ワイヤレス再生にも対応し利便性も向上
デザインも音質も、お値段以上。House of Marleyのレコードプレーヤー「STIR IT UP WIRELESS」を聴く
■エントリー価格ながら本格サウンド。初心者でも使いやすい操作性も◎
まず試聴するレコードは、最近ヘビロテで聴いているマーカス・ミラーの新譜「レイド・ブラック」(45rpm)である。スーパーベーシストであるマーカスが世界中のアーティストとコラボしたクールなアルバムで、45回転の2枚組で音質も良い。本機はアームを動かしリードグルーブに近づけると回転が始まり、ホルダーに戻すと回転がストップする。これはアナログ初心者には優しい設計だ。
そして感心するのは、スタイリッシュな外観に加えて本格的な音質であること。ビートの効いたマーカスのベースはグルーヴのあるリズム感を持ち低域も出してくるタイプで、しっかりとしたダンピングでシェイプされて、全帯域とも緩んだ表現にならない。明るい音色は楽曲の持つ旨味を高い音楽性で聴かせてくれる。また、音像や空間表現も価格の割にとても鮮明である。
次に聴いたジャズボーカルのダイアナ・クラール&トニーベネット「Love Is Here to Stay」(33rpm)は、色彩が豊かで明るいピアノと朗々と歌う二人のボーカル表現に感心した。またボリューム調整はプレーヤー上部のボリュームコントロールノブから行えるのだが、本機はハウリングマージンも予想以上に高く、音質を上げても音滲みが少なかったことも特筆しておきたい。
■Bluetooth環境で再生。最小限システムでもリアルな表現力を発揮
STIR IT UP WIRELESSの単体性能をチェックした後は、目玉機能ともいえるBluetooth接続によるワイヤレスレコード再生を試してみた。先述した通り、Bluetoothスピーカーやヘッドホンなどを組み合わせるだけの最小限のシステムで、ワイヤレスのレコード再生環境を構築できるのだ。
今回は、同ブランドのBluetoothスピーカー「Get Togetheri」とBluetoothヘッドホン「EXODUS ANC」と組み合わせ、デザイン意図を合わせたシステムを構成した。まずは「Get Together」と組み合わせる。両者のBluetoothボタンを長押しすると数秒後にペアリング作業が完了。この簡単さもありがたい。
この状態でブルーノートJAZZの名盤、ケニー・バレル「ミッドナイト・ブルー」のステレオオリジナル盤を再生した。先ほどの本格的なシステムの音には及ばないものの、Bluetoothスピーカーとして外観から受ける印象よりはるかにダイナミックな表現力だ。リアルな表現のギターとベースのおかげで、筆者は仕事であることを忘れるくらい気持ち良くなった。
次に組み合わせたBluetoothヘッドホン「EXODUS ANC」も好印象。色艶の良い中高域を核とした音楽性の高い音で、実体感のあるギターサウンドを十分に満喫できた。それにしてもレコードプレーヤーとスピーカー/ヘッドホンだけでシステムが完結してしまうことは、普段本格的なシステムが多い筆者からするとかなり新鮮である。
巷では若者のアナログレコード人気が沸騰中である。「レコード盤をプレーヤーに乗せて針を置く」という視覚や触覚に訴えるそんな動作が、スマホなどで手軽に音を出す事が普通の世代には新鮮なのかもしれない。
また、改めてアナログ再生にチャレンジする往年のオーディオファイルも多いと聞く。それに呼応するように、国内外の人気アーティストから新譜のアナログ盤が沢山発売されているし、音楽ジャンルに関わらず往年の人気タイトルのオリジナル盤を探すファンも多い。コレクション要素が高いことも、デジタルファイル再生やストリーミングにはないレコード再生だけが備える要素だ。
そんなレコードをスタイリッシュなボディで手軽かつ良い音で楽しめるのがSTIR IT UP WIRELESSだ。じっくりと美しいボディの上で回るレコード盤を眺めながら音楽を楽しめるし、奏でる再生音は、筆者の期待を上回るものだった。また、本機はカートリッジを交換できる上、上級機のようにフォノイコライザーをバイパスすることも可能。より音質の高いカートリッジを使用すれば大幅な音質アップも期待できるなど、購入後の楽しみもある。
デザインから音質まで価格以上の魅力を感じる、素晴らしいレコードプレーヤーだった。こんなプレーヤーを導入してどんどん良い音楽を聴いてもらいたい。きっと素晴らしいライフスタイルが手に入るだろう。
(土方久明)