【特別企画】神獣の名にふさわしい万能性
まさに“二刀流”!「xDSD Gryphon」の実力をポータブルとデスクトップオーディオの両面からチェック
■神獣の名を冠する「グリフォン」、その実力やいかに?
iFi audioより登場の「xDSD Gryphon」は見ての通り基本は「ポータブルDACアンプ」という形態に当てはまる製品。であるが、そこにとどまらない幅広い場面も想定されている。
というのもこのポータブルアンプ、背面を見るとシングルエンドとバランスのライン出力端子も装備。デスクトップオーディオ等でのプリアンプ的な送り出しポジション、スピーカーシステムへの起用も想定されていることは間違いない。
実際このアイテム、ポータブルでもデスクトップでも、イヤホンシステムでもスピーカーシステムでも、音質はもちろん、使い勝手の面でも大変に優秀。メーカーとしては「共に優れたデジタル部とアナログ部がひとつのアイテムに共存している」ことから鷲と獅子の「合成」獣であるグリフォンの名を冠したとのことだが、ポータブルでもデスクトップでも使える! 空でも陸でも強い! みたいな意味合いからのグリフォンと言われても違和感はない。
さらにBluetoothワイヤレス周りもLDAC/aptX Adaptive/aptX HDにまで対応と強力であり、ワイヤレスとワイヤードのどっちもいけるから「グリフォン」と言われてもこれまた違和感がない。さらにS/PDIF入力にもライン入力にも対応していたりする。
というようにこのxDSD Gryphonはその名にふさわしい万能性を備えているわけだが、その魅力の中核はやはり、まずはイヤホン&ヘッドホンアンプとして。次はスピーカーシステムに向けてのプリアンプ的ポジションにおいてのものだろう。今回はその二つに絞ってこのアイテムの実力をチェック!
■4.4mm端子やアッテネーター、音場調整など得意技術を“全載せ”!
まずは技術面や機能面のおさらいから。
概要や各所に無数に導入されている同社ならではの高音質技術については発表時のニュース記事や公式の製品ページを確認してもらうとして、ここでは音質と使い勝手でポイントとなりそうな注目箇所をいくつかピックアップしておく。
ヘッドホンアンプとしては3.5mmシングルエンドと4.4mmバランスの端子を装備。シングルエンド側には同社独自のS-Balanced技術が用いられており、シングルエンド接続イヤホンとの互換性を維持したまま、バランス駆動の利点の一部を得ていることが特長だ。
最大限のアンプパワーを叩き出す「PureWave」増幅回路の搭載も大きな強みだが、それだけではなく、それと共にいわゆるアッテネーター回路である「iEMatch」も内蔵している点も大きい。大型ヘッドホン等も余裕で駆動するパワーを確保しつつ、高感度イヤーモニター等とのマッチングも問題なしだ。
他、音場調整「XSpace」と低音調整「XBass II」のモードセレクトによっても、幅広いヘッドホンやイヤホンとのマッチング、ユーザーの好みへのフィットが実現される。なおXBass IIは背面のスイッチで「従来通りのベース強化のBass/高域寄りの中域を強化するPresence/Bass+Presence」の3モードからの選択が可能。
プリアンプとしてのライン出力も3.5mmシングルエンドと4.4mmバランスを装備。後者はプロオーディオ分野なども含むバランス入力オーディオ機器との接続に向けてのものだ。
気になるのは4.4mm端子からXLR端子への変換ケーブルというレアアイテムが必要になることかと思うが、そこも安心。メーカー純正品が用意されている上に、xDSD Gryphon購入者には12月末までの期間限定でプレゼントキャンペーンが、期間が延長され2022年3月末まで行われている。
ポータブルアンプや小型デスクトップ製品としては珍しく、豊かな情報量のディスプレイが搭載されているのも嬉しい。本機の動作状況はフロントパネルLEDの点灯色でも伝えられるが、多機能モデルなので現在のセッティングをテキストでぱっと把握できるありがたみは大きい。
■イヤホン再生では「達人の拳」のようなローエンドの力強さが印象的
ヘッドホンアンプとしてのサウンドは、ポータブルアンプの基本中の基本、シングルエンド3.5mmでのイヤホン駆動を中心にチェックした。
……文句なし!の一言で済ませたくなるがそうもいかないので説明していこう。
聴き始めてまず「これはよい!」と思わされたのはローエンドの力強さ。Robert Glasper Experiment「Human」の超低域まで伸びて響くベースやバスドラムへの対応も完璧だ。力強いと言っても、素人の力自慢のパンチのような大振りのパワフルさではない。力も技も練り上げられ無駄のないコンパクトな動きで繰り出される達人の拳に強烈な力が込められているように、音にエネルギーがぐっと静かに込められているイメージだ。そういった印象を与えてくれるオーディオアイテムが他に皆無というわけではないが、このサイズのポータブルアンプからそれを感じられるというのは驚き!
そのアンプの力があるからこそ、低音調整「XBass II」の有用性も増している。この機能を「Bass」モードで使うとベースの太さを強める帯域がナチュラルにプッシュされるが、その帯域をプッシュすると、組み合わせるイヤホンやヘッドホンによっては、好ましい太さではなく緩んだ膨らみが生まれてしまうこともありがち。
しかし力強いアンプによる確かな制動があることで、このモデルのXBassではこれまで以上にそれが起きにくい。様々なイヤホンやヘッドホンとの組み合わせでより積極的に試していけそうだ。
高域側では音のしなやかさ、しっとりと適度な湿度感が好印象。そこはクリスタルに硬質な音調が持ち味のfinal「A8000」と組み合わせたときにわかりやすかった。例えばジョー・パスさんのソロギター作品での鉄弦生音のカチカチとしたアタックを、A8000らしい硬質な綺麗さは持ち味として生かしつつ、ほんの僅かにほぐし、やわらげてくれる。角は角として残しつつ、しかし指に痛かったりはしないように丁寧に処理する、職人の仕上げ。そんな雰囲気だ。
でありつつ、イヤホン側の持ち味も適度な湿度感であるAstell&Kernの「AK T9iE」と組み合わせたときにも、しっとり×しっとりで過剰にほぐれてぼやけた高域にはならないのだから実に絶妙なチューニング。
そのほぐれのおかげか、アコースティック音源の響きの粒子の漂い具合なども良好で、空間表現も心地よい。なので良質なイヤホンやヘッドホンとの組み合わせでは音場調整「XSpace」の必要性は感じないことも多い。しかし場合によっては有効であろうから、実際に導入した場合には適時試してみてほしい。
他、4.4mmバランスでも好印象に変わりはないし、鳴らしにくめのハイエンドヘッドホンもたしかに余裕で鳴らしてくれるしと、ポータブルにせよ自室での利用にせよ、ヘッドホンアンプとしての性能に不満を感じることはほとんどなさそうだ。
■DTMや動画編集にも最適!パワードスピーカーで本格システムを構築
デスクトップでのスピーカーシステムでの利用は、スタジオモニターの定番Genelec社の最小ラインの旧モデルである「6010B」との組み合わせでチェック。最新モデル同士の組み合わせでなくて申し訳ないが、筆者自宅のデスクトップリファレンス機がそれなので……
まず音質的には、こちらは本当に、文句なし! の一言で済ませてしまって差し支えないだろう。ヘッドホンアンプとしての優秀さはプリアンプとしてもそのまま当てはまる。
使い勝手の面では、小音量領域での調整のしやすさが光る。パワードモニタースピーカーをデスクトップで使うと「音量基本デカすぎ問題」が発生しがちで、プリアンプ側では出力を下げたところでの細かな音量調整が常用されがち。なのでプリアンプの役割を担う機器には小音量での音量調整のしやすさと音質の確保が求められる。
その点このxDSD Gryphonは完璧だ。最小-95dBから1dB単位の滑らかさでの音量調整が可能。-60dBとか-40dBとかの小音量出力時でも音質や左右バランスの乱れはない。快適!
音楽リスニングに限らず音楽制作や動画編集など長時間集中しての作業ではヘッドホンよりもスピーカーの方が耳が疲れにくいことだし、このxDSD Gryphonの導入を機に良質なスピーカーシステムの構築も……なんてのもおすすめしたいところだ。制作の大枠はスピーカーで進め、細部はヘッドホンで調整し、最後に全体をスピーカーで確認。プロっぽい!
イヤホンでもスピーカーでもポータブルでもデスクトップでも文句なし。まさにグリフォン的万能性。流行り言葉で言えば「二刀流」か。
ただ実際に導入するには気掛かりがひとつだけある。デスクトップシステムに接続してあるのをあちこち外して持ち出してポータブルして帰宅したらまた接続してというのが面倒で、もう一台ほしくなってしまいそうだ……。
iFi audioより登場の「xDSD Gryphon」は見ての通り基本は「ポータブルDACアンプ」という形態に当てはまる製品。であるが、そこにとどまらない幅広い場面も想定されている。
というのもこのポータブルアンプ、背面を見るとシングルエンドとバランスのライン出力端子も装備。デスクトップオーディオ等でのプリアンプ的な送り出しポジション、スピーカーシステムへの起用も想定されていることは間違いない。
実際このアイテム、ポータブルでもデスクトップでも、イヤホンシステムでもスピーカーシステムでも、音質はもちろん、使い勝手の面でも大変に優秀。メーカーとしては「共に優れたデジタル部とアナログ部がひとつのアイテムに共存している」ことから鷲と獅子の「合成」獣であるグリフォンの名を冠したとのことだが、ポータブルでもデスクトップでも使える! 空でも陸でも強い! みたいな意味合いからのグリフォンと言われても違和感はない。
さらにBluetoothワイヤレス周りもLDAC/aptX Adaptive/aptX HDにまで対応と強力であり、ワイヤレスとワイヤードのどっちもいけるから「グリフォン」と言われてもこれまた違和感がない。さらにS/PDIF入力にもライン入力にも対応していたりする。
というようにこのxDSD Gryphonはその名にふさわしい万能性を備えているわけだが、その魅力の中核はやはり、まずはイヤホン&ヘッドホンアンプとして。次はスピーカーシステムに向けてのプリアンプ的ポジションにおいてのものだろう。今回はその二つに絞ってこのアイテムの実力をチェック!
■4.4mm端子やアッテネーター、音場調整など得意技術を“全載せ”!
まずは技術面や機能面のおさらいから。
概要や各所に無数に導入されている同社ならではの高音質技術については発表時のニュース記事や公式の製品ページを確認してもらうとして、ここでは音質と使い勝手でポイントとなりそうな注目箇所をいくつかピックアップしておく。
ヘッドホンアンプとしては3.5mmシングルエンドと4.4mmバランスの端子を装備。シングルエンド側には同社独自のS-Balanced技術が用いられており、シングルエンド接続イヤホンとの互換性を維持したまま、バランス駆動の利点の一部を得ていることが特長だ。
最大限のアンプパワーを叩き出す「PureWave」増幅回路の搭載も大きな強みだが、それだけではなく、それと共にいわゆるアッテネーター回路である「iEMatch」も内蔵している点も大きい。大型ヘッドホン等も余裕で駆動するパワーを確保しつつ、高感度イヤーモニター等とのマッチングも問題なしだ。
他、音場調整「XSpace」と低音調整「XBass II」のモードセレクトによっても、幅広いヘッドホンやイヤホンとのマッチング、ユーザーの好みへのフィットが実現される。なおXBass IIは背面のスイッチで「従来通りのベース強化のBass/高域寄りの中域を強化するPresence/Bass+Presence」の3モードからの選択が可能。
プリアンプとしてのライン出力も3.5mmシングルエンドと4.4mmバランスを装備。後者はプロオーディオ分野なども含むバランス入力オーディオ機器との接続に向けてのものだ。
気になるのは4.4mm端子からXLR端子への変換ケーブルというレアアイテムが必要になることかと思うが、そこも安心。メーカー純正品が用意されている上に、xDSD Gryphon購入者には
ポータブルアンプや小型デスクトップ製品としては珍しく、豊かな情報量のディスプレイが搭載されているのも嬉しい。本機の動作状況はフロントパネルLEDの点灯色でも伝えられるが、多機能モデルなので現在のセッティングをテキストでぱっと把握できるありがたみは大きい。
■イヤホン再生では「達人の拳」のようなローエンドの力強さが印象的
ヘッドホンアンプとしてのサウンドは、ポータブルアンプの基本中の基本、シングルエンド3.5mmでのイヤホン駆動を中心にチェックした。
……文句なし!の一言で済ませたくなるがそうもいかないので説明していこう。
聴き始めてまず「これはよい!」と思わされたのはローエンドの力強さ。Robert Glasper Experiment「Human」の超低域まで伸びて響くベースやバスドラムへの対応も完璧だ。力強いと言っても、素人の力自慢のパンチのような大振りのパワフルさではない。力も技も練り上げられ無駄のないコンパクトな動きで繰り出される達人の拳に強烈な力が込められているように、音にエネルギーがぐっと静かに込められているイメージだ。そういった印象を与えてくれるオーディオアイテムが他に皆無というわけではないが、このサイズのポータブルアンプからそれを感じられるというのは驚き!
