HOME > レビュー > ヴァイオリニスト ビルマン聡平さんと聴く! ドルビーアトモスとハイレゾによる新日本フィルの高音質配信をレポート

2/8までアーカイブ配信中

ヴァイオリニスト ビルマン聡平さんと聴く! ドルビーアトモスとハイレゾによる新日本フィルの高音質配信をレポート

公開日 2021/02/02 14:45 山之内 正
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

■ハイレゾの配信、どうすれば視聴できる?

清水和音氏が独奏をつとめたピアノ協奏曲まで聴き終えたところで、TV以外の再生機器をすべて入れ替え、Thumvaのハイレゾ配信を聴いてみることにした。こちらのプラットフォームはコルグが開発した動画配信システム「Live Extreme」を利用しているため、パソコンのウェブブラウザから配信サイトにアクセスし、音声はUSB-DACを介して再生する。Macの場合、Safariは非対応だが、Google Chromeなら問題なく再生できる。

ハイレゾに対応するUSB-DACは、数万円から100万円オーバーの製品まで、幅広い価格で登場している。96kHz/24bitのハイレゾ再生はほとんどのモデルが対応しているが、対応スペックを確認の上購入したい

音声は96kHz/24bitまたは48kHz/24bitのいずれかを最初に選択できるが、今回は通信速度に十分な余裕があるので96kHzを選んだ。録音自体は352.8kHz/24bitのDXDなので、配信時はダウンコンバートを行っていることになるが、それでも圧縮音声を用いた一般的な映像ストリーミングに比べると情報量には圧倒的な余裕がある。

Live Extremeは開発者の大石氏が「オーディオファースト」と太鼓判を押すほど音質に重心を置いたシステムなので、今回の配信もまずは音質に期待が募る。ちなみに映像はU-NEXTと同様にフルHDだが、55型のOLEDテレビで見る限りはあまり不満はない。

エソテリックのK-01XsのDACからアキュフェーズのC-2850とPX-650に信号を出力し、テレビの脇に置いたKEFのLS50を鳴らした。ステレオ再生なのでU-NEXTの再生音に比べると広がりは限定されるものの、本格オーディオ機器の組み合わせで聴くハイレゾ音源はさすがに圧巻のクオリティ感があり、演奏の真価がダイレクトに伝わる。

KEFの「LS50」はペア10万円強という価格だが、同軸の2ウェイUniQドライバーの力もあり、非常に優れた音場表現を聴かせてくれる

普段はヘッドホンやイヤホンで音楽を聴くことが多いというビルマン氏は「低音が安定していて、オーケストラらしいバランスが素晴らしいですね。サウンドバーの再生音も広がりが豊かでテレビの音とはまるで違うなと思いましたが、アンプとスピーカーをつなぐとさすがに力強く、スケールの大きな音がしますね。映像を見ながら聴いていると、呼吸や表情などで奏者同士が互いに周囲の音を聴きながらアンサンブルを作っていることがよく分かります」と感想を語ってくれた。

ベルリン・フィルのデジタル・コンサート・ホールもそうだが、オーケストラの映像配信の大半はロスレスではなく圧縮音源を映像と組み合わせている。再生環境や通信速度を視野に入れて映像と音声のデータを配分するなど、システム上の制約が背景にあるのだろうが、映像が4Kにグレードアップしつつあるのに音は圧縮音声のままというのは、やはりバランスが良くない。

Thumvaのオンデマンド配信はフルHD映像とハイレゾ音声の組み合わせで、従来とは逆に音質の良さが際立ち、演奏に集中しやすいと感じた。映像にあえて注文をつけるなら、カメラが切り替わったときの画質の差が気になるのだが、それを最小限に抑えることができれば、映像と音の両方にバランス良く集中できるようになるはずだ。

とはいえ、もし映像と音のどちらが大事かと問われれば、私なら音を優先して欲しいと答えるだろう。コンサートをライヴ映像つきで鑑賞できるメリットは大きいが、音質になんらかの不満がある状態では演奏の真価が伝わりにくく、楽しみが半減してしまうからだ。

2つの配信メディアを駆使した今回の試みは、音質に重点を置いたコンサートのオンデマンド配信という点に重要な意味がある。どちらも見逃し配信で2月8日まで見られるので、オーケストラとしては世界初の試みをぜひ体験していただきたい。

前へ 1 2 3

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE