<連載>角田郁雄のオーディオSUPREME
メディアサーバーの革命児aurender。デジタルノイズ対策の徹底がハイエンドDACの旨味をさらに引き出す
■ハイレゾの黎明期からファイル再生を牽引するaurender
今回は、aurender(オーレンダー)のミュージックサーバー(メディアサーバー)を紹介します。このブランドは、ハイレゾ再生の黎明期である2010年に創業、2013年に発売された「W20」というミュージックサーバー/トランスポートで世界的な評価を獲得しました。
その開発理由は、「多くのオーディオ愛好家は、すでに高品位なDACを所有しており、それをネットワーク再生で活用するためにはどうすれば良いのか」と考えたからだといいます。
しかも、当時ネットワーク設定が大変だったパソコン用NASを使用するネットワークプレーヤーではなく、構造的には既存のCDトランスポートとDAコンバータによるセパレートディスク再生システムの、CDトランスポートをサーバーと置き換えることで、ネットワーク対応を実現するべく開発されたものとなります。つまり、サーバーとDACとデジタル接続することで、お手持ちのシステムを活かしながら高品位なネットワークファイル再生を実現させていることが特徴でした。
その後、このW20は進化を遂げ、2021年には新製品としてフラグシップ・モデル「W20 Special Edition」が登場しました。私はこの製品に興味津々で、今回嬉しいことに自宅で試用することができましたので紹介します。
まずその大きな特徴は、SSDストレージを内蔵するトランスポートであることです。一見、オーディオ専用NASのように思えますが、一般的なDLNA/UPnPネットワーク方式ではなく、独自の方式を採用し、iPadの再生アプリ「aurender conductor」(iPhone/Androidにも対応)で再生します。モバイル機器で操作するため、無線LANには接続しますが、お手持ちのネットワークプレーヤーとのDLNA/UPnPによるネットワーク再生はできません。
ハイレゾデータは、本機のUSB、同軸(BNC、RCA)、AES/EBU(2系統:デュアル・AES接続可能)のデジタル出力端子から出力され、DACに伝送し再生する方式になっています。また、TIDAL/Qobuzなどのストリーミング再生も可能で、MQAのコアデコード再生はオプションになっています。筐体は仕上がりの良いアルミ製で、両サイドパネルが放熱器になっています。
■3式のバッテリーを搭載、クリーンな電源を供給する
驚くのは、精密感に溢れた内部回路です。徹底したノイズ防止と極限までのジッター低減が特徴と言えます。ストレージですが、音源保存用の4TBのSSDと再生キャッシュ用の1TB SSDが搭載されています。このSSDから伝送されたデジタルデータは、基板のデジタル処理部に接続されます。ここでは、主にFPGAが処理のコアとなり、前述のデジタル出力を制御したり、DSDのPCM化なども行います。
同時にクロック制御も行われ、基板上には、安定度、温度特性、位相ノイズ特性に優れたOCXO(恒温槽制御水晶発振器)を採用したデジタル制御のフェーズロックループ(PLL)システムを使用。SSDから伝送されたデジタル信号は、このクロック回路で生成された位相ノイズの少ない高精度なクロックに同期し、ジッターを徹底低減させたクリーンなデジタルデータとしてDACに伝送されます。
さらには、高品位な10MHzマスタークロック・ジェネレーターとの同期、また44.1/48kHz系のワードクロック入力も可能になっています。外来ノイズにも気を使い、LANポートには2重絶縁(アイソレート)を施し、ノイズの混入を防止しています。
もっと驚愕することは、電源部です。電源ノイズを低減しクリーンな電源供給をするために、3式のバッテリー(LiFePO4)を使用し回路を動作させています。システムへの電力供給と、充電を連続的に行う仕組みになっています。
また、突然の停電や電源ケーブルが抜けるなどにより電源供給が停止した場合には、本体を保護するUPS(非常用)電源が動作します。電源保持時間は非公開ですが、aurenderを正常に終了させるのに十分な時間を確保しているとのことで、いきなり電源が切れるのはストレージにとっては良いことではなく、場合によってはSSDや収容ファイルが壊れることもあります。万一の事態でも大切なライブラリが保護できることは、とても良いことですね。なお、フロントの裏には、超低ノイズのリニア電源を搭載していますが、これがバッテリーを充電します。
再生アプリ「aurender conductor」にも触れておきましょう。楽曲の再生は、アルバム、アーティスト、ジャンルごとなど簡単に選曲でき、操作もスムーズに行えます。歯車マークの設定を選ぶと、USBメモリや外部NASからの音源の取り込みやストリーミング再生設定などが行えるほか、音源ファイル編集も行えます。また、DSDのPCM変換、dCSのDACなどに対応するAES/EBU出力のデュアル・ワイヤーモードの設定も行えます。これは、dCSの現行製品を愛用する方にとって嬉しいことですね。
そのほかに、外部クロックの接続やディスプレイなど再生時に無関係な回路をスリープさせ、さらに高音質化するクリティカルリスニングモードなどが設定できます。
