圧倒的コストパフォーマンス!
【AAEx2020 グランプリ受賞】独創性を満載した驚異の電源タップ ― iFi audio「PowerStation」
■極めて高解像度なサウンド、音楽を生き生きと再現する
おそらく価格とすれば本機よりずっと高いだろうと思われる、音元出版試聴室レファレンスの電源ボックスを交換し、ディスクプレーヤー、プリ、パワーの全てをつなぎ直して音を聴き比べた。
クラシックはレスピーギ『ローマの祭り』からチルチェンセスを聴いたが、最初の一音が出た途端、思わず笑ってしまった。これまでいかに音像の輪郭線がにじんでいたか、音場は広くてもモヤついて全容を見晴らすことができていなかったか、オケの立体感と遠近感、人数が数えられるような解像度といったものが不足していたかを、このボックスは聴く者に惜しげもなく開示する。
しかも、高解像度だが無味乾燥とか分析的に過ぎるといった要素は微塵もなく、音楽を生真面目に、しかし生き生きと表現する。いつまでも聴いていたくなるサウンド傾向だ。
試聴を行った音元出版試聴室は、はっきり言って電源環境としては最悪に近い。都心の雑居ビルという条件は、他社テナントなどから猛烈な量の高周波ノイズが入り、同時に極強電界だからテレビやラジオの電波も容赦なく入ってくる。
しかし、ひっくり返していえば、ここほどクリーン電源関係のアクセサリーが効き目を発揮する場所もない。なのでこれまで数知れないほどの同様装置を試し、その効果を確認してきた。
本機はその中でもかなり秀逸な部類に属する。この価格でこれだけの機器が接続できて、なおかつこれだけの効果を発揮する電源ボックスというのは、ちょっと記憶にない。
試聴を続けよう。続いてジャズのレファレンスとして伊藤志宏『毒ある対話』から「夜来風雨の声」を聴いたが、ベースドラムが強烈なパワーとスピード感で鳴り渡り、シンバルや小物メタルパーカッションがしぶきを上げて散乱する。
ピアノはグッと前へ出て、打鍵の瞬間が分かるようなアキュラシーを聴かせながら、筐体に頭を突っ込んだような音像の巨大化や音色の不自然さはまったくない。真っ当な録音の音源を真っ当に再生したら、これだけの迫力と感動をリスナーへ与えることができる、というモデルケースになるような気がする。ウッドベースも濁らず膨らまず、しかししっかりとローエンドまで伸びてピアノと絶妙の絡みを聴かせる。音場空間はノイズフロアが決定的に低く、演奏場所の雰囲気をよく伝える。
次はポップスを聴こう。チャラン・ポ・ランタン『ドロン・ド・ロンド』より「最高」だ。このアルバムは実に声が生々しく、姉妹2人の質感の違いが克明に入っているのだが、それがここまではっきり分かるのかと驚き、強烈に張り上げた声が濁らないこと、鈍らないことも特筆できる。全体にパワフルで音像がグッと前に出るところは、本機の持つ特徴といってもよいだろう。とはいえ、それが耳に障るようなことはなく、全域をしっかり再生したら結果的にこうなった、というだけの話かもしれない。
なお、本機に空き端子ができたら、同社の「iPurifierAC」を挿してやれば、さらに音質は向上する。iFi audioは、例えば先般発売されたような「ZEN DAC」のようなMQA対応DACなどでも廉価ながら業界をリードする存在だ。今回、PowerStationを聴いて本当に強烈なコストパフォーマンスを実現するメーカーだと、改めて感じ入った次第である。
(炭山アキラ)
<Specification>
【PowerStation】
●ノイズ除去:>40dB(>100x)●サージ保護:最大30,000A@1,000V 10μS●動作電圧:90V〜265V●サイズ:478D×96W×76Hmm●質量:1.98kg●取り扱い:ENZO j-Fi LLC.、(有)トップウイング
本記事は季刊・オーディオアクセサリーvol.175 Winterからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。