【特別企画】評論家・土方久明がレビュー
マランツ「MODEL 40n」の多彩な魅力を徹底解剖! テレビもオーディオもイケる、デザインも◎なプリメイン
マランツはAVアンプを長年作っており、HDMI周りの知見には長けているが、MODEL 40nが行ったHDMI入力の高音質対策はかなりのものだというのが実際に聞き取れる。
MODEL 40nに入力されたHDMIの音声信号は、HDMIインターフェースを通らずDIR(デジタルオーディオセレクター)回路に直接伝送されるほか、回路周りやグランドの見直しも実施されている。また、HDMIのデバイス周りの低ノイズ対策も徹底されている。
開発時には、サウンドマスターの尾形好宣氏が試聴室にARC対応テレビを持ち込み、最も音が良かったモデル(テレビによって予想以上にARCの音が違ったとのこと)をリファレンスにMODEL 40nと接続して徹底したヒアリングテストを実施しながら、コンデンサーや抵抗などのパーツをチョイスしていったという。
また、MODEL 40nのHDMI入力はARCとともに、テレビの電源ON/OFFなどと連動するCECにもしっかり対応。テレビとの電源連動だけでなく、例えばApple TVやAmazon Fire TV、レコーダーやゲーム機などとの入力切替も連動する。日常使用におけるユーザビリティもしっかり確保しているのだ。
■ピュアオーディオとしての実力もチェック
最後はマランツ尾形氏が製品開発などに利用している試聴室で、B&W「800 D3」と組み合わせ、ガチのオーディオマニア視点でプリメインアンプの音声品質を確認した。ここは、結論から話せば、かなり良質な再生音だ。全体的な音質は、価格帯的に1つ下のモデル「PM8006」とは少し別の次元にあり、MODEL 30の仲間だとあらためて感じた。
オーディオ的なfレンジ、Dレンジ、情報量などの再生能力は高いが、キャラクターとして中低域の質感が柔軟で、重心が低く質感が柔らかい。より音楽性の高さを意識している印象があった。同時比較ではないが、このあたりには、MODEL 30とは違う音質的なキャラクターを保有していることが感じられる。
ハイレゾファイルのアデル「Easy on me」(44.1kHz/24bit)は、ボーカルの実体感が強く等身大にセンター定位する。ベースの重心も低く、駆動力が要求される800 D3のウーファーも中々上手に駆動しており、中低域に厚みがあるが、それをしっかり出して、そして止めている。
オーケストラの小澤征爾「2021セイジ・オザワ 松本フェスティバル」は、聴感上のS/Nが高く、小音量時の弦楽器の質感は艶やかで、ヴァイオリンのリアリティも高い。そして、何よりも音楽的に長時間聴いていられるリズムの良い音だった。
■MODEL 40nは “一歩抜け出す音質” を持つHDMI搭載プリメインだ!
今回、MODEL 40nを体験して実感したのは、ハイファイ用途のプリメインアンプとしてCDプレーヤーやレコードプレーヤーなど従来のオーディオ製品に対応しつつ、ネットワーク再生やスマホとの連携など、現代のソースへの対応が強化されていること。
さらにそれにとどまらず、テレビとの組み合わせや、Apple TVを始めとするキャストデバイスやゲーム機ともつながり、それらをピュアオーディオファンでさえ納得できるレベルの音で聴かせるという、今までにない魅力を持つことだ。
また、デザインについて1つ大きな発見だったのは、リビング空間への融合の高さだった。今回、テレビと同列に並べて設置されたMODEL 40nは、インテリアと調和しつつ、適度な個性もあり、印象深かった。
それにしてもHDMI入力の音の良さは実に強烈で、僕の知る限りだが2チャンネルのプリメインアンプでHDMIの音質にここまで注力したモデルはなかったはず。HDMI入力が搭載されたモデルが徐々に増えてきているが、その中でも一歩抜け出す音質がMODEL 40nには備わっている。
ともすれば、多機能であることは各機能が中途半端であるというイメージにも繋がりかねないが、MODEL 40nはそうではない。フルサイズのプリメインアンプに必要とされる音質的クオリティを備えながら、高品位なHDMI入力やネットワーク再生機能を付加したことは、極端なエンジニアリングの縮図として評価したい。機能を追加してもハイファイ用のプリメインアンプとしての音質が実現できるなら、このクラスのアンプではHDMI接続への対応はもしかしたら今後のデファクトスタンダードになるかもしれないとさえ感じた。
アンプのリプレースと同時にネットワーク再生機器の導入を考えているオーディオファイルをはじめ、自宅のリビング空間に最上級のサウンドを導入したいと思っている方、そして、テレビの音のグレードアップを考え、さらにそのグレードを一般的なHDMI入力付きのアンプよりも大きく高めたいと思うような方にはこれ以上ないモデルだと断言できる。ぜひ注目して頂きたい。
(協力:ディーアンドエムホールディングス)