今回は、aurender(オーレンダー)のミュージックサーバー(メディアサーバー)を紹介します。このブランドは、ハイレゾ再生の黎明期である2010年に創業、2013年に発売された「W20」というミュージックサーバー/トランスポートで世界的な評価を獲得しました。
その開発理由は、「多くのオーディオ愛好家は、すでに高品位なDACを所有しており、それをネットワーク再生で活用するためにはどうすれば良いのか」と考えたからだといいます。
しかも、当時ネットワーク設定が大変だったパソコン用NASを使用するネットワークプレーヤーではなく、構造的には既存のCDトランスポートとDAコンバータによるセパレートディスク再生システムの、CDトランスポートをサーバーと置き換えることで、ネットワーク対応を実現するべく開発されたものとなります。つまり、サーバーとDACとデジタル接続することで、お手持ちのシステムを活かしながら高品位なネットワークファイル再生を実現させていることが特徴でした。
その後、このW20は進化を遂げ、2021年には新製品としてフラグシップ・モデル「W20 Special Edition」が登場しました。私はこの製品に興味津々で、今回嬉しいことに自宅で試用することができましたので紹介します。
まずその大きな特徴は、SSDストレージを内蔵するトランスポートであることです。一見、オーディオ専用NASのように思えますが、一般的なDLNA/UPnPネットワーク方式ではなく、独自の方式を採用し、iPadの再生アプリ「aurender conductor」(iPhone/Androidにも対応)で再生します。モバイル機器で操作するため、無線LANには接続しますが、お手持ちのネットワークプレーヤーとのDLNA/UPnPによるネットワーク再生はできません。
ハイレゾデータは、本機のUSB、同軸(BNC、RCA)、AES/EBU(2系統:デュアル・AES接続可能)のデジタル出力端子から出力され、DACに伝送し再生する方式になっています。また、TIDAL/Qobuzなどのストリーミング再生も可能で、MQAのコアデコード再生はオプションになっています。筐体は仕上がりの良いアルミ製で、両サイドパネルが放熱器になっています。
■3式のバッテリーを搭載、クリーンな電源を供給する
驚くのは、精密感に溢れた内部回路です。徹底したノイズ防止と極限までのジッター低減が特徴と言えます。ストレージですが、音源保存用の4TBのSSDと再生キャッシュ用の1TB SSDが搭載されています。このSSDから伝送されたデジタルデータは、基板のデジタル処理部に接続されます。ここでは、主にFPGAが処理のコアとなり、前述のデジタル出力を制御したり、DSDのPCM化なども行います。
同時にクロック制御も行われ、基板上には、安定度、温度特性、位相ノイズ特性に優れたOCXO(恒温槽制御水晶発振器)を採用したデジタル制御のフェーズロックループ(PLL)システムを使用。SSDから伝送されたデジタル信号は、このクロック回路で生成された位相ノイズの少ない高精度なクロックに同期し、ジッターを徹底低減させたクリーンなデジタルデータとしてDACに伝送されます。
さらには、高品位な10MHzマスタークロック・ジェネレーターとの同期、また44.1/48kHz系のワードクロック入力も可能になっています。外来ノイズにも気を使い、LANポートには2重絶縁(アイソレート)を施し、ノイズの混入を防止しています。
もっと驚愕することは、電源部です。電源ノイズを低減しクリーンな電源供給をするために、3式のバッテリー(LiFePO4)を使用し回路を動作させています。システムへの電力供給と、充電を連続的に行う仕組みになっています。
また、突然の停電や電源ケーブルが抜けるなどにより電源供給が停止した場合には、本体を保護するUPS(非常用)電源が動作します。電源保持時間は非公開ですが、aurenderを正常に終了させるのに十分な時間を確保しているとのことで、いきなり電源が切れるのはストレージにとっては良いことではなく、場合によってはSSDや収容ファイルが壊れることもあります。万一の事態でも大切なライブラリが保護できることは、とても良いことですね。なお、フロントの裏には、超低ノイズのリニア電源を搭載していますが、これがバッテリーを充電します。
再生アプリ「aurender conductor」にも触れておきましょう。楽曲の再生は、アルバム、アーティスト、ジャンルごとなど簡単に選曲でき、操作もスムーズに行えます。歯車マークの設定を選ぶと、USBメモリや外部NASからの音源の取り込みやストリーミング再生設定などが行えるほか、音源ファイル編集も行えます。また、DSDのPCM変換、dCSのDACなどに対応するAES/EBU出力のデュアル・ワイヤーモードの設定も行えます。これは、dCSの現行製品を愛用する方にとって嬉しいことですね。
そのほかに、外部クロックの接続やディスプレイなど再生時に無関係な回路をスリープさせ、さらに高音質化するクリティカルリスニングモードなどが設定できます。
次ページdCSの「Vivaldi DAC」と組み合わせてハイレゾ再生をテスト