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合計700万円の最高峰システム

超重量級メカと独自DACで究極のその先へ。エソテリックのセパレートプレーヤー「Grandioso P1X/D1X」を聴く

公開日 2019/04/12 06:15 山之内 正
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優れた瞬発力とタイミング表現が、発音原理が違う楽器の複雑な重なりを鮮やかに再現

P1XとD1Xを最新バージョンのES-LINK 5(HDMIケーブル使用)で接続し、再生音を確認する。Grandiosoシリーズのセパレートアンプ、タンノイの「Canterbury/GR」を組み合わせ、エソテリックのリスニングルームで試聴を行った。

エソテリックの試聴室にて、フルGrandiosoシステムで試聴を行った

外見がP1/D1とほとんど変わらないため、予備知識がないとマイナーチェンジと勘違いしがちだが、すでに紹介した通り、中身は大きく生まれ変わっている。その変化の大きさは音を聴けば一瞬で気付くレベルだ。

山田和樹指揮スイス・ロマンド管弦楽団の『ルーセル《バッカスとアリアーヌ》』(SACD)は、ティンパニと大太鼓を中心に打楽器群の大音圧が特に低音で際立つ録音のため、打楽器の一撃で木管や弦の音像がふらつき、音場が混濁することが少なくない。P1/D1で再生するとさすがにそうした不安定さは感じないが、どちらかというと音塊の重心はスピーカーの後方に展開する。

一方、P1X/D1Xに切り替えると、今度は一転して微動だにしない堅固なサウンドに生まれ変わるとともに、後方に定位する金管、打楽器群と手前に広がる弦楽器の遠近感が深みを増した。前後の楽器群を鮮明なコントラストで描き分けると、打楽器や低弦が低音で刻むリズムと、ヴィオラや木管が中音域で動くリズムが正確に噛み合って、演奏に本来そなわる活発で前向きの雰囲気が伝わりやすくなる。ソースコンポーネントを変えるだけで演奏から伝わる印象がそこまで変わるのが面白い。

P1Xのディスクトレイ

瞬発力の強さは音の勢いを加速させる。打楽器を含むすべての楽器が同じタイミングで最大音圧を叩き出し、その相乗効果で音の動きに速度が乗ってまっすぐ耳に飛んでくるのだ。発音原理が違う楽器が複雑に重なっているのに、一音一音の立ち上がりは低音から高音まで精密に揃い、揃うことでまた音圧が上がる。

音圧とタイミングの関係はハイファイ再生では非常に重要なテーマなのだが、再生システムのどこかで時間的なずれが生じると、いくらボリュームを上げてもガツンとくる瞬発力を感じられないことがある。スピーカーやアンプにその原因が潜んでいることが多いのだが、送り出す側のソースコンポーネントでの変化はシステム全体に及ぶので、わずかな違いが最終的には大きな変化を生むことがある。P1X/D1Xの勢いの乗った音は、まさにその好例と言えそうだ。


空間表現が実になめらか。S/N、静寂感も特筆すべきレベル

次にアレッサンドロ・ガラティのピアノトリオ(CD)を大きめの音圧で再生した。このディスクでもP1/D1と聴き比べてみたが、オーケストラとは別のポイントで興味深い変化を聴き取ることができた。ピアノ、ベース、ドラムいずれも音像の高さ自体はそれほど変わらないのだが、音色や響きでは明らかに重心が下がり、地に足の着いた骨太の感触を引き出してくるのだ。音の粒が太くなるというわけではなく、音の芯を実感しやすいと言った方がわかりやすいかもしれない。

いずれにしても耳当たりの良さだけではなく、演奏に必ず付随するさまざまな音のリアリティが非常に高い。楽器固有の重さや響板のきしみなど、演奏が高揚したときに漏れ伝わる様々な音響成分まで忠実に再現するので、特にベースとピアノは楽器イメージがリアルで、音像も半歩ほど前に出てくる。

次ページ音色の質感の高さと音場の密度の高さ、S/Nの良さ、静寂感も特筆したい

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