合計700万円の最高峰システム
超重量級メカと独自DACで究極のその先へ。エソテリックのセパレートプレーヤー「Grandioso P1X/D1X」を聴く
エソテリックが、一切の妥協を排したフラグシップシリーズとして展開するGrandiosoシリーズ。そのCDトランスポート「P1」とモノラルD/Aコンバーター「D1」が、登場から6年の歳月を経て、「P1X」(関連ニュース)および「D1X」(関連ニュース)へと進化した。超弩級の新ドライブ、独自のディスクリート構成DACを実現してハイエンド・オーディオファンの注目を集める両機を、山之内正氏がレポートする。
ブランド創立以来、エソテリックの高評価を支えてきた立役者はディスクプレーヤーシステムである。VRDS技術がもたらす高精度な読み取り性能を基盤に据え、磨き上げたD/A変換技術で原音再生を目指してきた。
そのアプローチは2013年に登場した“Grandiosoシリーズ”の「P1/D1」で頂点をきわめたように見えたが、そこから6年の年月を経たいま、実はエンジニアたちが次のピークを目指していたことが明らかになった。P1/D1の到達点が高かったので、それを越えるのはもちろん簡単ではなく、中途半端な手法は通用しない。
最終的に採用が決まったのはトランスポート、D/Aコンバーターどちらもこれまでとは別次元の本質的な改善策で、前者はメカニズムの新規設計、後者は完全自社設計のディスクリートDACという大技を投入。新規メカの開発はVRDS-NEO以来16年ぶり、自社設計DACは今回が初の試みとなる。こうしてP1/D1から6年を迎えた2019年3月、新たなフラグシップとなる「Grandioso P1X/D1X」がついに完成したのである。
■驚くべき物量と磨き上げた技術を投入。新メカ「VRDS-ATLAS」を搭載したP1X
P1Xはトランスポート本体と電源部の2筐体構成で外見はP1とほとんど変わらないが、本体は2kg増の29kgになった。質量増の半分以上は新メカニズム「VRDS-ATLAS」に由来するもので、メカ部だけ(メカベースを除く)で5.2kg(NEO)から6.6kg(ATLAS)へ1.4kgも重くなっている。
質量増に伴う剛性強化に加え、ブリッジ上部に配置していたモーターをターンテーブルの下に移動することで駆動メカ全体の重心を下げていることも重要なポイントだ。さらにトレイ形状の見直しやゲル状の振動吸収材をトレイ端部に配置するなど、共振や不要振動を抑える改善は細部にまで及ぶ。
内部写真を見ると、以前はU字型に抉られていたトレイの後ろ側がP1Xではつながっており、切れ目のない形状になっていることに気付く。再生時にトレイの剛性が音質を左右する心配は小さいとはいえ、部品として「鳴く」要素が少ない方が好ましいのはいうまでもないことだ。
電源ユニットはサーボ、ドライブメカ、デジタル出力、クロックの各回路ごとに独立させた4個のトロイダルトランスを積むが、前作とは配置を変えて筐体の四隅にトランスを固定。電気基板を取り付けているシャーシーと底板は二重構造になっており、その底板側にトランスをリジッドに固定することで、振動の影響が基板上の回路に及ぶことを防いでいる。なお、いずれのトランスもケースを省略しているが、これは再生音に開放感をもたらす効用があり、実質的にひとまわり大きな部品を使えるメリットも見逃せない。
機構設計でもう一つ注目すべき点は、あえて天板を固定せず、わずかな空隙を設けてはめ込んでいることだ。隙間なくガチガチに固定してしまうと部材の僅かな誤差や歪を吸収するのが難しくなり、伸びやかな響きを引き出しにくくなることがあるのだという。天板を強く押すとわずかに動くので驚くかもしれないが、良い音を引き出すための工夫とわかれば納得がいく。
ブランド創立以来、エソテリックの高評価を支えてきた立役者はディスクプレーヤーシステムである。VRDS技術がもたらす高精度な読み取り性能を基盤に据え、磨き上げたD/A変換技術で原音再生を目指してきた。
そのアプローチは2013年に登場した“Grandiosoシリーズ”の「P1/D1」で頂点をきわめたように見えたが、そこから6年の年月を経たいま、実はエンジニアたちが次のピークを目指していたことが明らかになった。P1/D1の到達点が高かったので、それを越えるのはもちろん簡単ではなく、中途半端な手法は通用しない。
最終的に採用が決まったのはトランスポート、D/Aコンバーターどちらもこれまでとは別次元の本質的な改善策で、前者はメカニズムの新規設計、後者は完全自社設計のディスクリートDACという大技を投入。新規メカの開発はVRDS-NEO以来16年ぶり、自社設計DACは今回が初の試みとなる。こうしてP1/D1から6年を迎えた2019年3月、新たなフラグシップとなる「Grandioso P1X/D1X」がついに完成したのである。
■驚くべき物量と磨き上げた技術を投入。新メカ「VRDS-ATLAS」を搭載したP1X
P1Xはトランスポート本体と電源部の2筐体構成で外見はP1とほとんど変わらないが、本体は2kg増の29kgになった。質量増の半分以上は新メカニズム「VRDS-ATLAS」に由来するもので、メカ部だけ(メカベースを除く)で5.2kg(NEO)から6.6kg(ATLAS)へ1.4kgも重くなっている。
質量増に伴う剛性強化に加え、ブリッジ上部に配置していたモーターをターンテーブルの下に移動することで駆動メカ全体の重心を下げていることも重要なポイントだ。さらにトレイ形状の見直しやゲル状の振動吸収材をトレイ端部に配置するなど、共振や不要振動を抑える改善は細部にまで及ぶ。
内部写真を見ると、以前はU字型に抉られていたトレイの後ろ側がP1Xではつながっており、切れ目のない形状になっていることに気付く。再生時にトレイの剛性が音質を左右する心配は小さいとはいえ、部品として「鳴く」要素が少ない方が好ましいのはいうまでもないことだ。
電源ユニットはサーボ、ドライブメカ、デジタル出力、クロックの各回路ごとに独立させた4個のトロイダルトランスを積むが、前作とは配置を変えて筐体の四隅にトランスを固定。電気基板を取り付けているシャーシーと底板は二重構造になっており、その底板側にトランスをリジッドに固定することで、振動の影響が基板上の回路に及ぶことを防いでいる。なお、いずれのトランスもケースを省略しているが、これは再生音に開放感をもたらす効用があり、実質的にひとまわり大きな部品を使えるメリットも見逃せない。
機構設計でもう一つ注目すべき点は、あえて天板を固定せず、わずかな空隙を設けてはめ込んでいることだ。隙間なくガチガチに固定してしまうと部材の僅かな誤差や歪を吸収するのが難しくなり、伸びやかな響きを引き出しにくくなることがあるのだという。天板を強く押すとわずかに動くので驚くかもしれないが、良い音を引き出すための工夫とわかれば納得がいく。
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