合計700万円の最高峰システム
超重量級メカと独自DACで究極のその先へ。エソテリックのセパレートプレーヤー「Grandioso P1X/D1X」を聴く
次にハイメ・ラレードのVirtuoso!(SACD)を聴く。アンコールピースを集めたアルバムということもあり、ヴァイオリンの演奏には力みがなく、余韻と溶け合ったピアノの柔らかい響きとの対比が美しい。録音という視点から見たこのアルバムの聴きどころは、ピンポイントで定位するヴァイオリンの自然な楽器イメージと、それを包み込むように広がるピアノの柔らかいハーモニーを空間的にどう対比させるかという点なのだが、P1X/D1Xで聴くと、空間表現が実になめらかで、空気中で柔らかく溶け合う一体感が格別に美しい。
旋律が前に出てくる感触は他のディスクと同様にこの録音でも感じられるが、それ以上に音色の質感の高さと音場の密度の高さに強く引き込まれた。仮想ステージの位置での楽器を取り巻くS/Nの良さ、静寂感も特筆しておきたい。
P1X/D1Xはディスクとファイル再生の両方でMQAへの対応を果たしている。DACがモノラル構成なので接続が複雑になるかと思ったが、実はD1Xのデジタル入力は左チャンネルに集約され、左右の伝送はES-LINK 5のHDMIケーブルが担う仕組みに変更された。ファイル再生の場合もサーバーのUSB出力をL側につなげばそのまま問題なくステレオ再生が可能である。
今回はP1Xとの連携動作を確認するためにMQA-CDを用意した。ボブ・ジェームスのアルバムをP1Xで再生すると自動的にMQAを認識し、ハイレゾでの再生がスタート。リズムの切れの良さと楽器イメージのリアリティの高さはCDと一線を画すもので、鮮度の高いサウンドを堪能した。
Grandiosoシリーズの登場から6年が経過したが、その口火を切ったP1/D1の価値が相対的に低下したという印象はなく、いまも高い評価を堅持している。
その一方でフォーマットの多様化やDACの進化など、デジタルオーディオならではのスピードの速い変化にさらされたことも事実で、アップグレードを求める声は強まっていた。
エソテリックが用意した解決策はアップグレードやマイナーチェンジの枠にはまったく収まらない。世代が異なる本質的なリファインなのでハードウェアやソフトウェアによるアップデートにも対応はできないという。既存のオーナーは複雑な思いがあるかもしれないが、今回の世代交代はフラグシップの領域だからこそ実現できた快挙であり、ハイエンドオーディオの歩みを先に進める果敢なチャレンジとしても注目に値する。
(山之内 正)