【特別企画】上位機の美点を引き継ぐ再現性
一流のサウンドを“手に入る価格”で実現。パラダイムの新主力スピーカー「Premier」の実力に納得
■空間表現に優れるスピーカーで、映画では高さの表現も楽しめる
100Bと700FによってPremierシリーズの素性の良さを実感した後、フロントに800F、センターに600C、サラウンドに200B、同社製サブウーファー「Defiance V12」(国内未導入だが近日発表予定)の5.1ch構成で、サラウンド再生の実力を確認した。組み合わせたAVアンプはヤマハ「RX-A2080」で、映像コンテンツにはUHD BDを使用した。
空間表現に優れる現代的な高性能スピーカーでマルチチャンネル・サラウンドを構築するとどんな体験が味わえるのか、という問いに対する、お手本のように素晴らしい再生音である。巨大な爆発音から微細な金属音にいたるまで、あらゆる効果音を緻密かつ存在感たっぷりに描き、情報量は極めて大。音の奔流は今回使用した試聴室の空間を隙間なく埋め尽くし、もっともっと広い部屋でも密度の不足を感じることはまずないだろう。
トップスピーカーを用いない5.1ch構成でも、豊かな「高さ」の感覚が得られることも重要だ。映像音響における「高さ」の表現は、Dolby AtmosやDTS:Xが登場する以前から、しっかりとした空間表現力を備えたスピーカーであれば表現できていたものであり、まさにPremierシリーズの実力が証明された形となった。
また、100Bや700Fで感じた「耳馴染みの良さ」はサラウンドにおいてもいかんなく発揮され、現代映画の、それこそ筆者の趣味で試聴に使った『マッドマックス 怒りのデス・ロード』や『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』といったタイトルの激烈なサウンドを大音量で浴びても、それが不快感に繋がらない。もちろん、鋭利で硬質な音も大気を震わす低音(これについてはV12の存在も相当効いている)も、シーンのテンションの高さも、しっかりと再生したうえで、である。
それにしても、今回使用したセンタースピーカーの600Cには驚きを禁じ得ない。PPA搭載のトゥイーターとミッドレンジ、800Fと同等の2基の165mmウーファー、さらに2基の165mmパッシブラジエーターと、サイズも含め、16万円(税抜)という価格からはにわかに信じられないほど本格的な内容からは、「Premierシリーズはステレオだけでなくサラウンドにも本気です」というパラダイムの意思表示が聴こえてくるようだ。
実際の再生音においても、厚みと透明感を両立させたダイアローグをはじめとして、サラウンドの要として大きな役割を果たしていた。『ボヘミアン・ラプソディ』の音楽シーンの再現も素晴らしい。センタースピーカーをデメリットなく置ける環境であれば、ぜひとも検討したいモデルだ。
Premierシリーズは、パラダイムのスピーカー作りに対する一貫した姿勢が随所に感じられる見事な出来映えだ。上位機であるPersonaシリーズの美点をしっかりと継承し、ステレオでもサラウンドでも大きな満足が得られることは間違いない。特に、700Fと600Cは、「価格に対するクオリティの高さ」という点で強い印象を残した。
高価になりすぎない価格帯でも優れたスピーカーが手に入るということは、オーディオやホームシアターの領域を盛り上げるうえでも重要な意味を持つ。そしてPremierシリーズには、まさにそんな役割を果たすだけのポテンシャルがあると、今回の試聴を通じて確信した。
(協力:株式会社PDN)