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音もデザインも良いという贅沢。ELAC「DBR 62」/Carot One「ERNESTOLO 50k LIMITED」レビュー

公開日 2020/04/14 06:30 生形三郎
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一層磨かれたクオリティで、肩に力が入り過ぎずに音楽を楽しめる

DBR 62は、まずはアキュフェーズのプリメインアンプ「E-380」を使って駆動したが、従来のDebutシリーズに比べて、全体的に音の品位が一段と高くなっていることが分かる。聴き心地の良い、快適な音質なのだ。

ジャズのピアノトリオでは、ピアノは透き通っていながらも程よく暖色な音色で、タッチが滑らか。ドラムスも、スネアドラムの打音に温かみがあり、ウッドベースもふくよかだ。女性ヴォーカルソースでも、やはり歌声に適度な潤いと温もりがあるのだが、音の定位が明解で、各楽器の存在を明瞭に感じとれることが快い。オーケストラソースは、ステージの広さを隅々まで明瞭に描くというよりも、透明度や解像感は高くも、全体的にスムーズさが尊重された描かれ方で、肩に力が入り過ぎずに音楽を楽しめる。

低域は、量感が豊かながら立ち上がりがシャープで余韻もスッキリとしており、明確な輪郭で描かれる。バスレフポートの新調をはじめ、先述の筐体剛性向上の恩恵が大きいのだろう。これまでのDebutシリーズよりも一層磨かれた印象である。

また、驚かされたのが、ルームアコースティックとの関係性だ。今回の取材は、やや響きが多い部屋での試聴であったが、ウェーブガイドの恩恵だろうか、音量を上げても部屋内で音が飽和したり混濁したりせずに、良好な定位感をキープする。この辺りは、洗練されながらも適度な温かみがあるレトロデザインの意匠と併せて、音響面でも、より日常空間へと容易に溶け込む設置性を確保していると言える。

なお、同社上位機の旧モデル「BS243」とも比較してみたが、中域や高域の緻密な表現力ではJETトゥイーターを搭載するBS243が勝りながらも、低域の質感では、より量感が豊かで、なかつ俊敏さや彫りの深さに秀でるDBR62に分があると感じさせた。やはり、大きな振動板口径と高剛性なフレームを持ったウーファー、そして新設計のタイトなバスレフポートが活きているのだろう。

独特の色味や彩度で明るく浮かび上がる、歌声や旋律が心地よい

次にDBR 62を、ERNESTOLO 50k LIMITEDで駆動した。すると、一転して、柔らかみある音色が立ち現れた。音の描かれ方に、独自の音色感や拡がり感を持ったサウンドが楽しめるのだ。低域方向は、動きが鋭角的になり過ぎず、ゆったりとした聴き心地を支えている。

例えば、ピアノトリオでは、ピアノは音色再現にメリハリがあり、奥行きを感じさせる鳴り方だ。ウッドベースは、細かい描写性こそ譲るものの、演奏のフレージングに独特の粘りを持つと共に、恰幅の良い音像で描き出される。ドラムスは、シンバルは近くに、スネアドラムは微妙に奥まるなど、楽器ごとに独特の距離感が生まれ、立体感や広がりを感じさせる鳴り方だ。そして、シンバルなどの金物類には、ザックリと切れ込む独特の輝かしい音色がプラスされる様が美しい。

ヴォーカルソースは、奥行き方向を深く描くよりも、左右方向へと積極的に音が展開されていくようだ。一つ一つの楽器の存在を明瞭に分解させるよりも、全ての楽器を一体感高くリスナー側に描き出してくる。よって音楽との距離感が近く感じられ、歌の世界への没入感が高い。また、声の質感は滑らかながら、ディティール表現もしっかりと出ている。

オーケストラソースでは、音圧の高い部分では、音域によって真空管の共鳴が乗るのか、チューブアンプらしい音の歪みや響きが仄かな旨味となって再生音に乗る。とりわけ歌声や旋律の帯域、チェンバロの輝かしさなどが、独特の色味や彩度で明るく浮かび上がるさまが心地よいのだ。

総体的に、開放感のある、生き生きとした表情が楽しめる。音楽表現が暗くならない、抑制的にならないこのアンプの性能は、小型だからといって侮ることができない、強い魅力がある。加えて、以前この試聴室でERNESTOLO 50kを聴いた際の印象に比べると、より忠実度の高い音の鳴り方になっているように感じられた。これらは、やはり真空管やオペアンプのグレード向上によるものなのだろう。

良質なサウンドとデザインを兼ね備えた魅力的なモデル

総じて、両者ともに、従来モデルからの着実なバージョンアップを感じ取れるものであった。DBR 62は10万円以下スピーカーというジャンルに新たに登場した魅力的な選択肢だと言えるし、ERNESTOLO 50k LIMITEDは、小型で、サウンドにもルックスにも洗練された遊び心溢れるアンプとして、他の製品とは一線を画す魅力を備えた製品だと言える。

ともに、良質なサウンドを確保するだけではなく、生活空間に寄りそう優れたデザインも同時に提供しようとする作り手の姿が見えてくる製品である。


(企画協力:株式会社ユキム)

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