現代的な高い解像感も兼備
ブランドの歴史を彩り豊かに体現する、FOCAL40周年記念スピーカー「SPECTRAL 40th」レビュー
ロック音源においてもこの艶やかな表現性が効果的に働き、エレキギターのリフの粒立ちやスネアドラムのスムーズなアタック感を彩り良く引き出す。リズム隊の低域パートは密度良く引き締めるが、ボディの厚みを程よく持たせ、ずっしりとした安定感のあるグルーヴを生み出している。
シンバルの響きはクリアで、ハスキーなボーカルもボディの厚みを持たせ、口元を艶良く滑らかに描く。バランス良く落ち着きのあるサウンドであり、荒々しさは感じない。女性ポップスにもフィットする音色傾向といえよう。
SPECTRAL 40thは、アラミド繊維系ならではの明るく艶ある倍音表現と、滑らかなディティール表現を生かしつつ、重く堅牢性の高いキャビネットによる低域の引き締め効果が組み合わさり、現代的な解像度の高さと柔軟な描写性を持つスピーカーシステムである。甘く穏やかなだけでなく、場面に応じて制動性高くまとめ上げる、硬軟自在な点が特長であり、ウェットかつ流麗な表現力を持った上質なサウンドを聴かせてくれる。
それはただ懐古的なものではなく、フォーカルの歩んできた道のりと、フランスという文化・歴史の深い土地柄に育まれた時間の重みを、現代的な技術によってどのような手法で表現するのか。そうした命題を託されたのが、このSPECTRAL 40thである。
その音色は重みと軽やかさも併せ持ち、熟成された音楽の世界観、ブランドが背負ったサウンドを気負うことなく彩り豊かに体現している。類い稀な個性を持ったアニバーサリーモデルといえるだろう。
(岩井 喬)
■試聴音源
・飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜第一楽章(96kHz/24bit)
・デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)
・長谷川友二『音展2009・ライブレコーディング』〜レディ・マドンナ(筆者自身による2.8MHz・DSD録音)
・『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜届かない恋(2.8MHz・DSD)
・Suara「キミガタメ」11.2MHzレコーディング音源(5.6MHz変換したファイルを使用)