白銅の限定DAP「SP2000T Copper Nickel」を組み合わせ
Astell&Kern × Campfire Audio「PATHFINDER」レビュー。今あえて有線イヤホンを選ぶ喜びがここにある
本体だけでなく、付属アイテムの充実も見逃せない。銀メッキOFC採用の付属ケーブルは、絡みにくさと巻きやすさ、使用時の線材歪みの低減を考えての、フラット形状の採用が特徴。さらに、3.5mm/4.4mm/2.5mm端子の全バリエーションが標準付属されている。プラグ部は樹脂モールドで耐久性を高めた上で金属製カバーを装着し、ハイエンド機にふさわしい外観も演出されている。
ケーブルがフラット構造かつ外皮がクリアなので確認しやすいが、シングルエンドもバランスも同じく4芯構成のようだ。つまりシングルエンドケーブルでも、左右のグランド線はDAP接続側プラグ時点からセパレートされている。
イヤーピースは、シリコンイヤーチップ(S/M/L)に加えて、同じくシリコン製のfinal Eタイプ(XS/S/M/L/XL)、Campfire Audio製のMarshmallowフォーム(S/M/L)が付属。シリコンの2種は、同じシリコンでも傘の形や高さに厚み、開口径など別物なので、装着感にしても音質面にしても、綿密なセレクトが必要となる。
華やかなメリハリサウンドを鳴らす、限定DAP「SP2000T Copper Nickel」
そして、今回の試聴でPATHFINDERと組み合わせるDAPは、Astell&Kernの最新機種SP2000T Copper Nickel。ベースモデル「SP2000T」の筐体材質を、標準のアルミから銅とニッケルの合金「白銅」に変更した限定モデルだ。
白銅は管楽器にもよく使われる合金。トランペットなどが金色に輝いていれば「黄銅=真鍮」製、銀色に輝いていれば銀メッキ真鍮または「白銅=洋銀=洋白」製だ。ギターのフレット材「ニッケルシルバー」も白銅の別名。Astell&KernのDAPハイエンド機で採用例の多かった真鍮と同じく、「楽器での使用例も多い、銅主体の合金」というわけだ。
アルミに対して、導電性の高さなど真鍮筐体と共通の強みを備えつつ、耐食性は真鍮を上回り、メッキ等の処理なしでも筐体の美しさを保てるのがポイント。しかし加工難度は高く、そのためこの製品も数量限定生産となる。
基本仕様はSP2000Tと同様。最大の特徴は「トリプルアンプシステム」で、OP-AMP/TUBE-AMP/HYBRID-AMPの3つのアンプモードから自由に切り替えられる。ソリッド素子のアンプ回路とNutube真空管のアンプ回路の音、さらにはその両者をブレンドした音を、気分やイヤホンに合わせてセレクトできるのだ。
アルミ筐体モデルと聴き比べると、まず、高域がブライトにしてウォーム、目に痛いような強い輝きではなく、細やかで柔らかな煌めきを感じさせるものへと変化するのが印象的だ。
単に高域が強まるのでは楽器のエッジが尖ってしまいがちだが、白銅筐体による変化はそうではない。音像本体のエッジというより、音から広がる響きの輝き方が変わるような雰囲気。ギターでいえば「しばらく弾いてこなれた弦から新品の弦に張り替えたときの響き」が近いかもしれない。
低音側では、ベースはその音像を膨らませることなく重心を下げ、密度感を高めてくれる感触だ。腰を落とした構えから打ち出されるボディブローの重み、そんなイメージが浮かんでくる。
白銅筐体の音の特徴を総じて言葉にするならば、「音楽的な華やかさやメリハリ」だろうか。ただ派手になるのではなく、あくまでも音楽的な演出。それを感じられるサウンドだ。