【特別企画】“現代オーディオ向け”最新シリーズを検証
30年のロングセラーを刷新!オーディオテクニカの新ケーブル「FLUAT」は偉大なる“普遍の音”を実現した
■FLUATによって実現する音の解像感。楽曲本来の姿を再生
試聴にあたっては、アキュフェーズの機材を中心としたシステムを構築。PC内の音源を再生するDACとして、ディスクプレーヤー「DP-750」を使用。後段にはプリアンプ「C-2450」とパワーアンプ「P-4500」を用意。内容に応じて各機器間の接続を「FLUAT」に繋ぎ替えていく。
まず、プレーヤーとプリの間をRCAで繋ぎ替えた。そうしたら、それまで塊になって今一つ前に飛んでこなかったグランカッサがすっきりとほぐれ、弦や管にもごく僅かにまとわりついていたベールというか、音がこちらへ飛んでくるのを阻害するような歪み要素が消え去り、涼風のような爽やかさで耳へスルリと入ってくるようになる。
決して聴く人を驚かせるタイプではなく、偉大なる“普通の音”を目指した結果、この域へ辿り着いたと感じさせる。フュージョンのスピード感や底力も勢いよく描出するようになり、ようやくこの楽曲の姿が見えてきた。いやはや、編集部のリファレンスケーブルだって相応のグレードなのに、この違いには思わず目を見張った。相当に器の大きなケーブルである。
ポップスは声の通りが良く、サ行のきめが細かく耳に障らなくなった。かなりドラムの力が強い音源なのだが、やはりここでもリファレンスではいささか逡巡した感じの鳴り方だったのが、遠慮なく吹っ飛んでくるようになったのがうれしい。
次にプリ→パワー間を今度はXLRケーブルでつないでみる。すると音が一聴すると柔らかくなったように感じさせる。おや、これは音の角を丸めたのか、と思ってはいけない。じっくりと聴けば聴くほど、これは伝送における音楽信号の歪みを徹底して抑え、ストレートな伝送をした結果なのである。
ベテランのオーディオマニアなら先刻ご承知であろうが、音の歪みが小さくなると少し音量が下がって聴こえたり、高域が寂しく聴こえたりしがちなのだが、例えばその状態でボリュームを上げても耳にまったく障らなくなっていることが分かる。これこそが大いなる“普遍”というべき音作りなのであろうと思う。
ジャズも刺々しくならないのに低域のパルスがパワフルに耳へ届き、ウィスパーボイスも含めて何という聴き心地の良さだと舌を巻いた。オーディオ的な品位の高さと寝転んで聴けるようなリラックスした表現を、ともに高いレベルで達成しているのだからこのケーブル、ただ者ではない。
ポップスは声のサ行がさらに落ち着き、ドラムスはさらに爽やかに、吹っ飛んできながら神経を逆立てることがない。音楽を長時間聴き続けた時の疲労度の少なさに、本ケーブルの真価を味わうことができるだろう。
■給電能力の高さがそのまま音に表れる電源ケーブル
お次は電源ケーブルだ。電源ケーブルは「どこへ使うか」によって効き目が違うので、まず一番上流のディスクプレーヤーにつないでみた。例によってクラシックから聴いたが、低音の下支えが明らかにどっしりと安定し、例えばバストロンボーンとテューバの腰かけている位置、その前後感までが見えてきたのには驚いた。
音場にかかっていた僅かな靄のようなものが消え、ホールの広さや天井の高さが伝わってくる。かといって神経質な音かといえば全然そんなことはなく、刺々しさのないフレッシュで爽やかな音という美質はインコネと共通だ。
ジャズもパワーが増して音の“角”をよく表現するようになったが、それが耳を刺さないのは前述の通り。本当に絶対的な器を大きくし、音楽を正確・克明に表現しながら、余分な音をつけることがないのであろう。本当に頼もしいケーブル群である。
ポップスは声の抜けがさらに向上、試聴曲として再生した井筒香奈江の歌唱曲の艶っぽさ、色っぽさが耳へ押し寄せてくるようだ。ドラムスは怒涛のパワーでウーファーを揺り動かし、しかし声を全然邪魔しない。いいチューニングだと思う。
念のため、ディスクプレーヤーのケーブルをリファレンスへ戻し、パワーアンプへもつないでみたが、絶対的な音の違いはディスクプレーヤーの方が大きい。それはそうだ。プリ→パワーと何段も違いが増幅されるのだから。
しかし、パワーアンプへつないでも明らかに給電能力が増していることが分かる。特に猛烈なパワーのドラムアタックなどはこちらが圧倒的に有利である。声の迫力も増大、歌姫が自然さを損なわない範囲でこちらへ近づいてくれるのがうれしい。これはいつか、両方ともこの電源ケーブルで接続した時の音を聴いてみたいものである。
(企画協力:オーディオテクニカ)