【特別企画】こういう真空管アンプを待っていた
トライオードの旗艦アンプ「MUSASHI」が浦賀に“入港”。オーディオ評論家が自宅で堪能
紛らわしいタイトルをつけてしまった。MUSASHI(武蔵)といっても戦艦にちなんだ名前ではない。トライオードの創業25周年を記念し、ブランドの発祥の地である武蔵の国からネーミングされたKT150搭載のプリメインアンプである。昨年秋の登場以来、爆発的な人気を誇っている同モデルが浦賀の筆者宅に導入されることとなった。KT150の強力な駆動力で愛用スピーカーのTAD「Reference One」がどんな音楽を奏でるのか? 注目のレポートをお届けしよう。
■大音量派のため管球アンプはこれまで選択肢になかった
私は自宅で真空管パワーアンプを使ってきた経験があまりない。ホーン型スピーカーを愛用していた90年代には、その高能率もあって一時期使ってはいたが、基本的に大音量派のため、ワッテージが稼げない真空管アンプはパワー不足で音が歪んでしまうのである。やがてPMCのスピーカーを使い始めた00年初頭から、新居に移って現在のTADに至るまで、この部屋で真空管パワーアンプの音色が響いたことは、試聴取材以外には皆無である。
端的にいえば、ハイパワーの真空管アンプならば私のオーディオスタイルに合致する。ところがハイパワーの真空管アンプは往々にして音が粗く、私の望む分解能や音場の再現性がいまひとつなのだ。そうした点では、やはり現代的な半導体アンプの方が私の要求に応えてくれることが多い。
そんな私の志向にマッチする真空管アンプに昨年秋、出会った。トライオードの「武蔵/MUSASHI」である。定格出力は100W×2(8Ω)と不足なく、プリメインアンプという構成ながら、ボリュームや入力セレクターをバイパスするパワーアンプ・モード(MAIN IN端子)を備えている点も私には好都合。本特集にかこつけて、あの好印象を改めてということで再び自宅でMUSASHIを試聴させていただくことと相成った。
ちなみに本記事タイトルに “入港” とあるが、本機の名称である “武蔵” は戦艦に肖ったものではなく、トライオードの本拠地の越谷がある埼玉県のかつての行政区分名称に由来している。94年創立からの創業25周年の記念モデルとして誕生した背景もある。
■常に新しさを模索する姿勢は大いに共感できる
近年、再評価の気運もある真空管アンプだが、その多くはセンチメンタルな要素が強く、真空管は音が温かいとか、昔の音を懐かしむといった郷愁的な面が大きい。
しかしそうした心情は、私のオーディオ観の中にはまったくない。つまり、真空管アンプをノスタルジーから見ることはないのだ。往年のマッキントッシュやマランツ、さらにはウェスタン・エレクトリックの古典的モデルを愛でるという考えは、少なくとも私のオーディオにはない。たとえ増幅素子として真空管を採用していても、回路的、あるいは設計コンセプトとして、現代的視点や斬新なアプローチがそこに見て取れるものを私個人は支持したい。
トライオードというメーカーは、ビンテージでもノスタルジックでもなく、常に新しさを模索しており、その姿勢には大いに共感できる。国内他社では、エアータイトやオーロラサウンドがそうだ。
このMUSASHIも、全体的なデザイン/フォルムにクラシカルなイメージはあるが、トライオード代表取締役で、自身で設計も手掛ける山撫一氏によれば、「KT150という銘柄は、従来の真空管にない特色を数多く備えた21世紀の球」という。それでも採用までは慎重だった。
ロシアのタング・ソル社が開発したKT150は、2013年頃から市場に出回り始めたが、同社はすぐに飛びつかず、品質が安定し、評価がある程度確立するまでじっと静観。昨年秋にようやくリリースしたのである。
■大音量派のため管球アンプはこれまで選択肢になかった
私は自宅で真空管パワーアンプを使ってきた経験があまりない。ホーン型スピーカーを愛用していた90年代には、その高能率もあって一時期使ってはいたが、基本的に大音量派のため、ワッテージが稼げない真空管アンプはパワー不足で音が歪んでしまうのである。やがてPMCのスピーカーを使い始めた00年初頭から、新居に移って現在のTADに至るまで、この部屋で真空管パワーアンプの音色が響いたことは、試聴取材以外には皆無である。
端的にいえば、ハイパワーの真空管アンプならば私のオーディオスタイルに合致する。ところがハイパワーの真空管アンプは往々にして音が粗く、私の望む分解能や音場の再現性がいまひとつなのだ。そうした点では、やはり現代的な半導体アンプの方が私の要求に応えてくれることが多い。
そんな私の志向にマッチする真空管アンプに昨年秋、出会った。トライオードの「武蔵/MUSASHI」である。定格出力は100W×2(8Ω)と不足なく、プリメインアンプという構成ながら、ボリュームや入力セレクターをバイパスするパワーアンプ・モード(MAIN IN端子)を備えている点も私には好都合。本特集にかこつけて、あの好印象を改めてということで再び自宅でMUSASHIを試聴させていただくことと相成った。
ちなみに本記事タイトルに “入港” とあるが、本機の名称である “武蔵” は戦艦に肖ったものではなく、トライオードの本拠地の越谷がある埼玉県のかつての行政区分名称に由来している。94年創立からの創業25周年の記念モデルとして誕生した背景もある。
■常に新しさを模索する姿勢は大いに共感できる
近年、再評価の気運もある真空管アンプだが、その多くはセンチメンタルな要素が強く、真空管は音が温かいとか、昔の音を懐かしむといった郷愁的な面が大きい。
しかしそうした心情は、私のオーディオ観の中にはまったくない。つまり、真空管アンプをノスタルジーから見ることはないのだ。往年のマッキントッシュやマランツ、さらにはウェスタン・エレクトリックの古典的モデルを愛でるという考えは、少なくとも私のオーディオにはない。たとえ増幅素子として真空管を採用していても、回路的、あるいは設計コンセプトとして、現代的視点や斬新なアプローチがそこに見て取れるものを私個人は支持したい。
トライオードというメーカーは、ビンテージでもノスタルジックでもなく、常に新しさを模索しており、その姿勢には大いに共感できる。国内他社では、エアータイトやオーロラサウンドがそうだ。
このMUSASHIも、全体的なデザイン/フォルムにクラシカルなイメージはあるが、トライオード代表取締役で、自身で設計も手掛ける山撫一氏によれば、「KT150という銘柄は、従来の真空管にない特色を数多く備えた21世紀の球」という。それでも採用までは慎重だった。
ロシアのタング・ソル社が開発したKT150は、2013年頃から市場に出回り始めたが、同社はすぐに飛びつかず、品質が安定し、評価がある程度確立するまでじっと静観。昨年秋にようやくリリースしたのである。