[PR]歴史あるシリーズの「完成形のその先」を提示
“木のヘッドホン”新モデルが体現する、オーディオテクニカの“伝統と革新”。ATH-AWKT/AWASレビュー
■ロングセラー機・ATH-W5000から「ATH-AWKT」への進化点とは
ATH-AWKTは高く評価されているATH-W5000のドライバーをそのまま受け継いでいる。53mm径、ドイツ製パーメンジュール磁気回路、6N-OFCボビン巻きボイスコイルなどが特長だ。もちろんドライバーの新規開発にもトライしたとのことだが、その上で現時点ではATH-W5000のドライバーがベストと判断したという。そのドライバーを継承した上でチューニングをより深化させたわけだ。
実際にATH-W5000と聴き比べてみたが、特に湿度感のある滑らかさの表現、そして低音楽器の響きの空気感となる超低域のしっかり感といった部分で、ATH-AWKTの音は明確な進化を感じられるものとなっていた。
比べるとだが、ATH-W5000はやや明るい音調で少しだけ重心が高く、ATH-AWKTはややダークな音調で重心の沈みが良い。総じてATH-AWKTは「黒檀という素材のイメージにより近い音」に仕上げられているという印象だ。
Helge Lien Trio「Take Five」はジャズのピアノトリオによる緊迫感溢れる演奏。際立ったのはウッドベースとの相性の良さだ。木質の響きの豊かさは出しつつも、硬質な骨太さとタイトなスピード感もあり、音が緩んで演奏のテンションを損ねてしまうようなことがない。他の楽器でも同じくではあるがウッドベースではそこが特に顕著だ。
またライドシンバルのカップ、あるいはカウベルを叩く音では、金属の響きの芯にある金属らしい粘り気もしっかりと感じられる。このあたりも「木材の柔らかな響き」というイメージとは一線を画すかも知れないが、しかし黒檀材の硬質さ、重厚感とは見事に重なるものだ。
他、Robert Glasper Experiment「Human」での現代的なクラブ系のローエンドのディープな響き、様々な曲でのエレクトリックギターの特にクリーンからクランチにかけての硬質な感触など、幅広い楽曲で様々な魅力を感じられるサウンドに仕上げられている。
■「ATH-AWAS」が具現化する“オーディオテクニカの今”
ATH-AWASのドライバーは53mm径という点こそ共通だが、現在の同社の持つ技術を投入。特に大きいのは「DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)コーティング」振動板の採用だ。これによって高域特性に大きな向上があるという。
またハウジング内の二重構造「D.A.D.S.(ダブル・エアー・ダンピング・システム)」の調整もATH-AWKTのそれとは異なるものとなっており、そこでも両者の音の個性を生み出している。
同じくアサダ桜ハウジングを採用した、2003年発売のATH-L3000は、ハウジングにレザーが貼られていることもあってか落ち着きのある音調だったが、ATH-AWASは高域側の抜け感や広がりが遠慮なく全開!という印象。密閉型ヘッドホンとしては最上級の開放感だ。
Hoff Ensemble「Dronning Fjellrose」はノルウェーの教会にて演奏者たちがマイクを取り囲むようにして演奏し録音された、幻想的な世界観の音楽。このヘッドホンで聴くと、それぞれの楽器の音色や演奏の機微に加えて、教会上方の窓から明るく優しい光が射しこんでくる、そんな光景が頭に浮かんでくる。
なんとも抽象的な表現になってしまっているが、音色も空間も明るく、そして演奏の機微の見えやすさが射し込む光で演奏者の手元が照らし出されている様子を想起させる、といったイメージだ。
またもちろん、ATH-AWKTと同じく、音のスピード感や中低域の締まりも備えており、Daft Punk「Get Lucky」のギターカッティングのキレや抜けは特に絶品。
■湿度感と重厚さが印象的な「ATH-AWKT」、明るい開放感が印象的な「ATH-AWAS」
両モデルの印象を簡潔にまとめると、「湿度感と重厚さが印象的なATH-AWKT」、「明るい開放感が印象的なATH-AWAS」といったところだろうか。ドライバーの違いだけではなく、黒檀とアサダそれぞれの木材の持ち味をより素直に引き出した音作りの妙によって、両モデルの個性が綺麗に分かれたといった感じだ。
例えば同じ曲、Daft Punk「Get Lucky」でも、ATH-AWKTではがっしりとしたベースによる腰に来るリズム、ATH-AWASではパキッと明る抜けるギターのリズムの方が前に来て、グルーヴの印象が少し変わったりする。機会があれば聴き比べてみてほしい。
オーディオテクニカのウッドシリーズには、木材という素材の印象もあり、トラディショナルな製品というイメージもあるかもしれない。実際そこも魅力のひとつだ。しかし実際にはハウジングを木材とすること自体が挑戦であり、またその技術内容にも多くの挑戦が含まれている。
新世代モデルが「伝統と革新」の2モデル構成で登場したことでその両面が共に強く掲げられた。我々も改めてそこに向き合ってみよう。
(協力:株式会社オーディオテクニカ)