【特別企画】過去の大らかな印象から一新
Polk Audio“侮るなかれ”、「Reserveシリーズ」はハイファイスピーカーの強力な選択肢だ
ある日、編集部にオーディオ評論家の小原由夫氏からメールが届く。その内容は日本に新たに導入された米国Polk Audio(ポークオーディオ)のスピーカーのことであった。「このスピーカーは侮れないですよ」と。1972年の誕生以来アメリカン・ハイファイ・サウンドを追求し続けている老舗ブランド。日本のオーディオファンにはまだ認知度が低いかもしれないが、スピーカー作りへの長い歴史と情熱、独自の開発アプローチは確かに注目に値する。価格設定も魅力的である。ここでは同社の最新シリーズである「Reserveシリーズ」とともに小原由夫氏が同ブランドの魅力を熱くレポートする。
●リーズナブルな価格で良質なスピーカーを追求、ポークオーディオの最新モデル
懐かしい名前が日本市場に帰ってきた。90年代半ばにホームシアターを積極的に楽しんでいた人には馴染みのあるブランド、ポークオーディオである。この度同社がサウンドユナイテッド・グループの傘下となり、日本では昨年からD&Mがディストリビューションを行なっている。既にTV用サウンドバー2機種がリリースされているが、いよいよ本格的なコンポーネントスピーカー「リザーブ」シリーズが登場だ。
1972年に米メリーランド州ボルチモアにて設立されたポークオーディオは、約半世紀に渡って良質なスピーカーをリーズナブルな価格で提供する優良なオーディオメーカーとして、世界市場で支持され続けてきた。ここしばらくは日本で声を聞かなかったが、新たなテクノロジーと斬新なフィロソフィーを引っ提げて再び日本市場で勝負しようというわけだ。
●中音域の放射特性に着目、タービンコーンが特徴的
リザーブ・シリーズは、センター専用の横置きスピーカーやハイト・モジュール型などを含めた全9機種で構成される。今回はブックシェルフとフロア型5機種の中から3機種をチョイス、試聴した。共通したセールスポイントを含めて仕様の詳細を見ていこう。
最も目を引くのがミッド、あるいはミッド/ウーファーとして採用されているユニットの振動板形状だ。コーン型に見えるが、摺り鉢状ではなく膨らんでいて、しかもフィンのような突起が数カ所設けられている。これは独自に開発された“タービンコーン”と呼ばれるもので、元々はフラグシップ機のレジェンド・シリーズのためにデザインされたもの。インジェクション成形による独自のフォームコアと、その突起部が渦を巻いたタービン状になっているのがポイントで、適度な剛性と内部損失を備えながら、人間の耳に敏感な中音域の放射特性に着目した設計とのこと。さらに最も大型の「R700」には、専用設計の8インチ径アルミニウム/ポリプロピレンコーン型ウーファーが2基マウントされている。
トゥイーターも数十年に渡る研究成果によって開発されたオリジナルの1インチ・ピクナルリング・ラジエーター型。高域エネルギーの拡散性を改善するために精密に調整されたウェーブガイドを備え、リアチャンバーが厳重にダンプされていることが特徴。色付けや歪みを排したクリアな高域再生を実現している。
より深く強い低域再生を生む、特許取得のバスレスポート
バスレフポートには特許技術であるX-Portを採用。これは、精密に調整された1組のクローズドパイプ・アブソーバーを形成している。
さらにフロア型の「R600」と「R700」については、こちらも特許取得済みのPower Port2.0を採用。前述のX-Portの技術を活用しつつ、空気の流れをよりスムーズにし、一般的なバスレフポートに比べてより深い低域エネルギーを高い出力レベルで再現することを可能とした。なお、「R600」「R700」は、このポートチューブと一体成型となった4点支持のアルミベースを底面に搭載している。
すべてのリザーブ・シリーズには、マグネット固定式のスピーカーグリルが付属。キャビネットの仕上げに応じてグリル色が異なり、ブラウンとブラックの仕上げにはダークグレーのグリル、ホワイト仕上げにはライトグレーのグリルが添付される。
●ブックシェルフ型「R100」:響きを効果的に活用、分解能や質感は格別
今回試聴したのは、ブックシェルフ型「R100」と、フロアスタンディング型「R500」と「R700」の3機種。「R200」や」「R600」は、タービンコーンのウーファー口径等が異なる以外はほぼ共通仕様だ。
