コンセプトシリーズの魅力をハイブリッド
これがゾノトーンでしか味わえない音。新“Grandio”のインターコネクトケーブル「AC-1」レビュー
そのまま今度は、ジャズヴォーカル・ソースを聴く。ともすると、歯擦音が強調されてしまいがちな歌声も、明瞭な迫り出し感を持ちつつも、決して尖った音にならない。声には適度な厚みがあり、そして、色気を感じさせる丁寧な声色の描写がある。
同時に、エレクトリックベースやバスドラムのサウンドを、より密度の高い音で伝える充実感がある。加えて、楽器同士の間合いや距離感、立体感なども、見通しが良い。
■心に訴えかけるパワフルさや迫力と、拡がりや奥行き感が融合
最後に、クラシックソースも試聴してみる。ピリオド楽器を用いた、編成の大きなバロック音楽のミサ曲を再生する。間接音が多い上に、楽器の音色再現には繊細な表現力が求められるソースだ。
ともすれば線が細くなってしまいがちなこの音源も、Grandio AC-1を用いた接続では、全体のボトムエンドの恰幅が増し、安定感のある豊かな聴き心地になる。パワフルな音鳴りで、演奏や楽曲の持つ積極性が引き出されている。しかしながら、かといって音像が滲んだり肥大化したりすることなく、あくまで、安定感が増しつつも音楽の輪郭が明瞭化する点が本ケーブルの特徴である。
ステージに展開する楽器や歌声もしっかりと解像され、空間に響く音を見通しよく描写していくのだ。強奏部と弱音部での音量の対比や、それに伴う響きの拡がり方の違いもしっかりと感じられる。ジャズトリオ同様に、演奏の線が滲まず、音像や音場が明快なのだ。
RCAとXLRそれぞれのバージョンを試してみたところ、基本的にはまったく同じ傾向の音である。RCAの方が、幾分穏やかかつ滑らかな音色傾向となったが、これは、機器内での回路的な経路や構成の違いに起因した音傾向の違いが大きいと推察する。傾向的に、完全なバランス回路で構成されるコンポを接続したときも、バランス接続とアンバランス接続では、このような違いを感じることが多い。
よって、RCAバージョンのコネクタがロジウムメッキで、XLRが金メッキというコネクタの使い分けは、両モデルを使ったときに得られる音傾向を揃える意味でも、的確な采配なのではと感じた。
総じて、Grandio AC-1は、雑味無く滑らかでリッチな質感、そして心地よく音楽が迫り出てくる明瞭感と迫力が堪能できるケーブルである。
さらに演奏や楽器のディテール、そして空間描写において、情報量豊かなハイファイ性を保持しながらも、ボーカルの子音やピアノの高域の打鍵、そしてドラムスのシンバルやオーケストラのトゥッティなどが決して尖ったり歪みっぽくならない、非常に快適な聴き心地を提供するケーブルである。
まさに、心に訴えかけるパワフルさや迫力と、拡がりや奥行き感が融合したバランスのよいサウンドだ。そしてこの絶妙な塩梅は、やはりゾノトーンでしか味わえないものである。
特に、様々な音楽ジャンルを楽しむ人で、ソフトを選ばずホットで快活な質感を、豊かなディテール表現や音場描写と共に楽しみたい方に打ってつけのケーブルだと思う。また、デジタル再生システムなどで、システム全体にもうひとさじだけ温度感や心地よいメリハリを持たせたいときなど、フィニッシングのケーブルとしての利用にも好適だと筆者は考える。
(生形三郎)
「Grandio AC-1」
●ハイエンドインターコネクトケーブル
RCA ¥85,000/1.0m(税別)
XLR ¥89,000/1.0m(税別)
【SPEC】
●導体構成:超高純度7NクラスCu、高機能純銅線HiFC、高純度無酸素銅線PCUHD、モダーン錫メッキ高純度銅、高純度無酸素銅OFC ●構造:中心にはエラストマーで覆った天然綿糸を振動対策として配置。その周囲に5種類の異種線材、異種線径の導体に絶縁体を被せた完全独立の10芯導体を配置。革新的なDMHC方式 ●導体サイズ:1.7スケア(5芯)×2(計10芯)(片チャンネル) ●外部ジャケット:PVCの上に2色の強靱なナイロン編組を加えた2重ジャケット ●絶縁体:高純度ポリエチレン ●シールド:銅編組シールド●介在:天然綿糸 ●外径:17.0oφ ●端子:【RCA】精密一体加工によるコレットチャック方式。(キャップ)ニッケルメッキ╱(ピン)ロジウムメッキ。キャップ最大径14.5oφ【XLR】ノイトリック社のプロ用端子製品。接触部分は金メッキ仕様。端子最大径20.5oφ ●1.0m超の長さは0.5m間隔で特注可 ●1本でL/Rを接続可能 ●分岐部から端子までの長さ20cm(※機器のL/Rchの端子間隔が40cm以上は接続不可) ●取り扱い:(株)前園サウンドラボ