PR開発者に訊く “製品の裏側”
大口径ドライバー&ANCで6千円台! VGPでコスパ大賞、SOUNDPEATS「Mini Pro」の魅力に迫る
感想はひと言でいえば「余裕」だ。10mmという口径ゆえか、低域はしっかり沈みこみロック/J-POP系音源でもシャカシャカしない。ウッドベースは弦のたわみを感じさせるし、スネアもアタックから余韻まで広い帯域をしっかりカバーし、重心の低さを実感させる。aptX Adaptiveというコーデックの特性も手伝ってか、ロスレスはロスレスらしく歪みを感じさせず、エコーの音場感・空気感まで余すことなく伝える。
この余裕はどこからくるのか。バイオセルロース振動板がその役割を果たしているのではとの目論見のもと、Mini Proの製品企画担当 黄建華氏に訊いてみると、質問文の10倍ほどのボリュームで回答が返ってきた。
「振動板の技術は進化を続け、ダイヤモンドライクカーボンやグラフェンなどの高級素材が登場し、特に超高音域における性能向上が認められます。しかし、SOUNDPEATSでは3年前から全製品にバイオ素材振動板を採用しています。他の素材より中域の応答性能に優れ、ボーカルも柔らかく表現できるからです。現在のところ、バイオセルロース振動板がSOUNDPEATSの目指す音にもっとも適していると考えています」
確かに、ボーカル帯域の自然さ・柔らかさは、ここ数年のSOUNDPEATS製品に共通するところ。Mini Proでその印象を強く感じるのは、採用から数年が経過しバイオセルロース振動板を使い慣れてきたところに、aptX Adaptiveの情報量・解像感が加わったからなのだろう。
ノイズキャンセリング機能で電車でも快適に
もうひとつの売りであるANC(アクティブ・ノイズ・キャンセリング)も、手堅くまとまっている。フィードフォワード/フィードバックマイクを活用するハイブリッド方式ということもあってか、ガタンゴトンという電車の走行音も自動車によるロードノイズも、意識の外へ追いやることができる。
正直なところ、専用チップを積む最新・最先端ANCイヤホンのノイズ低減効果には譲るが、駅のアナウンスを聴くときに役立つパススルーモードを装備するなど機能的に見劣りするところはなく、6千円台というプライスタグを思えば、許せるどころか “ありがたい” レベルだ。
ところで、Mini Proではクアルコム「QCC3040」組み込みの機能を利用し、ANCを実現している。チップ数を減らせるぶんコスト面では有利だが、満足行く性能を引き出すのは難しいといわれるこのANCソリューション。はたしてすんなり完成に至ったのか、それとも試行錯誤があったのか。再び黄氏に訊いてみた。
「ANC関連で苦労した点は2つ、ノイズ低減効果を高めることと音質の確保です。前者はクアルコムの技術陣と密に連絡を取り合い、より強力なノイズ低減アルゴリズムを提供してもらうことで問題解決につながりました。後者はDSPの演算性能が大きく関係しています。ご存知のとおり、ANCでは通常の出力に騒音の逆位相波を重ねることでノイズ低減を図りますが、そのとき加える補正がDSPの演算能力を超えると不自然な音になってしまうのです。そこで補正レベルを調整すべく数十回もテストを繰り返し、ようやく完成させたという経緯があります」
やはり汎用SoC組み込みの機能でANCを実現するのは一筋縄では行かない、つまりは専用チップがなくてもANCの効果を引き出すには、チップベンダーの支援体制を含めた総合的な技術力/開発力が必要ということなのだろう。