【特別企画】エントリーユーザーにも!
iBasso Audio「DX160」レビュー! 4万円以下で “弱点無し” 、後悔無用のおすすめモデル
■一言で表すなら力強いサウンド、明瞭なボーカル
実際に視聴してみよう。サウンドをまず一言で表すなら、「ジェントリーな力強さ」だろうか。前述のようにアンプ回路は超パワフルだが、そのパワーは、音をドカンと発散させるのではなく、しっかりとまとめ上げることに生かされている印象だ。
たとえば、Robert Glasper Experiment「Human」のクラブ系のベースやバスドラムの極太の低音。このプレイヤーはその太さを膨らませ過ぎることはなく、むしろややコンパクトにまとめ密度を高め、太さよりも濃密な重みの感触の方を強める。擬音で表現するなら「ドカンではなくズシンと来る迫力」。派手さに頼らない、落ち着いた説得力がある。
この部分は、アンプのパワーが足りないと中低域の抑えが甘くなりがちな、ハイエンドのダイナミック型イヤホンとの組み合わせで特に有効だ。しかしそうでなくイヤホンとの組み合わせでも明確に感じ取れることだろう。
高域側では音色の手触り感の描き出し方が秀逸。男女問わず、ボーカルの質感は、しっかりとした手触り感を出しつつざらつかせず、むしろしっとりと滑らかだ。
また発声の瞬間や収まりのキレもスパッとクリアで滑舌が良い。悠木碧さんの声がいくつもの声が折り重なる「レゼトワール」では、メインメロディではなく左右や背景から低めの音量で聴こえてくるコーラス的なボーカルラインの歌詞までが超明瞭に届いてくる。
その明瞭さには、前後左右の空間的な広がりの素晴らしさや、背景の透明度を高める優れたS/Nといった要素も貢献しているものと思われる。高原の澄んだ綺麗な空気の中で発せられる声、その空気を通して見る形式の美しさ、そんなイメージだ。
以上のような印象は特に4.4mmバランス駆動で際立つが、音の方向性としては3.5mmシングルエンド駆動も共通。まずはシングルエンド運用から使い始めて予算に余裕ができたタイミングでイヤホン側をバランス駆動対応にアップグレードする、という予定で購入してもよいだろう。プレイヤー導入時とバランス駆動導入時で感動を二回味わえることは、むしろお得といえるかもしれない。
■まずこれを選べば後悔しない一台
というように使い勝手やその音質を確認してから改めてその価格を思い出すと、改めて驚きを感じざるを得ない。この手頃な価格で、見事な音質、迷わず使える操作性、そして十分なコンパクトと、オーディオプレイヤーに求められる様々な要素をバランスよく兼ね備えている製品だ。
それは言い換えれば、弱点といえるような箇所はほとんどないということ。これを選んでおけば後から大きな後悔をすることにはならないだろう。これからポータブルオーディオに本気になってみようかなというエントリーユーザーにもおすすめしやすい一台だ。
(特別企画 協力:株式会社MUSIN)