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【特別企画】フィルター調節で低域量を調整可能

イタリアの芸術性と工業技術が産んだ唯一の音空間。Spirit Torinoのパッシブラジエーター搭載ヘッドホン「RADIANTE」を聴く

公開日 2019/12/23 11:30 佐々木 喜洋
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まず感じるのは音楽的な滑らかさと、独特の音空間表現の良さだ。ちょっと驚くようなくらいの音質の高さで、モニター的でシャープというのではなく、音楽的に滑らかで豊かさと厚みがある。それでいながら細かな音がよく抽出されて高い解像感をも感じる。これはおそらく、密閉型が本来持っている外音遮蔽の高さによってノイズフロアが低く抑えられているからではないかと思う。PCオーディオで聴いてもPCのファンのノイズが低く抑えられている。

そして本機には一種独特の音の個性があり、密閉型のよく聴くようなこもり感ではなく広く開けたような音空間が感じられるが、開放型のように外界の音が聞こえないので、音楽の空間に自分が入り込んだような気がする。いままでにないような新鮮な感覚だ。

密閉型ながら開放感のある音空間を感じられる。デコニ社製イヤーパッドで装着感も抜群だ

立体的で包み込まれるような音世界だが、小宇宙に閉じ込められたような感覚。音楽しか聞こえないという当たり前のことが密閉型だから実現できているということをRADIANTEは教えてくれる。良録音のバロックなどは細かな音再現力の高さと相まって、その残響でほんとにホールの大きさがわかるような感覚がある。これは大変に魅力的な音再現と言える。

それと低音の表現が特徴的だ。たとえばロックを聴いてもバスドラムのパンチが心地よく、ジャズであればウッドベースのピチカートの歯切れが良い。そして弦の鳴りの解像力があるとともに、ベースの音が重い。この低音の重さは密閉型ならではのものだが、音の切れ味の良さは通常の密閉型にはなかったものだ。

高音域はきらびやかで、ベルの音が鮮明で濁りなく美しい。それでいて音のきつさはよく抑えられていて刺激的な音は少なく、長い時間聴いていても不快感を覚えることはないような優しく鋭い鮮明さだ。中高域のバロックバイオリンの音は解像感の高さもあり、倍音の響きも豊かである。

中音域ではヴォーカルが肉感豊かであり、ささやくような女性ヴォーカルも逸品だ。息遣いや息継ぎの音もはっきりと聴こえる。わりと音は耳に近く、シートの前の席で聴いているような感覚に陥る。

ケーブルは取り外しが可能。ユーザーは注文の際に好みのものを選ぶことができる

春のヘッドフォン祭でお披露目された試作機では「PCなどでイコライザーを当てたほうが良い」ということで、サンプルのイコライザーカーブを見せてもらったりしたのだが、それから開発が進み結果的にイコライザーは不要となったとのことだ。たしかに高いレベルのチューニングがなされていると感じる。

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