そのアンプの力があるからこそ、低音調整「XBass II」の有用性も増している。この機能を「Bass」モードで使うとベースの太さを強める帯域がナチュラルにプッシュされるが、その帯域をプッシュすると、組み合わせるイヤホンやヘッドホンによっては、好ましい太さではなく緩んだ膨らみが生まれてしまうこともありがち。
しかし力強いアンプによる確かな制動があることで、このモデルのXBassではこれまで以上にそれが起きにくい。様々なイヤホンやヘッドホンとの組み合わせでより積極的に試していけそうだ。
高域側では音のしなやかさ、しっとりと適度な湿度感が好印象。そこはクリスタルに硬質な音調が持ち味のfinal「A8000」と組み合わせたときにわかりやすかった。例えばジョー・パスさんのソロギター作品での鉄弦生音のカチカチとしたアタックを、A8000らしい硬質な綺麗さは持ち味として生かしつつ、ほんの僅かにほぐし、やわらげてくれる。角は角として残しつつ、しかし指に痛かったりはしないように丁寧に処理する、職人の仕上げ。そんな雰囲気だ。
でありつつ、イヤホン側の持ち味も適度な湿度感であるAstell&Kernの「AK T9iE」と組み合わせたときにも、しっとり×しっとりで過剰にほぐれてぼやけた高域にはならないのだから実に絶妙なチューニング。
そのほぐれのおかげか、アコースティック音源の響きの粒子の漂い具合なども良好で、空間表現も心地よい。なので良質なイヤホンやヘッドホンとの組み合わせでは音場調整「XSpace」の必要性は感じないことも多い。しかし場合によっては有効であろうから、実際に導入した場合には適時試してみてほしい。
他、4.4mmバランスでも好印象に変わりはないし、鳴らしにくめのハイエンドヘッドホンもたしかに余裕で鳴らしてくれるしと、ポータブルにせよ自室での利用にせよ、ヘッドホンアンプとしての性能に不満を感じることはほとんどなさそうだ。
■DTMや動画編集にも最適!パワードスピーカーで本格システムを構築
デスクトップでのスピーカーシステムでの利用は、スタジオモニターの定番Genelec社の最小ラインの旧モデルである「6010B」との組み合わせでチェック。最新モデル同士の組み合わせでなくて申し訳ないが、筆者自宅のデスクトップリファレンス機がそれなので……
まず音質的には、こちらは本当に、文句なし! の一言で済ませてしまって差し支えないだろう。ヘッドホンアンプとしての優秀さはプリアンプとしてもそのまま当てはまる。
使い勝手の面では、小音量領域での調整のしやすさが光る。パワードモニタースピーカーをデスクトップで使うと「音量基本デカすぎ問題」が発生しがちで、プリアンプ側では出力を下げたところでの細かな音量調整が常用されがち。なのでプリアンプの役割を担う機器には小音量での音量調整のしやすさと音質の確保が求められる。
その点このxDSD Gryphonは完璧だ。最小-95dBから1dB単位の滑らかさでの音量調整が可能。-60dBとか-40dBとかの小音量出力時でも音質や左右バランスの乱れはない。快適!
音楽リスニングに限らず音楽制作や動画編集など長時間集中しての作業ではヘッドホンよりもスピーカーの方が耳が疲れにくいことだし、このxDSD Gryphonの導入を機に良質なスピーカーシステムの構築も……なんてのもおすすめしたいところだ。制作の大枠はスピーカーで進め、細部はヘッドホンで調整し、最後に全体をスピーカーで確認。プロっぽい!
イヤホンでもスピーカーでもポータブルでもデスクトップでも文句なし。まさにグリフォン的万能性。流行り言葉で言えば「二刀流」か。
ただ実際に導入するには気掛かりがひとつだけある。デスクトップシステムに接続してあるのをあちこち外して持ち出してポータブルして帰宅したらまた接続してというのが面倒で、もう一台ほしくなってしまいそうだ……。