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【特別企画】自然で伸びやか、音溝の情報を忠実に引き出す

“ラックスマンサウンド”の理念を継承。構造も形状も徹底検討して生まれた新世代カートリッジ「LMC-5」

公開日 2021/06/29 06:30 生形三郎
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■フラットな再現力を基本に、しっかりと伸びた高域方向の表現が印象的

早速、同社のアナログプレーヤーと組み合わせて試聴したレポートをお届けしたい。フォノイコライザーアンプには同社「E-250」を用い、「PD-151」はセットのトーンアームを、PD-171ALには「SME-3009 SeriesII」を用いて再生した。

今回の試聴システム。プレーヤーは「PD-171AL」と「PD-151」の双方で聴き比べ。プリアンプには「C-900u」、パワーアンプは「M-900u」の組み合わせ

はじめに、PD-151へ取り付けて再生したが、音を出した瞬間、鮮烈かつナチュラルなレスポンスに驚かされる。まず耳を奪われたのは、鮮やかなリアリティで描き出されるドラムスの立ち上がりと余韻の収束だ。

スピーカーにはFOCALの「SCALA UTOPIA EVO」を使用

試聴ソースとして、筆者自身も録音とカッティングの現場に立ち会った、ダイレクトカッティングによる八木隆幸トリオ『Congo Blue』を再生したが、再生するスピーカーの違い等はあれど、キング関口台スタジオのモニター環境で聴いていた音の描かれ方に実に近かった。一般的なカートリッジであれば、音が柔らかくなったり、フワリと膨らみをまとった姿で立ち現れることが多いが、不要な余韻が残らずに、楽器の音像が鮮明な姿で描画されるのだ。

八木隆幸トリオ「CONGO BLUE」

PD-151がもつS/N感の良さと相まって、実に瞭然とした音の出方である。バスドラム、スネア、タムタム、シンバルと、それぞれのパーツがしっかりと分離し、なおかつ背景とクッキリとしたコントラストをもって立ち現れる。また、ピアノとウッドベース、それぞれにあてがわれたマイクロフォンが捉える楽器の姿も、濁らず明瞭に描き出される様が実に快い。フレージングの一つ一つがつぶさに描き出されることによって、ダイレクトカッティングという一発録音に対する演奏者の緊張や、それを乗り越えようとする気概が、演奏からまざまざと伝わってくるのである。

天井高のあるメインルームのピアノをはじめ、ブースに入って演奏しているドラムスやベースがまとっているルームアンビエンスもが、手に取るように分かることに驚かざるを得ない。曖昧になりがちなこれらの表現が、LMC-5では実に端正に描かれるのだ。加えて、ウッドベースも音程が明瞭で、曖昧さのない、タイトな低域表現が素晴らしい。

音色としては、フラットな再現力を持ち、とりわけ、しっかりと伸びた高域方向の表現が印象的だ。これは、録音時にスタジオで聴いたモニター再生音のバランスに近似していることからも、すぐさま理解できる。また、音楽ソースの空間性やエアー感にとって高域成分は重要な要素となるが、それらがきちんと再現されることからも実感する。

例えば、チェックソースとしてもお馴染みのOscar's Motet Choir『Cantate Domino』を再生すると、ソリストやコーラスの声が教会空間に響き渡る様子がクリアに照らし出される。そして、やはりオルガンの低域もにじみがなく、曖昧にならない。もちろんこれは、フォノイコライザーアンプやスピーカーアンプ類の素直な音響特性があってこそ実現しているものだろう。

Oscar's Motet Choir「Cantate Domino」

■PD-171ALではより3次元的な表現に。プレーヤーの違いも正確に描き分ける

続いて、SME-3009 SeriesIIが取り付けられたPD-171ALでも再生してみると、プレーヤーやアームによる再生音の違いが手に取るように分かった。描かれるサウンドの重心が一段下がるとともに、サウンドステージは上下、奥行き方向へと視界が広がった。特に、カンターテ・ドミノではそれらの変化が分かりやすく、ソプラノの歌声の距離感や、オルガンから放出される音の拡がりや、コーラスの重層的な立体感などが、より3次元的な音の立ち現れ方となった。

最後に、King Crimson『Red』から終曲「Starless」を再生したが、リアルに湧き上がる強烈な音楽再生に引き込まれ、興奮のうちに13分の大曲を聴ききってしまった。LMC-5は、脚色がないのでオールジャンルのソースに対応できるが、個人的にはロック・ミュージックに極めて相性が良いのでは、と思った瞬間だった。

これらを耳にすると、先述の「レコード再生的なキャラクターの排除」を目指した長妻氏の設計思想に大きく合点がいくのである。これは、現代のラックスマンが具現しているサウンドとピタリと一致する。プレーヤーにしろアンプにしろ、同社の製品は、音楽ソースに忠実な表現を重んじながら、そこへ、オーディオ再生ならではのエネルギー感の発露や音の密度といった充足感を備えることが特徴だと筆者は認識しているが、まさにこのLMC-5でもそれが貫徹されている。このカートリッジが如何に入念な吟味の基に作られたのかを感じさせてくれるのだ。

以上のように、LMC-5は、同社が目指す「自然で伸びやかなラックスマンサウンド」を見事に実現したカートリッジだと実感した。そこから繰り出されるサウンドは、忠実度の高いアナログ再生を楽しませてくれるもので、まさにこれは、ラックスマンならではのものだ。誇張や脚色のない「余韻が綺麗に伸びる素直な音」は、音楽ファンやアナログファン必聴のサウンドである。

これで同社は、レコード再生の「音の入り口から出口」まで、完全に自社製品が揃ったことになり、より一層精度の高いアナログ再生機器開発が可能となったといえる。今後の製品展開が、今から益々楽しみである。

(提供:ラックスマン)

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