【特別企画】信じ難いほどの価格設定
アメリカンサウンドを堪能!Polk Audioの大型ブックシェルフ「R200/ES20」を聴く
先進と伝統のアメリカンサウンドが堪能できるポークオーディオのスピーカー。その人気シリーズである「Reserveシリーズ」と「Signature Eliteシリーズ」。この2つの流れは今ともに “大きめのサイズが熱い” 。そこで本企画では両シリーズの大型サイズのブックシェルフ「R200」と「ES20」をクローズアップ。小林 貢氏がアメリカンなロックやジャズを試聴音源として、ゆったりとしたスケール感のある音質を堪能しながら、両機の魅力を余すことなくご紹介する。
■ブランドが設立された70年代の音楽とともに
ポークオーディオはマット・ポークが大学の友人たちと1972年に設立したスピーカーメーカー。筆者の記憶では1980年代初頭に日本に輸入され、1990年代後半まで発売されていたが、以後輸入が途絶えていた。
1972年というと筆者の好きなアメリカのジャズやロックに大きな動きがあった。ジャズではチック・コリア名義で発表した「リターン・トゥ・フォーエヴァー」が大ヒットした。本作はモダンジャズのような泥臭さがない爽快なサウンド。演奏で年代終盤のフリージャズ以降の混迷していた米国ジャズ界に新風を吹き込んだ。
ロックでは1969年にデビューした3管のブラス・セクションを擁した7人組のシカゴが発表した第5作『シカゴV』が全米第一位を獲得。本作に収められたアメリカ独立記念祭が催されたセントラル・パークの情景を歌った「サタデイ・イン・ザ・パーク」が大ヒットしている。
当時、ブラスを加えたロックバンドが幾つか登場したが、早めに終了していた。シカゴが現代まで活躍しているのは全米位獲得という実績からだろう。同年に米国トップの売り上げを誇る同社が設立されたのは単なる偶然か??
■2つの人気シリーズのなかで最大のブックシェルフを選択
今回試聴したのは2モデル。スタンダードな “シグネチャー・エリート” シリーズは「ES20」、上位の “リザーブ” シリーズは「R200」。それぞれシリーズ中で最も大きなサイズのブックシェルフ型だ。
ES20は25mm口径のテリレン・ドーム・トゥイーターにより40kHzという超高音域再生を実現している。ウーファーはマイカ強化ポリプロピレン・コーンを採用。リアのポートには、ポートの空気の流れをスムーズにすべく緻密に設計されたホーンのような形状の装置を備えたパワーポートを装備することで、低歪化を図るとともに透明度の高い量感豊かな低音再生を得たという。
一方の同社のミッドレンジR200はシリーズの上位機と同等のユニットを受け継ぎ、高性能化を果たしている。高域は40年以上にわたるトゥイーター研究により生み出された25mm口径ピナクル・リングラジエーターを搭載。ポートには特許取得済のX‐Portが採用され、色付のないクリアな高域再生を可能にしている。
■このプライスが信じ難いほど迫力ある実在感のある音質
ES20はペア5万円強。ウーファー口径やサイズ、仕上げなどを考えたら信じ難い価格設定といえる。本機は厚みと力感のある中低域からハイエンドまでスムーズに伸び、帯域バランスの整ったサウンドを実現している。『シカゴV』を聴くとマッシブな響きのキックドラムがリアルに再現され音像の輪郭や制動を甘くすることがない。これはパワーポートの効果だろうか。
また、大口径フロアタムやスネアドラムのパワフルな連打にも俊敏に反応しスピード感がある。3管のブラスは彼等らしい力強さが感じられる。ハーモニーは濁りがなく美しく、ヴォーカルの音像も実在的で、バックのコーラスにも端正に再現される。本機は彼等の生演奏の迫力を感じるような音量でも楽しめる小型スピーカーと言えるだろう。ペア5万円強というプライスが益々信じ難くなってくる。
■全般的に質感が向上する透明度や情報量も格段
上位シリーズのR200は、ES20に比べ明らかに両エンドに伸びが感じられる。全般的に質感が向上するとともに鮮度、透明度、情報量が高まっている。
そして「リターン・トゥ・フォーエヴァー」のタイトル曲、イントロのE・ピアノのシングルトーンと女性ヴォーカリストの高域スキャットの透明度の高い美しい響きは所謂モダンジャズと異なる趣があり、新時代のジャズと思わせられる。チック・コリアのアドリブ・ソロで本機はそのあたりを正確に引き出してくれるのが好ましい。
トップシンバルのアタック音もタイトで明快さがあり、余韻も強調感がなく繊細で軽やかさがある。アドリブ部の抑揚感のあるエネルギッシュなE・ピアノ・ソロの余韻も濁りがなく安定している。音量を上げて聴くと1972年の両グループの東京公演が思い出される、素晴らしいサウンドが堪能できるスピーカーである。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)
【試聴音源】
本記事は季刊オーディオアクセサリー vol.184 SPRINGからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから
■ブランドが設立された70年代の音楽とともに
ポークオーディオはマット・ポークが大学の友人たちと1972年に設立したスピーカーメーカー。筆者の記憶では1980年代初頭に日本に輸入され、1990年代後半まで発売されていたが、以後輸入が途絶えていた。
1972年というと筆者の好きなアメリカのジャズやロックに大きな動きがあった。ジャズではチック・コリア名義で発表した「リターン・トゥ・フォーエヴァー」が大ヒットした。本作はモダンジャズのような泥臭さがない爽快なサウンド。演奏で年代終盤のフリージャズ以降の混迷していた米国ジャズ界に新風を吹き込んだ。
ロックでは1969年にデビューした3管のブラス・セクションを擁した7人組のシカゴが発表した第5作『シカゴV』が全米第一位を獲得。本作に収められたアメリカ独立記念祭が催されたセントラル・パークの情景を歌った「サタデイ・イン・ザ・パーク」が大ヒットしている。
当時、ブラスを加えたロックバンドが幾つか登場したが、早めに終了していた。シカゴが現代まで活躍しているのは全米位獲得という実績からだろう。同年に米国トップの売り上げを誇る同社が設立されたのは単なる偶然か??
■2つの人気シリーズのなかで最大のブックシェルフを選択
今回試聴したのは2モデル。スタンダードな “シグネチャー・エリート” シリーズは「ES20」、上位の “リザーブ” シリーズは「R200」。それぞれシリーズ中で最も大きなサイズのブックシェルフ型だ。
ES20は25mm口径のテリレン・ドーム・トゥイーターにより40kHzという超高音域再生を実現している。ウーファーはマイカ強化ポリプロピレン・コーンを採用。リアのポートには、ポートの空気の流れをスムーズにすべく緻密に設計されたホーンのような形状の装置を備えたパワーポートを装備することで、低歪化を図るとともに透明度の高い量感豊かな低音再生を得たという。
一方の同社のミッドレンジR200はシリーズの上位機と同等のユニットを受け継ぎ、高性能化を果たしている。高域は40年以上にわたるトゥイーター研究により生み出された25mm口径ピナクル・リングラジエーターを搭載。ポートには特許取得済のX‐Portが採用され、色付のないクリアな高域再生を可能にしている。
■このプライスが信じ難いほど迫力ある実在感のある音質
ES20はペア5万円強。ウーファー口径やサイズ、仕上げなどを考えたら信じ難い価格設定といえる。本機は厚みと力感のある中低域からハイエンドまでスムーズに伸び、帯域バランスの整ったサウンドを実現している。『シカゴV』を聴くとマッシブな響きのキックドラムがリアルに再現され音像の輪郭や制動を甘くすることがない。これはパワーポートの効果だろうか。
また、大口径フロアタムやスネアドラムのパワフルな連打にも俊敏に反応しスピード感がある。3管のブラスは彼等らしい力強さが感じられる。ハーモニーは濁りがなく美しく、ヴォーカルの音像も実在的で、バックのコーラスにも端正に再現される。本機は彼等の生演奏の迫力を感じるような音量でも楽しめる小型スピーカーと言えるだろう。ペア5万円強というプライスが益々信じ難くなってくる。
■全般的に質感が向上する透明度や情報量も格段
上位シリーズのR200は、ES20に比べ明らかに両エンドに伸びが感じられる。全般的に質感が向上するとともに鮮度、透明度、情報量が高まっている。
そして「リターン・トゥ・フォーエヴァー」のタイトル曲、イントロのE・ピアノのシングルトーンと女性ヴォーカリストの高域スキャットの透明度の高い美しい響きは所謂モダンジャズと異なる趣があり、新時代のジャズと思わせられる。チック・コリアのアドリブ・ソロで本機はそのあたりを正確に引き出してくれるのが好ましい。
トップシンバルのアタック音もタイトで明快さがあり、余韻も強調感がなく繊細で軽やかさがある。アドリブ部の抑揚感のあるエネルギッシュなE・ピアノ・ソロの余韻も濁りがなく安定している。音量を上げて聴くと1972年の両グループの東京公演が思い出される、素晴らしいサウンドが堪能できるスピーカーである。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)
本記事は季刊オーディオアクセサリー vol.184 SPRINGからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから