HOME > レビュー > 「実に素晴らしい技術力の高さ」。HIFIMANの独自開発DACチップ「HYMALAYA」実力徹底チェック!

【PR】注目ブランドの“次なる一手”

「実に素晴らしい技術力の高さ」。HIFIMANの独自開発DACチップ「HYMALAYA」実力徹底チェック!

公開日 2021/12/29 06:59 岩井 喬
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

ΔΣ型も1bitから数bit構成のものが増え、その音色も多種多様となった現在であるが、PCM1704を積んだシステムのサウンドを聴くとマルチビット型の音はΔΣ型とは違う表現力を持っていると実感する。マルチビット型が得意とするのはPCM形式のデジタルファイルであり、DSD形式のファイルの場合はPCM変換を行うなど、ワンステップ増えることが多い。純粋な音質面ではΔΣ型が解像度や精緻さ、輪郭表現が明確である印象を持つのに対し、マルチビット型は音像の芯の太さ、低重心で逞しい楽器の存在感、自然な空間表現に長ける印象だ。音像の分離が良く、前後感の音の重なりも明確であるが、エッジ表現のきつさがなく、ナチュラルにボーカルや楽器が定位する。

音色傾向の面ではマルチビット型はΔΣ型に引けを取らない独自の魅力を持っている一方、採用例が少ない理由はマルチビット型チップの選択肢がないことが一因にあろう。先述の通り、PCM1704は生産完了し、その後継となるチップは登場しなかった。他社を含め汎用のマルチビット型DACチップで現在流通しているものは極めて少なく、オーディオ製品に積み込んで数を売るのは難しいのが現状だ。しかし、その解決策の一つとして昨今注目されているのが、実際の抵抗素子で構成したR2RディスクリートDACである。ΔΣ型においてもこの数年、ディスクリートDACがハイエンド機に数多く登場しているが、奇しくも半導体供給不足のなか、一つの解決策となった側面もある。ΔΣ型のディスクリートDACは、それまでチップ内で構成していた回路を実際のパッシブ素子を基板上へ配置することにより、そのブランドが求めるサウンドチューニングがしやすいことと、部品や電路が大きくなることでの音質向上を見込めることが特長だ。

■HYMALAYA DACの特徴。「HIFIMANの技術力の高さも実に素晴らしい」

一方R2RディスクリートDACは多くの抵抗とFPGAなどを用いた構成で、“ラダー型”とも呼ばれるはしご状に組まれた回路を用いる。ここで問題になるのは抵抗素子一つ一つの精度の高さが極めて重要になることだ。R2Rマルチビット型汎用チップが減少した理由はこの点にも由来しており、チップ内の抵抗成分を細かくトリミングしなければならない。大量販売の目途が立つのであればマルチビット型に特化したプロセスの構築も不可能ではないだろうが、現在の市場情勢ではそれも難しいだろう。

トリミングはディスクリート構成であっても必要不可欠であり、抵抗値の精度が低ければD/A変換の精度も下がってしまうため、避けては通れぬ道だ。ハイレゾ時代となった現在では24bit以上を見据えた構成としなければならず、より多くの高精度に値の揃った抵抗が必要となる。基本的な抵抗の選別の手間もかかるが、汎用チップの入手が難しい現在、R2Rマルチビット型ならではのサウンドを実現するためにはディスクリート構成が最も近道となろう。近年はポータブルプレーヤー市場でもR2RディスクリートDACを採用した機種が複数登場し話題となっているが、HIFIMANにおいてもこのR2RディスクリートDACを採用する運びとなった。

HIFIMANでは開発に5年もの歳月をかけたという独自のカスタムR2RディスクリートDACを「HYMALAYA(ヒマラヤ) DAC」と名付け、いくつかの製品に導入することが決まっている。この中でも先行して採用されたのが同社製平面駆動型ヘッドホンに装着する、LDAC/aptX HD対応Bluetoothアダプター「BlueMini R2R」だ。HYMALAYA DAC部はFPGAとラダー部に用いる数多くの薄膜チップ抵抗で構成されている。DAC自体の性能としては最大768kHz/24bit・PCMまで対応可能であり、理論上は1.5MHzまで対応できるノンオーバーサンプリング仕様とのこと。BlueMini R2RはUSB入力も備えたBluetoothレシーバーであるが、USBインターフェースに関わるチップ入手難からか、USB入力では48kHz/16bit・PCMまでの対応となる。SoCはクアルコム製「QCC5124」を搭載しており、LDACコーデック使用時はHYMALAYA DAC間で最大96kHz/24bitでの信号伝達が可能だ。

イヤホン端子に接続することでBluetoothレシーバー兼USB-DACとして使用できる

HYMALAYA DACの特徴としてはSNRが−120dB、THDが0.0022%、消費電力としては20mWというスペックであり、R2R方式の汎用DACチップと比較し圧倒的な低消費電力でありながら、サウンドスペックはPCM1704(SNR:−120dB、THD:0.0025%、消費電力:1チップ当たり450mW)と同等のクオリティを実現している。特にバッテリー駆動が前提のポータブル機器に対して、消費電力を極力抑えつつ、ハイエンド汎用DACチップと同等のサウンドクオリティが得られるというのは非常に理にかなった理想のテクノロジーといえるだろう。ここまでスペックを追い込んだHIFIMANの技術力の高さも実に素晴らしい。

USB-DACとしての接続端子はtype-Cを採用

■ヘッドホン「DEVA PRO」との組み合わせでHYMALAYA DACの音質を確認

このHYMALAYA DACの音質を確認すべく、BlueMini R2Rを接続した平面駆動型ヘッドホン「DEVA PRO」にて試聴を行った。DEVA PROは以前のものよりも80%も薄いフィルム振動板「NsD(Neo supernano Diaphragm)」を採用。このNsDを挟み込み反発磁界を生む棒状のマグネットは、外側に向け丸みを持たせた形状としたステルスマグネットを取り入れた。これにより歪みを生み出す音の回折現象を減少させ、クリアで透明度の高いサウンドを実現させている。インピーダンスは18Ωと低いが低能率であり、ヘッドホンアンプの駆動力が必要とされる。しかしBlueMini R2Rはアンプ部も強力に設計されており、BTL駆動としているため、DAPなどと有線接続するよりも効率的にブランドが考える理想のバランスを獲得したサウンドが楽しめる点で優位だ。

次ページこれからのポータブルオーディオの在り方も変えていくようなパワーを持つ魅力

前へ 1 2 3 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク