評論家・土方久明が試す
JVC製4Kプロジェクター新機能「Frame Adapt HDR」の実力は? オンとオフでは「見通しが全く違う」
しかし現在のところ、UHD BDディスクに記録されたメタデータの正確性は必ずしも完璧ではなく、数値が明らかにおかしいものや、そもそもメタデータが記録されていないディスクも散見されている。また、記録されるMAX CLL/MAX FALLの精度も完璧ではない場合もある。映像制作に深く関わる人物にこの理由を尋ねたところ、MAX CLL/MAX FALL値を厳密に決めるのは、最終的にマスタリングする人間の感性も必要で、時間やコストの関係から全てのソフトで精度の高い数値を出すのは難しくなっているとのことだった。
そこでFrame Adapt HDRではスタティック・メタデータに頼らず、入力されたHDR10コンテンツの最大輝度、明度、色相、彩度を最大60フレームごとにリアルタイムに解析して、画質を自動調整する。また、12bit精度で行われていたガンマー処理を一気に18bitまで高めることで、更にスムーズな階調表現を可能にした。
本機能の適応モードはフレーム、シーン、固定の3種類が用意され、HDRの効き具合である「HDR Level」もオート、高、低、の3つのモードから選べる。結論から書くと、本機は驚くほどの効果を視聴者に提供し大いに感心した。
本機能を適応するには公式サイトのサポートページ(https://www3.jvckenwood.com/projector/support/dla-v9r_v7_v5_update/index2.html)からダウンロード後解凍したファイルをUSBメモリ(FAT32でフォーマットされた空状態のメモリ)に保存して、そのメモリをプロジェクター背面の「SERVICE」USB端子に挿入後、プロジェクターの電源を入れ、設定メニューからアップデートを行う。作業時間は使用中機器のファームウェアバージョンにより違うが、筆者環境だと10数分かかった。また、アップデート後の最初の起動に約3分の時間がかかるので、じっくりと待ちたい。
アップデートが終わると、設定メニューの画質モード変更メニュー内に「Frame Adapt HDR」という項目が表示される(HDR10コンテンツ入力時)。
■Frame Adapt HDR機能をオンにすると「見通しが全く違う」
今回はHDR10コンテンツのUHD-BDディスクとNetflixで同機能のクォリティチェックを行う。プロジェクターの画質設定は、コントラスト、明るさ、色の濃さ、色合いは全てフラット(0)。HDR Levelはオート、HDR Processingはフレームとした。
まずはUHD-BDディスクから、画質レビューの定番である、クリント・イーストウッド監督・製作「ハドソン川の奇跡」から、画質評価で多く使われる、トム・ハンクスのランニングシーンを確認する。
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