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【特別企画】独自技術「WARPシステム」が実現

イヤホンの“空間表現”が変わる。Artio「CR-V1/M1」が描く超立体サウンドをレビュー

公開日 2019/07/10 12:00 高橋 敦
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WARPシステムだけではない、Artioらしさを凝縮

新技術のWARPシステムが最大のポイントであることはもちろんだが、この新モデルは同社既存モデルにも搭載されている独自技術や音作りのノウハウの結晶でもある。特に価格的に上位となるCR-V1は、音の刺さりとなる帯域をピンポイントで抑え込む音響設計 “SkIS” と、左右のばらつきを製造最終段階で微調整可能とした “s.n.a” 技術も搭載している。

CR-V1ではArtio独自技術が多数搭載される。筐体はシルバーカラーを用いた

ケーブルは金メッキOFC導体のものと、金メッキ銀線導体のものが2種類付属する

またフロント/センター/リアで構成されるハウジングも、CR-M1がすべてアルミであるのに対して、CR-V1ではフロントにチタン合金を採用。チタンハウジング採用「RK01」で得たノウハウを生かしたものだろう。CR-M1ではSkISのみを搭載している。

CR-M1ではWARPシステムの他に、SkISを搭載。ケーブルは金メッキOFC導体のみ1本付属し、筐体やケーブルの色はブラックを採用

それぞれイヤーチップは同じTYPE Eイヤーピース(SS/S/M/L/LL)を同梱する

2モデルの位置付けとしては、Artio技術の全部入りフラグシップでもあるCR-V1、WARPシステムの威力をより手頃な価格で実感できるCR-M1といったことだろう。それでは、実際のWARPシステムによるサウンドとは一体どんな音なのか。上位モデルのCR-V1から聴いてみた。

まず最初にお伝えしたいのは、
『空間表現は確かに従来のイヤホンと違う!』
『だけど従来のイヤホンから違和感がありすぎることもない!』
ということ。

よくある “挑戦的な技術から生み出される音” というのは、理屈の上ではより自然な音と言われても、聴き慣れている音からの跳躍が大きすぎるためか、感覚的には不自然に聴こえてしまうことも多々ある。

しかしWARPシステムによるサウンドは、これまでのイヤホンでは感じにくかった立体的な空間性が確かにありつつ、不思議と違和感は無い。スピーカー再生に近いというだけではなく、従来のイヤホンと聴き比べても「違うけど違いすぎない」のだ。そういう特殊なやつは苦手…という方も、聴かず嫌いせずにぜひ聴いてみてほしい。

従来のイヤホンとしての音質からかけ離れることなく、立体的な空間表現を可能にしている

具体的にどういった空間表現なのか。その効果を最大限に感じられた楽曲は、悠木碧さん「レゼトワール」だった。この曲は悠木碧さんの声だけの多重録音で構築されており、悠木さんの声が幾重にも重ねて配置されている。まずその配置の奥行き、距離感、そして左右の広がりも明瞭になることは期待通りだった。

期待を超えてきたのは、音の配置の立体感だけではなく、その音自体の立体感までもが明らかに強まったこと。そして上下の配置や後方までの回り込みまでも含めた、全方位的な立体感までもが出てきたことだ。

どの場所にどの音が配置されているのか、といった立体表現を高度に実現する

そこで思い出したのだが、この曲「レゼトワール」を含むアルバム『トコワカノクニ』は極めて特殊な手法で制作されている。収録には通常マイクの他にダミーヘッドマイクも使われており、そうして収録した声を一度5.1chサラウンドミックスにして、それをサラウンドスピーカーシステムで再生したものをダミーヘッドマイクでバイノーラル収録してあるのだ。

つまり、そもそもこの音源には超立体的な空間情報が収められている。そして、これまでのイヤホンでは引き出しきれなかったそのポテンシャルが、WARPシステムによって最大限発揮されているのではないだろうか。

次ページ2モデルそれぞれに個性あるサウンド

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