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【特別企画】フラグシップにふさわしい表現力

ラックスマンの歴史と新技術の融合、真空管コントロールアンプ「CL-1000」が実現したリアリティと力強さ

公開日 2020/02/25 07:00 山之内 正
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真空管は双三極管E88CC(JJ製)を計6本用いて、ボリューム前段、トーンコントロール、バッファーアンプにそれぞれ2本ずつ割り当てて増幅回路を構成する。P-K NF型の2段増幅回路は目新しいものではないが、帰還量の設定を吟味するのはもちろんのこと、カップリングコンデンサーにオリジナルのオイルコンデンサーを用いるなど、ラックスマンならではのノウハウを投入して音を追い込んでいる。

ラックスマンとして初採用となる双三極管E88CC(JJ製)を計6本搭載

バランス入力用の位相反転トランス、出力トランスはどちらも透磁率の高いスーパーパーマロイをコアに用いた専用設計で、ハイファイ仕様を突き詰めている。

CL-1000の外見は、アルミ製フロントパネルの重厚な印象とローズウッドの配色がバランス良く調和し、とても美しい。セレクターの重い動きやレバースイッチの感触が懐かしいが、単なる復古調ではなく、操作感も含めて現代のオーディオ機器が失ってしまった品位が、CL-1000から伝わってくる。名機として記憶に残る「C-1000」がデザインの起源と聞いて、納得した。

ローズウッド色の光沢塗装仕上げが美しいウッドケースも魅力

E88CCの実力を余すことなく発揮。MQ-300と鳴らす音は、艷やかな響きが魅力

ラックスマンの試聴室で、CL-1000と同社ステレオパワーアンプのフラグシップ機「M-900u」を組み合わせ、FOCALの「Stella Utopia EM Evo」を鳴らした。このクラスのフロア型スピーカーを朗々と鳴らすには、高出力のトランジスターアンプが有利なのは当然だが、実は前段のコントロールアンプにも強靭な駆動力が要求される。

ラックスマンのパワーアンプ「M-900u」と組み合わせて試聴

スピーカーシステムはFOCAL「Stella Utopia EM Evo」

E88CCはラックスマンとしては初採用ということだが、ECC88の上位バージョンとして知られるこの球で構成するドライブアンプは、情報量や周波数バランスなど基本性能が安定しており、S/Nも良い。本機はその良さを漏らさず引き出しているというのが、最初に受けた印象である。

CL-1000とM-900uの組み合わせで聴くガラーティのピアノトリオは、各楽器の音像が立体的で実在感が強く、特にベースは太い弦の振れ幅の大きさが目に浮かぶほど生々しい。ピアノの低音も重心が低く、しかも音数が増えても和音が混濁しない。バスドラムの抜けの良い動きは、CL-1000とM-900uの両方にそなわる瞬発力の大きさをうかがわせ、制動力にも余裕がある。

背面部。入力はアンバランスRCA×4/バランスXLR×1、出力はアンバランスRCA×2/バランスXLR×2を搭載する

アンプ回路はL/Rをブロックコンデンサーから別系統で分離する強力な定電圧回路構成とし、セパレーションに優れ余裕ある供給を実現

シューベルト「鱒(ます)」を田部京子とカルミナ四重奏団の演奏で聴く。いつもの音量で聴いた後に、小さめの音でも聴いてみたが、楽器間のバランスはほとんど変わらず、ヴァイオリンとピアノの旋律が潤いのある音で浸透してくる。

34ステップの音調調整は、数字だけ見ると少なく感じるかもしれないが、小音量の範囲も含め、実用領域で段差が大きく不満に感じることはないはずだ。それよりも音質上のメリットの方が明らかに大きい。

ジェーン・モンハイトのヴォーカルは低音域がくぐもることなく、発音もクリアでにじみがない。一番感心したのは、喉と唇の潤いや声のボディ感が生々しく伝わることで、生身の人間が歌っている温度感まで実感することができた。ラックスマンのアンプに共通する資質を受け継いだ面もあると思うが、CL-1000はそこからリアリティ志向に一歩踏み込んだような気がする。

次ページパワーアンプ「MQ-300」との組み合わせ試聴

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