【特別企画】オーディオ銘機賞2022 銀賞受賞
カナダの俊英・パラダイムの「Founder 120H」。ウーファーをアクティブ駆動するハイブリッド型の実力は?
カナダ発のスピーカーブランド、パラダイム。同ブランドからファウンダー(創業者)の名を冠した新たなシリーズが登場した。創業者のスコット・バグビー氏が、2年前に同社を再買収して以来初めて導入された完全に新しいラインである。この最高峰モデル「120H」が、「オーディオ銘機賞2022」にて銀賞の受賞を果たしたのでそのサウンドをレポートしよう。
■3基のウーファーをアンプ駆動する「Founder」トップモデル
カナダの総合的なスピーカーメーカー、パラダイム。その設立は1982年にまでさかのぼるが、ドライバーユニットから自社で設計・製造し、アッセンブリーまでやる会社だ。日本市場に入っていなかったのが不思議だが、3年ほど前から展開している。
「Founderシリーズ」は、フラグシップのPersonaシリーズに続くセカンドライン。ピュアオーディオからAV用のサラウンドマルチにも対応できる6つのモデルがラインアップしている。ここでは「オーディオ銘機賞2022」の銀賞を獲得した「Founder120H」を紹介する。音だけ聴けば到底この値段のスピーカーとは思えない実力の高さだ。
まずはその概要から。3ウェイ・5ドライバーのフロアスタンディングタイプで底面にバスレフのポートがある。高さは115.3cmで、実際に見ると凝縮感のあるデザインだ。
ドライバーユニットを紹介すると、トゥイーターはAL-MAC(アルミとマグネシウム、セラミック素材の組み合わせ)の振動板。25mm径のドームで、ウェーブガイドが装着されているが、ガイドは微妙に偏芯した形状。ミッドは同じくAL-MACで152mm径のコーン。音の出るタイミングを揃えるPPAレンズ(金属のネット状のもの)を装備。ウーファーは215mm径で振動板はCARBON-Xという素材。詳細は省くがいずれの磁気回路も凝ったフィーチャーを持っている。
エンクロージャーは19mmと25mm厚のMDFを組み合わせ、内部にはブレースが合理的に入れられている。またドライバーユニットやスパイクなどはエラストマーを介して取り付けられており、振動コントロールを行っている。
しかしこのスピーカーの一番の特徴は3基のウーファーが内蔵のパワーアンプで駆動される点だ。中高の2ウェイが通常のパッシブタイプ。ウーファーはアクティブなのだ。ふたつの方式を持つのでハイブリッド・スピーカーと呼んでいる。
そしてその低域は自動調整できる。マイクを接続し、PCを使って部屋のレゾナンスを把握。DSPで制御(詳細は割愛するがARC GENESISと名付けられている)。アンプ自体はDクラスで、定格で1000W、ピークで200Wの出力。そのおかげもあって、一般的なリスニングルームで-3dBで取ったスペックで言えば、最低域は18Hzまでの再生レンジ。また、アンプ側から見ると300Hz以上のミッドとトゥイーターを駆動すれば良い上に、能率は95dBもあるので、たとえば300Bシングルの8W程度の真空管パワーアンプでもうまくハンドリングできるだろう。
■最低域のレンジが広く、高度な再現性や描写力を持っている
インポーターの試聴室でテストした。デジタルプレーヤーはエソテリック「K-01Xs」。プリはEARの「912」、パワーアンプはファンダメンタルの「MA-10」。
竹内まりや「シングル・アゲイン」から聴き出したが、中高と低域のエネルギーバランスが見事に釣り合っている。全体的には大人っぽい音色感で音のつながりとしてはかなりしっとりしている。透明感も高く、スピーカー自身の個性を前面に出すのではなく、音楽自体や演奏の良さを聴かせてくれる方向性だ。F特的にはワイドレンジだが、中域の存在感が高く、最低域のレンジは限界がかなり低いし押し出しもいいが強調されている感じはない。
大編成のオーケストラ曲を聴くと、そのスケール感が素晴らしい。音の出るタイミングが合っているし、ミッドに装着されたPPAレンズも効いているのだろう、音数が非常に多く、しかも音像が前後や左右にきちんと定位しているので雑然とした感じにならない。低弦やチューバ、ティンパニといった低音の、さらに影のような低周波の感じも出ている。
通常のパッシブスピーカーであるFounder 80も同じトゥイーターを採用しているが、「120H」の高域の方がより滑らかさで、オーガニックな音色感を持っているのも特筆しておきたい。「120H」ではウーファーを駆動しないための逆起電力の影響がないためか、あるいは最低域のレンジが広いのが高域にも影響を与えているかもしれない。
技術の進歩はオーディオにコンパクトさや精度の向上をもたらすが、「Founder120H」は低域の高い再生能力と、倍近い価格帯の製品と戦えるような再現性や描写力を持っている。是非、体験されことを薦めたい。
Specifications
●構成:3ウェイ・5ドライバーハイブリッド・バスレフ型 ARC Genesis 対応●内蔵パワーアンプ:DSP制御、1000W RMS、2000W ダイナミックピーク●高域ドライバー:扁球ウェーブガイド(OSWTM) &PPATMレンズ付き25mm AL- MACTMセラミックドーム型●中域ドライバー:PPATMレンズ付き152mm AL- MAGTMコーン型●低域ドライバー:ARTTMエッジ・超ロングストローク215mmCARBON-XTM ユニボディ・コーン型×3●周波数特性 (軸上±2dB):22Hz〜23kHz●周波数特性(軸外30°±2dB):22Hz〜20 kHz●最低周波数:18Hz (DIN)●感度:95dB●クロスオーバー周波数:2.4kHz / 300Hz●推奨アンプ出力:15 〜400W●最大入力:300W●インピーダンス:8Ω●サイズ:354W×1153H×441Dmm●質量:41.7kg●仕上げ:ピアノブラック、ブラックウォルナット、ミッドナイトチェリー、ウォルナット●取り扱い:(株)PDN
(提供:PDN)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.183』からの転載です。
■3基のウーファーをアンプ駆動する「Founder」トップモデル
カナダの総合的なスピーカーメーカー、パラダイム。その設立は1982年にまでさかのぼるが、ドライバーユニットから自社で設計・製造し、アッセンブリーまでやる会社だ。日本市場に入っていなかったのが不思議だが、3年ほど前から展開している。
「Founderシリーズ」は、フラグシップのPersonaシリーズに続くセカンドライン。ピュアオーディオからAV用のサラウンドマルチにも対応できる6つのモデルがラインアップしている。ここでは「オーディオ銘機賞2022」の銀賞を獲得した「Founder120H」を紹介する。音だけ聴けば到底この値段のスピーカーとは思えない実力の高さだ。
まずはその概要から。3ウェイ・5ドライバーのフロアスタンディングタイプで底面にバスレフのポートがある。高さは115.3cmで、実際に見ると凝縮感のあるデザインだ。
ドライバーユニットを紹介すると、トゥイーターはAL-MAC(アルミとマグネシウム、セラミック素材の組み合わせ)の振動板。25mm径のドームで、ウェーブガイドが装着されているが、ガイドは微妙に偏芯した形状。ミッドは同じくAL-MACで152mm径のコーン。音の出るタイミングを揃えるPPAレンズ(金属のネット状のもの)を装備。ウーファーは215mm径で振動板はCARBON-Xという素材。詳細は省くがいずれの磁気回路も凝ったフィーチャーを持っている。
エンクロージャーは19mmと25mm厚のMDFを組み合わせ、内部にはブレースが合理的に入れられている。またドライバーユニットやスパイクなどはエラストマーを介して取り付けられており、振動コントロールを行っている。
しかしこのスピーカーの一番の特徴は3基のウーファーが内蔵のパワーアンプで駆動される点だ。中高の2ウェイが通常のパッシブタイプ。ウーファーはアクティブなのだ。ふたつの方式を持つのでハイブリッド・スピーカーと呼んでいる。
そしてその低域は自動調整できる。マイクを接続し、PCを使って部屋のレゾナンスを把握。DSPで制御(詳細は割愛するがARC GENESISと名付けられている)。アンプ自体はDクラスで、定格で1000W、ピークで200Wの出力。そのおかげもあって、一般的なリスニングルームで-3dBで取ったスペックで言えば、最低域は18Hzまでの再生レンジ。また、アンプ側から見ると300Hz以上のミッドとトゥイーターを駆動すれば良い上に、能率は95dBもあるので、たとえば300Bシングルの8W程度の真空管パワーアンプでもうまくハンドリングできるだろう。
■最低域のレンジが広く、高度な再現性や描写力を持っている
インポーターの試聴室でテストした。デジタルプレーヤーはエソテリック「K-01Xs」。プリはEARの「912」、パワーアンプはファンダメンタルの「MA-10」。
竹内まりや「シングル・アゲイン」から聴き出したが、中高と低域のエネルギーバランスが見事に釣り合っている。全体的には大人っぽい音色感で音のつながりとしてはかなりしっとりしている。透明感も高く、スピーカー自身の個性を前面に出すのではなく、音楽自体や演奏の良さを聴かせてくれる方向性だ。F特的にはワイドレンジだが、中域の存在感が高く、最低域のレンジは限界がかなり低いし押し出しもいいが強調されている感じはない。
大編成のオーケストラ曲を聴くと、そのスケール感が素晴らしい。音の出るタイミングが合っているし、ミッドに装着されたPPAレンズも効いているのだろう、音数が非常に多く、しかも音像が前後や左右にきちんと定位しているので雑然とした感じにならない。低弦やチューバ、ティンパニといった低音の、さらに影のような低周波の感じも出ている。
通常のパッシブスピーカーであるFounder 80も同じトゥイーターを採用しているが、「120H」の高域の方がより滑らかさで、オーガニックな音色感を持っているのも特筆しておきたい。「120H」ではウーファーを駆動しないための逆起電力の影響がないためか、あるいは最低域のレンジが広いのが高域にも影響を与えているかもしれない。
技術の進歩はオーディオにコンパクトさや精度の向上をもたらすが、「Founder120H」は低域の高い再生能力と、倍近い価格帯の製品と戦えるような再現性や描写力を持っている。是非、体験されことを薦めたい。
Specifications
●構成:3ウェイ・5ドライバーハイブリッド・バスレフ型 ARC Genesis 対応●内蔵パワーアンプ:DSP制御、1000W RMS、2000W ダイナミックピーク●高域ドライバー:扁球ウェーブガイド(OSWTM) &PPATMレンズ付き25mm AL- MACTMセラミックドーム型●中域ドライバー:PPATMレンズ付き152mm AL- MAGTMコーン型●低域ドライバー:ARTTMエッジ・超ロングストローク215mmCARBON-XTM ユニボディ・コーン型×3●周波数特性 (軸上±2dB):22Hz〜23kHz●周波数特性(軸外30°±2dB):22Hz〜20 kHz●最低周波数:18Hz (DIN)●感度:95dB●クロスオーバー周波数:2.4kHz / 300Hz●推奨アンプ出力:15 〜400W●最大入力:300W●インピーダンス:8Ω●サイズ:354W×1153H×441Dmm●質量:41.7kg●仕上げ:ピアノブラック、ブラックウォルナット、ミッドナイトチェリー、ウォルナット●取り扱い:(株)PDN
(提供:PDN)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.183』からの転載です。