ブックシェルフ型の「R100」はTAOC製の4本柱のスタンドに設置して試聴。女性ヴォーカル音像の実体感がグラマラスなのは、エンクロージャーの響きを効果的に活用している証と見た。分解能の高さは、偏にドライバーユニットの実力と見ることもでき、ジャズのアンサンブルの各楽器の質感やメロディー/リズムラインが細やかに聴き取ることができる。クラシックは独奏ヴァイオリンの音像をくっきりと描写しながら、バックのオーケストラのハーモニーがとてもリッチに感じられた。2ウェイのユニットのつながりがすこぶる良好な印象だ。
●フロア型「R500」:どっしりとした豊かな低域、鋭くて速く、滑らかな音色
フロア型の「R500」は、背面にX-PORT式バスレフポートを備えたモデルで、さすがにブックシェルフ型では厳しかったどっしりとした豊かな低域を味わわせてくれる。ダブルウーファーならではという印象だが、カットオフ周波数を変えたスタガー動作でドライブされており、レスポンスも鋭くて速い。スリムなトールボーイ型なので、エンクロージャーの回折現象もうまくコントロールされているのだろう、クイックな中低域が繰り出されてくる。
女性ヴォーカルにはそこはかとない色艶があり、厚みのある音像フォルムだ。クラシックは独奏ヴァイオリンをくっきりと浮かび上がらせ、しなやか、かつ滑らかな音色に感じる。日本の住宅事情を勘案した時、このサイズのトールボーイ型は大いに魅力的だ。
●フロア型の最上位「R700」:ローエンドの厚みが別格、バスレフポートの効果は絶大
最上位機の「R700」は余裕綽々の鳴りっぷりで、ローエンドの厚みの充実がいい。ジャズのアンサンブルが重厚に響き、リズムセクションの安定感が実感できた。オリジナルのバスレフポートが効果絶大だ。ハーモニーの色彩感も素晴らしく、ドライバーユニットの音色が統一されている印象を持った。最も印象的だったのがクラシックで、立体的な奥行き感とスケール再現、独奏ヴァイオリンの精緻な描写は、とても満足度が高い。
かつての印象はどちらかというと大らかで、重箱の隅を突くような聴き方には向かなかったポークオーディオだったが、最新のそれは、ハイファイスピーカーとして今日要求される諸条件をきっちり満足していることがわかった。今後の展開が楽しみな再上陸だ。
本記事は季刊オーディオアクセサリー vol.182 AUTUMNからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから
●リーズナブルな価格で良質なスピーカーを追求、ポークオーディオの最新モデル
懐かしい名前が日本市場に帰ってきた。90年代半ばにホームシアターを積極的に楽しんでいた人には馴染みのあるブランド、ポークオーディオである。この度同社がサウンドユナイテッド・グループの傘下となり、日本では昨年からD&Mがディストリビューションを行なっている。既にTV用サウンドバー2機種がリリースされているが、いよいよ本格的なコンポーネントスピーカー「リザーブ」シリーズが登場だ。
1972年に米メリーランド州ボルチモアにて設立されたポークオーディオは、約半世紀に渡って良質なスピーカーをリーズナブルな価格で提供する優良なオーディオメーカーとして、世界市場で支持され続けてきた。ここしばらくは日本で声を聞かなかったが、新たなテクノロジーと斬新なフィロソフィーを引っ提げて再び日本市場で勝負しようというわけだ。
●中音域の放射特性に着目、タービンコーンが特徴的
リザーブ・シリーズは、センター専用の横置きスピーカーやハイト・モジュール型などを含めた全9機種で構成される。今回はブックシェルフとフロア型5機種の中から3機種をチョイス、試聴した。共通したセールスポイントを含めて仕様の詳細を見ていこう。
最も目を引くのがミッド、あるいはミッド/ウーファーとして採用されているユニットの振動板形状だ。コーン型に見えるが、摺り鉢状ではなく膨らんでいて、しかもフィンのような突起が数カ所設けられている。これは独自に開発された“タービンコーン”と呼ばれるもので、元々はフラグシップ機のレジェンド・シリーズのためにデザインされたもの。インジェクション成形による独自のフォームコアと、その突起部が渦を巻いたタービン状になっているのがポイントで、適度な剛性と内部損失を備えながら、人間の耳に敏感な中音域の放射特性に着目した設計とのこと。さらに最も大型の「R700」には、専用設計の8インチ径アルミニウム/ポリプロピレンコーン型ウーファーが2基マウントされている。
トゥイーターも数十年に渡る研究成果によって開発されたオリジナルの1インチ・ピクナルリング・ラジエーター型。高域エネルギーの拡散性を改善するために精密に調整されたウェーブガイドを備え、リアチャンバーが厳重にダンプされていることが特徴。色付けや歪みを排したクリアな高域再生を実現している。
より深く強い低域再生を生む、特許取得のバスレスポート
バスレフポートには特許技術であるX-Portを採用。これは、精密に調整された1組のクローズドパイプ・アブソーバーを形成している。
さらにフロア型の「R600」と「R700」については、こちらも特許取得済みのPower Port2.0を採用。前述のX-Portの技術を活用しつつ、空気の流れをよりスムーズにし、一般的なバスレフポートに比べてより深い低域エネルギーを高い出力レベルで再現することを可能とした。なお、「R600」「R700」は、このポートチューブと一体成型となった4点支持のアルミベースを底面に搭載している。
すべてのリザーブ・シリーズには、マグネット固定式のスピーカーグリルが付属。キャビネットの仕上げに応じてグリル色が異なり、ブラウンとブラックの仕上げにはダークグレーのグリル、ホワイト仕上げにはライトグレーのグリルが添付される。
●ブックシェルフ型「R100」:響きを効果的に活用、分解能や質感は格別
今回試聴したのは、ブックシェルフ型「R100」と、フロアスタンディング型「R500」と「R700」の3機種。「R200」や」「R600」は、タービンコーンのウーファー口径等が異なる以外はほぼ共通仕様だ。
ブックシェルフ型の「R100」はTAOC製の4本柱のスタンドに設置して試聴。女性ヴォーカル音像の実体感がグラマラスなのは、エンクロージャーの響きを効果的に活用している証と見た。分解能の高さは、偏にドライバーユニットの実力と見ることもでき、ジャズのアンサンブルの各楽器の質感やメロディー/リズムラインが細やかに聴き取ることができる。クラシックは独奏ヴァイオリンの音像をくっきりと描写しながら、バックのオーケストラのハーモニーがとてもリッチに感じられた。2ウェイのユニットのつながりがすこぶる良好な印象だ。
●フロア型「R500」:どっしりとした豊かな低域、鋭くて速く、滑らかな音色
フロア型の「R500」は、背面にX-PORT式バスレフポートを備えたモデルで、さすがにブックシェルフ型では厳しかったどっしりとした豊かな低域を味わわせてくれる。ダブルウーファーならではという印象だが、カットオフ周波数を変えたスタガー動作でドライブされており、レスポンスも鋭くて速い。スリムなトールボーイ型なので、エンクロージャーの回折現象もうまくコントロールされているのだろう、クイックな中低域が繰り出されてくる。
女性ヴォーカルにはそこはかとない色艶があり、厚みのある音像フォルムだ。クラシックは独奏ヴァイオリンをくっきりと浮かび上がらせ、しなやか、かつ滑らかな音色に感じる。日本の住宅事情を勘案した時、このサイズのトールボーイ型は大いに魅力的だ。
●フロア型の最上位「R700」:ローエンドの厚みが別格、バスレフポートの効果は絶大
最上位機の「R700」は余裕綽々の鳴りっぷりで、ローエンドの厚みの充実がいい。ジャズのアンサンブルが重厚に響き、リズムセクションの安定感が実感できた。オリジナルのバスレフポートが効果絶大だ。ハーモニーの色彩感も素晴らしく、ドライバーユニットの音色が統一されている印象を持った。最も印象的だったのがクラシックで、立体的な奥行き感とスケール再現、独奏ヴァイオリンの精緻な描写は、とても満足度が高い。
かつての印象はどちらかというと大らかで、重箱の隅を突くような聴き方には向かなかったポークオーディオだったが、最新のそれは、ハイファイスピーカーとして今日要求される諸条件をきっちり満足していることがわかった。今後の展開が楽しみな再上陸だ。
本記事は季刊オーディオアクセサリー vol.182 AUTUMNからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから