素早い音声認識で、スマートホーム連携もスムーズ
1万円ちょいで買える驚きの高音質。アップル「HomePod mini」の完成度が衝撃的
■クリアな中高域。低音は筋肉質な力強さ
HomePod miniは、高さ84.3mmの球体エンクロージャーの中に高出力のフルレンジドライバーを内蔵し、開口部を下向きにレイアウトしている。側面に向けて対になる2基のパッシブラジエーターを設けて、コンパクトなサイズを超える低音を引き出す。
スピーカーユニットから出力された音は、アコースティックウェーブガイドにより本体の底面方向へと導かれ、360度へ均等に音が広がるようにデザインされたスリットを通過する。心地よい音場の広がり感が得られる秘密がここにある。
アップルが独自にデザインしたアコースティックウェーブガイドにより、スピーカーを設置したデスクトップやラックの天面に音が反射して生まれる音の乱れが回避される。特定のスイートスポットに縛られることなく、HomePod miniを置いた部屋のどこへ移動しても心地よいリスニング感が得られることに、筆者も驚いた。
HomePod miniのサウンドを一歩踏み込んでじっくりと聴いてみよう。
筆者はApple Musicのユーザーなので、再生したい楽曲のアーティストとタイトルをHomePod miniに話しかけると、目当てのタイトルをすばやく見つけて再生を始めてくれた。音声操作に対するSiriの反応はとても速い。なお、初代HomePodもソフトウェアバージョン14.2へのアップデートにより、Siriのレスポンスが向上している。
まずはHomePod miniを単体で鳴らしてみる。驚くほどに歪みがなく、クリアなサウンドだ。ボーカルや楽器の音像がとても近く鮮明に感じられる。音の輪郭ににじみやブレがない。
フラットバランスなサウンドは少しモニターライクで優等生的でもあるが、ソースに対して忠実で、とても真面目にサウンドが練り上げられていると感じる。例えば上原ひろみのピアノトリオによる演奏は、鍵盤を鋭く叩く音の立ち上がりのインパクトがとても立体的で生々しく、ドラムスのリズムから活き活きとした躍動感が伝わってくる。
そして特筆すべきは、HomePodとのサイズ差を感じさせないほど豊かな低音再生だ。音の芯がしなやかで筋肉質に引き締まった低音は、音量を上げても歪まず、軸がぶれない。上原ひろみのピアノトリオによる演奏は、エレキベースのスピーディーで緊張感あふれる低音が熱いグルーヴをつむぎだす。筆者の好きなジャズやロック、EDMのアップテンポな楽曲と見事にマッチするスピーカーだ。
■2台をステレオペアにして再生環境をスケールアップ
続いて、2台のHomePod miniによるステレオ再生をチェックした。初期セットアップの際、2台目のスピーカーを最初に設定したスピーカーと同じ部屋に割り当てようとすると、iPhoneの画面に、ステレオペアとしてこれらを設定するか確認が表示される。ふだんは各々を別の部屋に設置して、ステレオ再生を楽しみたい時に、あとから「ホーム」アプリでペアリングすることも可能だ。もちろんその解除も簡単に行える。
ステレオ再生の場合も、HomePod miniの持ち味であるクリアで鋭く力強いサウンドの醍醐味はそのまま伝わってくる。2台のスピーカーによって、例えばクラシックのオーケストラやジャズのビッグバンドによるスケールの大きな演奏の音場感が、より縦横や奥行き方向へといっぱいに広がった。この2台の小さなスピーカーが、わが家をコンサートホールに変えてくれるとは驚いた。
ボーカルやピアノの余韻はとても爽やかで、階調感もきめ細かく滑らかに再現する。音楽と静寂とのコントラスト感を明瞭に描き分けられるスピーカーなので、ぜひ静かな部屋で、ふだん聴き慣れた音楽をもう一度HomePod miniで聴いてみて欲しい。何度も聴き込んだはずのボーカリストの声の微細なニュアンスが伝わってきたり、J-POPの丁寧なアレンジの妙技を発見できたり、スピーカーによる音楽再生の醍醐味が実感できるはずだ。