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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第264回】

フェイスプレート交換でサウンド調整!画期的イヤホンNF Audio「NE4 Evolution」の出来栄えは?

公開日 2021/10/30 07:00 高橋 敦
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REFERENCE/BLACKは「フルフラットな周波数特性を意識」というフェイスプレートで、ドライバーの使い方は超低域×1、全域×1、高域×2。フルレンジを軸に超低域と高域を補強してある構成だ。

そこから生み出されるのは、整ったバランスと精密感のある描写を好む方にはストライク!であろうサウンド。

José James「Just The Two of Us」では何より、冒頭からのエレクトリックピアノの煌めきと揺めきの表現が見事!ハイハットシンバルも、薄刃の鋭さとほどよいほぐれを兼ね備えた心地よい感触だ。ベースとバスドラムは目立ちすぎることなく、しかし確かな存在感で、ベースの感触も素直に感じられる。

Robert Glasper「Human」とYOASOBI「怪物」では空間表現が素晴らしい。左右の広がりがよく、音像が細身にフォーカスされているので余白も豊かに感じられる。「怪物」でのボーカルの定位や重ね方、エフェクトの面白さも映える。

POP/REDは「低域の量感をやや多めに、中域をやや絞り気味の周波数分割」というフェイスプレートで、ドライバーの使い方は低域×1、中域×1、高域×2。標準的な3ウェイ構成だ。

このフェイスプレートはそのスタンダードな構成を、おそらく「帯域バランスを任意にコントロールしやすい回路」という狙いで採用。低域と高域に適度なアクセントを付けている。そこから生み出されるのは、音像をやや大柄にした押し出し強めのサウンドだ。

「Just The Two of Us」や「Human」では、厚みを増した低域 - 中域によってベースやドラムスの存在感が強まり、相対的にボーカルは半歩下がる印象。そのボーカルは中域以下の豊かさで重心を下げつつ、エッジを立てて明瞭さも確保している。

「怪物」では、空間性やエフェクトの表現はREFERENCEに及ばないが、エレクトロ感に加えてラウドな雰囲気もプッシュされ、迫力あるサウンドだ。

TRANSPARENT/BLUEは「高域の透明感と清冽さを意識」というフェイスプレートで、ドライバーの使い方は全域×1、高域×2。4基搭載のドライバーのうち、1基をあえて使わない!という思い切った構成だ。

サウンドも、他2種はオールラウンダー的な仕上がりであるのに対して、精細感や空間表現などに振り切った「特化型」の印象。フェイスプレート交換システムによるチューニング変更の振り幅の大きさを特に実感させてくれる。

「Human」のように超低域の響きが欠かせない曲や、シンセベースの活躍が著しい「怪物」では、その超低音の響きや低音の厚みの不足の残念さは否めない。そういった曲との相性は正直微妙だ。

であるが、だからこそ、フルアコースティックギターのソロ名演であるJoe Pass「How High the Moon」のように、超低域 - 低域がそもそもあまり含まれておらず、対してピッキングの瞬間のニュアンス、ポジション移動時の演奏ノイズなどによる気配感など、高域の繊細な描き込みがほしい曲、そうした録音との相性は抜群だ!

こういった相性の良し悪しが出やすいところも特化型ならではの面白味。しかもこのイヤホンの場合、相性が悪い曲にぶつかったらフェイスプレートを交換すればOKなのだから気も楽だ。

現時点で大満足!将来的な発展にも期待!

筆者としては、個人的な好みに合致する「REFERENCE/BLACK」フェイスプレートのサウンドだけでもう十分に満足できてしまうレベル。つまりこれは、サウンドバリエーションの広さで押し切るようなイヤホンではなく、その各バリエーションの音の作り込みもハイレベルなイヤホンだ。

さらに、製品ページによると「新作フェイスプレートが続々登場予定 今後NF Audioでは、さまざまな音楽スタイルやシーンに合わせた交換用フェイスプレート(オプション)を提供していく予定です」とのことであるから、将来的なお楽しみまである。

ギミックとしての面白さとオーディオとしての実用性そしてクオリティを高度に両立させるイヤホンだ。これぞ趣味のアイテム!という楽しさを味わいたい方も、純粋に素晴らしいサウンドを味わいたい方も、どちらもぜひ注目してみてほしい。


高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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