[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第249回】
あえて推したい!1000円台からの“強くて安い”エントリークラス有線イヤホン3選
この音にはもちろん中野氏の個人的な好みも反映されているというのだが、ならばその中野氏のオーディオ的な好みが正統派ということだろう。
低域・中域・高域のバランスはほぼフラット。完全にフラットではなく「ほぼフラット」というのは、低域から中域にベースラインのドライブ感やドラムスの太さなどを絶妙にプッシュするアクセントがあること、高域から超高域は無理に伸ばさず素直にまとめて、耳に強く刺さったり当たったりする感触を抑えてあること。そこはおそらく意図的に、特性的にではなく聴感におけるフラットさを重視している音作りと感じられるからだ。
その音作りのおかげで、楽曲の演奏や録音などの狙いは崩れることなく届いてくるし、バスドラムやベースの低音による大きなリズムから、ギターのカッティングやシンバルによる細かなリズムまで、聴き取りやすさと聴き疲れなさを兼ね備えて刻まれてくる。バンドスタイルだろうがエレクトリックスタイルだろうが、そのリズムのニュアンスを正しく伝えてきてくれるのは嬉しい。
そしてボーカルの滑らかさも心地よいので、男女問わず声重視・歌重視の曲や聴き方にもフィット。総じてどんなジャンル、どんなサウンドの曲を聴いてもハマる!得手不得手のないサウンドに仕上げられているというわけだ。まさに王道正統派!
しかし王道正統派サウンドというのは、この超エントリークラスな価格帯を検討する一般ユーザーに向けてのわかりやすい派手なセールスポイントにはなりにくいのが現実。
だがしかし!このモデルは「ピエール中野チューニングによる」王道正統派サウンド!王道正統派サウンドに欠けているアピール力をピエール中野さんの知名度&信頼度が補うこのコンビネーション!この有線ピヤホンは「いい音ってこういうのでしょ?」を、より多くの音楽ファンにバンバン伝えてくれるアイテムなのだ。
▼ダミヘに強い!final「E500」
最後に紹介するfinal「E500」は、ぱっと見ごく普通のイヤホンだ。形はコンパクトな円筒で誰の耳にもフィットしやすいし、小型軽量さのおかげで、使わないときにも邪魔になりにくい。お値段も実にお手頃な税込2,000円程度。
一見したところでは、普通に出来の良いエントリーイヤホンとしか思えない。では、ここで紹介したい “普通ではないセールスポイント” はどこにあるのかというと、「バイノーラル音源の再生をターゲットとしたサウンド」である。