HOME > レビュー > 中級機なのに“ハイエンド級” サウンド。マランツ「SA-12OSE/PM-12OSE」が遂げた大いなる飛躍

【特別企画】音質特化のチューンナップを実行

中級機なのに“ハイエンド級” サウンド。マランツ「SA-12OSE/PM-12OSE」が遂げた大いなる飛躍

公開日 2020/02/21 06:30 土方久明
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

OSEモデルの音質は「事実上バランス化されていないだけの10シリーズ」と思わせるレベル

次にSA-12OSE/PM-12OSEに切り替え、改めて同曲を再生した。正直に書くと、いくら大きなチューニングが施されているとはいえ、基本的な構成はベースモデルを踏襲しているので、そこまで音が変わるだろうかと僕は思っていた。先に聴いたベースモデルの音が予想以上に優れていたこともある。

試聴は土方氏宅の試聴室で行った

しかし音が出た瞬間、思わずひっくり返りそうになった。「違う、全然違う」。本当に思わずそう口に出たほど、音が良くなっているのだ。ショスタコーヴィチは聴感上のSN比が大きく向上し、特にサウンドステージの広さと奥行が素晴らしい。ヴォイスでは、音が出る前の一瞬の暗騒音が明らかに明瞭で、ライブ会場の張り詰めた空気感さえ表現されている。やはりSN比がかなり高い。

SACDからは、アンドレア・バッティストーニ 「イタリア・オペラ管弦楽・合唱名曲集」からトラック10の「歌劇《アイーダ》より凱旋の合唱」を再生した。DSDらしい滑らかさと圧倒的な情報量を確認したのだが、SACDでも通常モデルとOSEモデルにはかなりの差がある。

コンセプト通り、音色については両者は近い。しかし新しいSA-12OSE/PM-12OSEは、レンジ、抑揚、ダイナミズムが向上し、全帯域に力感があるのだ。SA-12とPM-12で感じた若干分析的な音がなくなり、情報量が増しているにも関わらず、音楽的な聴きどころが増すような表現力豊かな音に変貌している。

また、OSEモデルの個性を表現するなら、先に話した聴感上のSN比と共に、SA-12OSEは聴感上の情報量と中低域の力感向上、PM-12OSEはノイズフロアの低さと全帯域の密度の向上にあると判断した。

PM-12OSEの背面

SA-12OSEの背面



同時比較したわけではないが、SA-12OSE/PM-12OSEの音は既にSA-10/PM-10の領域に入っていると言える。その領域とは何か。それは、よりコストをかけたハイエンド機器だけが到達する音の領域だ。機器の性能に足を引っ張られず、それを超越して浸透力ある音楽に集中できる音の領域、そしてアーティストや製作者が聞かせたい音楽性をありのまま表現できる音だと筆者は考える。

SA-12/SA-12OSEからはその音の一端を聞くことができた。実売価格を考えると、これはとんでもないことだ。はっきり言ってしまえば、「事実上バランス化されていないだけの10シリーズと言えるのではないか?」僕はそう思った。

また、結果的に音の完成度が大きく上がっていることに加え、尾形氏の音質チューニングが巧みなことも印象に残った。本モデルの発売で、同氏の評価はさらに高まるだろう。

フロントパネルはミドルクラスの域を超えた質感。彫り込まれた「Original SE」のロゴが高級感を一層高めている

なお実は、本モデルはスペシャルエディションながら数量限定機種ではない。登場と同時にSA-12とPM-12が販売終了となるので、事実上の後継機となる。販売数が限定されると量産効果によるコストメリットが見出せず、わずか5万円の価格アップでは割に合わなくなるそうだ。

元々同社製品は非常にコストパフォーマンスが高かったが、この思い切った決断により、購入者は、ミドルクラスを完全に超えた素晴らしい製品を手に取る事ができるのである。

(協力:D&Mホールディングス)

前へ 1 2 3

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE