先代「P1/D1」からどのように変化したのか
究極のデジタル機から、アナログ再生への回答 − エソテリックの旗艦トラポ&DAC「Grandioso P1X/D1X」を聴く
■ナチュラルでしっとりした音。膨大な音楽情報が伝わってくる
テストはエソテリックの試聴室で行った。Grandiosoの「C1」「M1」、そして後半はクロックジェネレーターの「G1」も使用。タンノイの「Canter bury/GR」を鳴らしていった。先代のP1/D1と、P1X/D1Xを比較する聴き方だ。
まず普通のCDから聴いていった。先代の余裕や力強さ、ハイレゾリューションで膨大な情報量を聴かせてくれる感じも素晴らしかったが、P1X/D1Xでの音に、ついにデジタルプレーヤーが新たなる地平に到達したのを感じた。
基本的な音としては先代の延長上にはあるが、音調としてはよりナチュラルでしっとりしたものに。と同時にトランジェントが素晴らしいし、情報量という意味ではさらに増えている。
このニュアンスを伝えるのが難しいところだが、ディスクから細大漏らさす情報を読み取った上で、全ての音に対して公平に変換している印象なのだ。どこかの帯域を強調したりせず、公平でムラなく誠実に音にしようという意志を感じる。聴き手としてはこちらから音を聴きに行かずとも、全てが向こうから聴こえてきてしまうような、膨大な情報量が音楽のニュアンスとして伝わってくるような感覚がある。
■特にSACDの音の良さに驚き。ホールの空気感が横溢してくる
一方でそうしたD/A変換部の深化とともに、アナログのバッファーアンプ部。これによる空気に音像を刻みつけ、空気感を漂わす、その力も上がっているようにも感じた。
もちろん先代と同じ音量で比較したが、耳にも脳にも肌にも音楽が浸透してくる力が上がっている。上がっているのにそれがあまりにナチュラルなので、身をゆだねてオーディオの存在を感じず音楽を楽しむことに没頭してしまう。
そして驚いたのはSACDの音の良さだ。CDとSACDの差がこれほどまでに大きかったとは。一言で言うと、演奏が始まる前のガヤでコンサートホールの空気感がすでに横溢し、音楽が始まるとオーケストラの各パートや合唱隊、そしてソリストの実在感の高さに圧倒された。
また、MQA-CDはボブ・ジェームス・トリオ『エスプレッソ』を聴いたが、デコードしても88.2kHz/24bitというそんなに数字の大きくないハイレゾなのに、通常のCD層の音と比較してその差の大きさには認識を改めざるを得なかった。
値段といい、4筐体といい、自身のオーディオルームに収められる方は幸せだ。アナログとかデジタルといったことに関係なく、全てのオーディオファイル、音楽好きの方に体験してもらいたい音とお伝えしたい。
(鈴木裕)
<Specification>
【Grandioso P1X】
●再生可能ディスク:SACD、CD、CD-R、CD-RW●デジタル出力:ES-LINK×1、XLR ×2(Dual AES出力時は、2つの端子を使用するので1系統になる)、RCA×1●クロックシンク入力:BNC×1●入力インピーダンス:50Ω●入力可能周波数:10MHz(±10ppm)●入力レベル:サイン波 0.5〜1.0Vrms●消費電力:18W●サイズ(突起部含む): 本体部445W×162H×449Dmm、電源部445W×132H×452Dmm●質量:本体部29kg、電源部24kg
【Grandioso D1X】
<アナログ出力>●端子:XLR/ESL-A Lch,Rch 各1(モノラル)、RCA Lch,Rch 各1(モノラル)●出力インピーダンス:XLR 100Ω、RCA 47Ω●最大出力レベル(1kHz、PCMフルスケール信号入力、10kΩ負荷時): XLR 5.0Vrms、RCA 2.5Vrms●周波数特性(192kHz PCM信号入力時):5Hz〜75kHz(-3dB)●S/N:113dB●歪率(1kHz、D/Aコンバーター動作モードM3設定時):0.0007%
<デジタル入力>●端子:ES-LINK×2、XLR×1、RCA×2、光デジタル×1、USB(USB2.0準拠)×1(B端子)●クロック入力:BNC Lch、Rch 各×1●消費電力:20W●サイズ(突起部含む):445W×132H×448Dmm●質量:Lch 23.1kg、Rch 23.0kg
本記事は季刊・アナログ Vol.63所収記事を転載したものです。本誌の購入はこちらから。