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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第259回】

ギターアンプなのにヘッドホン?VOX「VGHシリーズ」の音楽再生力をチェック!

公開日 2021/02/27 06:40 高橋 敦
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ROCKは、様々なスタックアンプのニュアンスを含んではいるがまとめて「おおまかにはMarshall系サウンド」と言ってよいだろう。ヘッドホンアンプ側のGAIN5から7あたりでビンテージ志向プレキシ系ペダルの全開程度に歪み、そこでギターのボリュームを3あたりまで絞るとほぼクリーントーン。GAIN7から10はホットロッドマーシャル的な領域まで歪み、ストラトとの組み合わせでも十分にメタれる。

また空間系エフェクトも搭載。ダイヤルを回すと「コーラス弱め<強め→ディレイ弱め<強め→リバーブ弱め<強め」というように切り替わっていく。

ダイヤルの目盛り3 - 4ごとにビープ音が鳴り、エフェクトの種類が切り替わる。例えば6あたりなら強めのディレイ

ベースアンプ「VGH-BASS」は……すいません!うちにある唯一のベースがちょうどこのタイミングでバラして調整中だったので試せませんでした!

ナロウレンジだがバンドサウンドにはフィット!

いよいよオーディオ的な音楽再生音質のチェック。ヘッドホンの電源をオフにしてケーブルを再生機器に繋げば良い。

6.35mmプラグなのでDAP等への接続では3.5mmへの変換ケーブル等が必要。今回は6.35mmジャック搭載のiFi audio「ZEN DAC」との組み合わせ

まず全モデル総じて正直に言うと、音楽再生用としてはナロウレンジで、サブベース的な超低域、空気感等の再現に重要な超高域の再生能力は物足りない。クラブサウンドのベースやバスドラム、アコースティックジャズの気配のリアリティといったところの再現性はイマイチだ。

しかしそのサブベース帯域やら超高域やらは、特にギターアンプとしては、ほぼほぼ不要な帯域だったりする。ギターアンプに搭載のスピーカーユニットの再生周波数特性ってだいたい100Hz - 6kHzとかそれくらいの範囲で、「エレクトリックギターの音」というのは大体そういう帯域で成り立っているものなのだ。

このヘッドホンの主体はギターアンプとしての役割であるから、その範囲からはみ出すような低い、または高い帯域までの再生能力は不要、下手したら邪魔にさえなるのかもしれない。ならば本筋であるギターアンプとしての音を優先した設計になっていてもおかしくはない。

そんなわけで、VGHシリーズの音は音楽再生用としてはナロウレンジ気味なわけだが、前述のクラブサウンドやアコースティクサウンドではなく、エレクトリックギター/ベースが活躍するバンドサウンドであればもちろん、そのサウンドの中核帯域とこちらのヘッドホンの守備範囲が合致!

特に、プレベ的なローミッドの太さやドライブの雰囲気、ギターが歪み切る手前の粗いエッジなど、中域寄りの低音、中域寄りの高音あたりの感触の「それっぽさ」が秀逸だ。バンドサウンドの美味しさところを楽しませてくれる。

総合的には同価格帯のオーディオ用ヘッドホンに及ぶサウンドではないが、ギターアンプとしては文句なし、リスニング用としてもハマれば強い!という一点勝負の魅力がある。

モデルごとの音楽再生時の音の違いは……ほぼない!?

さて、「音楽再生時の音質は全モデル同じ! ……かどうかは以降で確認してみることにしよう」の部分、実際にはどうだったのか?

聴き比べてみての答えは「ほぼ同じ」だ。「ほぼ同じ」とはどういうことかというと、「AC30はミドルレンジが濃いめ、Rockの方はミドルが抜けて鳴りっぷりがオープンな感じに聴こえるけどその差は僅かで、モデルごとの違いではなくサンプルの個体差だと言われても疑問は覚えない」みたいな感じ。

仮にその違いがモデルごとのものであったとしても、それはモデル選択の理由になるほど大きな違いではない。普通にこの製品本来の姿であるギターアンプとしての音の好み、ギター用かベース用かの違いで選べばよいというわけだ。

ちなみにオーディオにつないでヘッドホンの電源をオンにすれば、もちろんながら、音楽再生を歪ませたり、さらにディレイとかをかけたりもできる。サイケでトリッピーな音楽体験をしてみたくなったら試してみるのもありかもしれない。

ギター/ベースアンプが本筋だが「+α」も十分魅力

当然の結論ではあるが、こちらのヘッドホンは「ギター/ベース用のヘッドホン型アンプ」が本筋の用途であり、その用途でこそ最高の力を発揮する。ギター側のボリューム操作やピッキングへのレスポンスの良さは見事なものだ。

対して音楽再生については、過剰な期待はせず、音楽再生「にも使える」というおまけ的な要素と考えておくのがよいだろう。しかし言い方を変えれば、過剰ではなく「適切な期待には十分に応えてくれる」だけの実力は備えているということだ。

ギタリストやベーシストが「音楽も聴ける、ヘッドホン型ギター/ベースアンプ」として購入したなら、その期待には十分どころか十二分に応えまくってくれることだろう。

高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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