【特別企画】海外でも話題のアナログヘッドホンアンプ
Benchmark「HPA4」レビュー。鳴らしにくいヘッドホンも朗々と鳴る「THX-AAA」ヘッドホンアンプ
AAAの1つ目の“A”、“Achromatic”(アクロマティック)とはオーディオ分野では聞きなれない言葉かもしれない。アクロマティックとはもともと望遠鏡やカメラレンズでよく使われる単語で、レンズの収差(誤差)による色のにじみがないという意味だ。これをオーディオ分野に置き換えると、「着色感のないこと」あるいは「高忠実度であること」という意味で使われる。つまりAAAとは「原音そのままを通す」という感じの技術である。
THX-AAAの大きな特長は、低ノイズ、低歪み、そして低消費電力だ。特に歪みという点では、フィードフォワード技術を採用することで他とは文字通り桁違いの低歪みを達成しているとのことだ。増幅においては一般的なAB級よりもバイアス電流が少なくて済み効率が良い、つまり省電力という側面もある。
THX-AAAには搭載する製品に応じていくつかバリエーションもあるのだが、HPA4で採用されている「THX-888」は、高性能オペアンプ、パワーオペアンプ、トランジスタなどを用いてデザインされたTHX-AAAの最上位グレード。開発プロセスにはBenchmark自身も積極的に携わっているそうだ。
THX-888はデュアルモノ構成で仕様上のSN比は137dBという、アナログオーディオ回路としては信じがたいほどの高性能を誇っている。HPA4ではTHX-888に独自設計のフロントエンド回路を組み合わせており、帯域特性はなんと0.1Hzから500kHzに及ぶという。「究極のヘッドホンアンプ」とメーカーが呼ぶのもうなずけるところだ。
またHPA4のもうひとつの特徴はハイパワーであることだ。16Ω負荷で6Wという大出力を実現している。マニュアルに加えられた注意書きでも、HPA4の瞬間的な最大出力はヘッドホンを傷つけるのに十分な大きさであると記載されている。これほどの大出力を持たせているのは、海外では能率の低い平面駆動型のヘッドホンが特によく使われているからだと考えられる。
この大出力を安心して扱えるよう、複数の保護回路も搭載している。電源を入れた後、定格電圧に達するまでヘッドホン出力をミュートするソフトスタート回路をはじめ、過負荷、ショート、クリッピング、温度上昇といった異常を検知すると、回復するまでアンプ部〜ジャック間を切断する設計となっている。
加えてプロ機らしく、入出力が豊富な点も長所と言えるだろう。2系統のバランスライン入力、2系統のアンバランスライン入力、バランスライン出力、アンバランスライン出力に加えてモノミックスバランス出力まで装備している。またボリュームは256ステップのリレー式ゲインコントロールによって、高精度で低抵抗な0.5dB刻みのボリューム操作を実現している。
なお、HPA4はDACを内蔵していないアナログアンプなので、今回の試聴ではBenchmark製のUSB-DAC「DAC3 DX」を使用した。こちらは残念ながらメーカー生産が完了しており国内導入は無いとのことだが、ジッター低減機能「UltraLock3」など独自の技術を搭載。アナログ出力のゲインを固定する機能を備えているので、HPA4のようなアンプとの組み合わせに適している。