリック「K‐05Xs」を聴く
USB-DAC機能はDSD22.5MHz、PCM系は768kHz/32bitにまで対応。PCやミュージックサーバー(オーディオ用NAS)、そして同社のネットワークトランスポート「N‐03T」と接続するUSB端子を装備している。さらにボトムシャーシが強化され、約1kg質量が増えたほか、外観上では表示部が有機ELディスプレイになって見やすくなった。
■低域はより深みやコクを感じさせ、落ち着いて音楽を聴ける方向に変化
テストはエソテリックの試聴室で行った。まず、K‐05Xsのバランス出力を同社製プリメインアンプ「F‐03A」に入力して聴いた。
先代であるK‐05Xとの比較で言うと、空間の透明度が上がり、高域のまろやかさが印象的だ。これはK‐03Xsへの進化でも特徴的だったが、高域の音の出方がナチュラルになり、落ち着いて音楽を聴ける方向に変化している。
たとえば竹内まりやの「シングル・アゲイン」でのストリングスのしっとりした感じや、ヴォーカルの倍音の出方などが実に滑らかに感じる。クラプトンのライブでの拍手も、K‐05Xではバシャバシャというような感じだったのに対し、きめ細かくさざめくような音色感になっている。
そして低音。05シリーズに共通する若干の量感タイプの成分を含んだ気持ちのいい低音感は継承しているが、さらにその音色は深みやコクを感じさせるものに変化。クラシックの、特にオーケストラの低弦や、ジャズでのウッドベースのピチカートも、押し出す力と響かせるバランスが良い。
SACDでは、アバド/ベルリン・フィルの『ジルヴェスター・コンサート1997』を聴くと、ソリストだけでなく、オーケストラやコーラス隊のメンバーそれぞれにきちんとフォーカスが来ている。空間の密度自体が高く、そこに若干大きめの音像が定位。高域の艶やスムーズな感じが素晴らしい。
■ES‐LINK Analogの効果は抜群。クロックの導入では鳴りが良くなる
続いて、出力をES‐LINK Analogに変更してみる。これが目覚ましくいい。空間の空気感や気配みたいなものの表現能力がかなり向上。そこに、立体感/実在感ともに3ランクくらい高い音像が定位する。
それにともなって、演奏のニュアンスや、たとえばソロヴァイオリンであればその弓の動かし方のディテールが良く出てくる。漂うような音は漂い、湿りけのある感じは湿りけのあるものとして再現する感じ。そもそもS/N感がかなりいいし、微小領域の伝送能力が大幅に上がっている印象だ。
最後にマスタークロックジェネレーターの「G‐02X」からクロックを入れてみる。音楽全体の鳴りが良くなり、演奏としてのビートの揺らぎがよりよく感じられる。音色のニュアンスや空気感の表現力も素晴らしいが、音自体に張りが出るというか、みなぎったり、しっとりする感じが実に愉しかった。
K‐05Xsは現在のエソテリックの目指している、よりリアルで、より音楽的な再生音を緻密に聴かせてくれるプレーヤーだ。ES‐LINK Analogの伝送にも高い魅力を感じた。
(鈴木 裕)
<Specifications>
●再生可能ディスク:SACD、CD(CD-R/CD-RW対応)●出力端子:XLR/ESL-A(2ch)×1、RCA(2ch)×1●出力インピーダンス:XLR 40Ω、RCA15Ω●最大出力レベル(1kHz、10kΩ負荷時):XLR5.0Vrms、RCA2.5Vrms <SACD XLR 出力時>●周波数特性:5Hz〜55kHz(-3dB)●S/N:119dB(A-Weight)●歪率:0.0013%(1kHz)●デジタル出力:COAXIAL×1、OPTICAL×1 ●デジタル入力:COAXIAL×1、OPTICAL×1、USB-B(USB2.0準拠)×1 <クロックシンク入力フォーマット>●端子:BNC ● 入力可能周波数(±15ppm):44.1kHz、48kHz、88.2kHz、96kHz、176.4kHz、192kHz、10MHz、22.5792MHz、24.576MHz●入力インピーダンス:50Ω●入力レベル:矩形波 TTLレベル相当、サイン波 0.5〜1.0Vrms●消費電力:22W ●サイズ:445W×132H×357Dmm(突起部を含む)●質量:約15.1kg●取り扱い:エソテリック(株)
本記事は季刊・オーディオアクセサリー 170号 AUTUMNからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。