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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第266回】

DITA新イヤホン「Perpetua」が過去最高レベルの高音質!大好物な超ハイエンドイヤホンに出会ってしまった

公開日 2022/07/14 06:30 高橋 敦
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Perpetuaは楽曲のメロウさを引き出してくれる



次にPerpetuaで様々な曲を聴いた印象をお伝えしていく。

宇多田ヒカルさん「BADモード」では、まず何よりも、声の優しさや厚み、充実感に耳を奪われた。声の瑞々しさや湿度感といった要素の表現はこのイヤホンが特に得意とするところのようで、宇多田さんに限らず、例えば早見沙織さんなど、僕が好む女性ボーカル全般と相性抜群。表現が柔らかさに偏って声の抜けが損なわれるようなこともない。

ソフトタッチでありつつ抜け感も良好という持ち味は、この楽曲の、ビンテージ録音風というかカーペンターズ的というか、モコッとした感触も含める形で巧く仕上げられたベースとドラムスにもフィットする。その感触をしっかりと生かし、その上で現代の録音としてクリアさの部分も生かして、「古めの音なんだけどスッと抜けて届いてくる現代的なクリアさもある」という、この絶妙さをちゃんと再現してくれる。

そして中盤、水音のようなものを背景とした展開部の美しさは感動的だ。音の分離感を強調しすぎずに、音の重なりやつながりを生かすこのイヤホンの特徴が強く発揮される。「マーブル」や「グラデーション」といった言葉を想起させる、この場面の複雑なサウンドが見事に描き出されている。その後のボーカルのエコー成分の残り方と消え方の美しさも完璧。

「BADモード」でもギターのチャリンとした鈴鳴りに感心させられたが、ジュリアン・ラージ「Etude」やジミ・ヘンドリックス「Little Wing」など、ギターが主役の曲ではさらに、ギター描写の見事さを見せつけられる。

クリーントーンな音色の表面の艶やかさの方が際立って美しく、それでいて音色の芯のパキッとした硬さも損なわれていない。まるで、芯を残しつつ柔らかめに炊かれた白米の粒だちのようだ。

他も、ベースの深く豊かな響きからグロッケンシュピールの柔らかな輝きまで、どの帯域もどの楽器も、それぞれ細やかな描写と優しい感触で再生する。それもあってかこの曲に限らず、様々な表情や雰囲気を含む曲から、そこに込められた「メロウ」な表情や雰囲気を特に引き出してくれる印象もある。

例えば田村ゆかりさん「Melody」。歌も楽器も全体にカッチリしすぎず、おかげでメロディとその歌い回しのしなやかさが際立ち、まさにメロウ。

またこの曲のリズムは、リズムをカッチリと縦に区切っていくようなドラムスと、細かな動きでリズムを横にも揺らしていくベースのコンビネーションで構成されている。それをこのイヤホンとしっかりとしたアンプを組み合わせて聴くと、Perpetuaの特色からベースの音色のしなやかさや伸びが引き出され、それがしっかり制動制動されて、スタッカートも決まることでフレーズの躍動感が強まり、リズムのソリッド/グルーヴィのバランスがグルーヴィ側にやや傾く印象にもなる。個人的にはこれも好み!

余裕ありのパワフルアンプと組み合わせたい



さて最後に、KANN MAXには4段階のアンプゲイン切り替え機能が用意されているので、それとの組み合わせを試してみた。ちなみに本稿におけるここまでの試聴は、あらかじめのテストで好印象だった「中ゲイン」で行っている。

以下は各ゲインに切り替え後、中ゲイン試聴時の音量におおよそ合わせたボリューム設定での試聴印象。つまり低ゲイン時はボリュームを少し上げ、高ゲインおよび超高ゲイン時は少し下げている。

アンプゲイン切り替えは音量調整のしやすさを高めてくれると共に音質調整にも役立つ

●超高ゲイン:音像が少し飽和する気配
▲高ゲイン :良好
●中ゲイン :良好
●低ゲイン :全体が少しスッキリする印象

超高ゲインでは、ほんの少しだが、音の輪郭が崩れそうな気配が感じられた。「様子がおかしいぞ……そうか!急激に増加したパワーに肉体が追いつけてないんだ!」的なあれだ。しかし実際に音像が崩れるわけではなく、その手前の「崩れそうな気配が感じられる」程度なので、あえてそのギリギリ感を楽しむのもありかも?

対して低ゲインは「普通にパワーダウン」という感じ。それぞれの音に込められる力感が弱まり、その力の抜け方によって、よく言えば「全体的にスッキリ」という印象になる。

だがこちらは正直、達人の脱力!みたく良質な力の抜け方というわけでもなく、単に弱体化という印象。アンプへの要求強めなイヤホンにはやはり、それに応えて余力のあるアンプまたはアンプモードを合わせるのがよいということだろう。

DITAが到達した洗練の極み



本当にもう、個人的には「何の文句もないサウンドですありがとうございます!」だ。この音作りは好みに合わないという人でも、「自分には合わないけどこの方向性を突き詰めたらこういう音になるのは理解る」のような納得は得られることだろう。そういった完成度に達している。

また同社ハイエンド機の流れで言うと、
●Dream:外装は無骨で音も質実剛健!
●Dream XLS:外装にも音にも色気が生まれてきた
●Perpetua:外装も音も艶やか!
といった感じで、装いと音が一致して変化してきた印象でもある。ボーイッシュ元気幼馴染が外面も内面も洗練された大人の異性に……的なやつ。

それにしてもお値段がお値段なので、このモデル自体は「ほんと余裕のある人だけ検討してください」だ。

だがこのモデルの開発で得た知見は、同社の今後のラインナップにもガンガン投入されてくることだろう。このところDITAからは10万円を切るモデルが出ていないので、そろそろそれも期待したい。現在のDITAが作るエントリーモデルはきっと素晴らしいものになるはずだ。

そんな「DITAの次の10年」への期待まで膨らませてくれるのだから、Perpetuaは最高の10周年記念モデルといえる。



高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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