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PRナチュラルかつ素直で完成度の高いサウンド

驚異の空間表現力。Maestraudio「MA910S」は“超高コスパ“な実力派イヤホンだ

公開日 2022/09/14 06:30 草野晃輔
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優れた表現力と均整の取れたバランスを両立! 完成度の高いサウンドに圧巻



試聴にはAstell&KernのDAP「A&norma SR25 MKII」を使った。昨年秋に発売されたDAPで、同ブランドではエントリークラスでありながら、デュアルDACを搭載。FLACやDSDといったハイレゾ形式の音楽ファイルをネイティブ再生できるうえ、Android用アプリをインストールすることで音楽サブスクサービスも高音質で楽しめる。搭載するイヤホン端子の種類が豊富で3.5mmステレオミニに加え、2.5mmバランスと4.4mmバランスを備える。MA910Sだけでなく、さまざまなイヤホンをこれ1台で楽しめる。

アステル&ケルンのDAP「A&norma SR25 MKII」を使用して試聴を実施

ハイレゾファイルを聴こうとDAPに接続したMA910Sを耳に装着する。筐体が軽量なこともあり、重さをほとんど感じない。イヤーピースが耳道をぐっとグリップし、吸い付いたようにフィットしているのだ。そのため、少し動いたくらいではズレない。ケーブルはしなやかで取り回しに優れ、タッチノイズも少なく気になる場面は皆無。これなら自宅で楽しむだけでなく、毎日持ち運んで歩きながら聴いたり、電車の中で聴いたりとストレスなく使える。

イヤーピースが耳道をぐっとグリップし、吸い付くようにフィット。重さを感じない軽量設計も装着感の向上に寄与する

付属品のシリコン製イヤーフックを使用することでさらなる装着感のアップを図ることができる

最初に再生したのは、筆者がレファレンスにしているビル・エヴァンス・トリオの名曲「Waltz for Debby(take 2)」。一聴して、素直でナチュラルなサウンドが耳に飛び込んで来る。ややタイトな低域は、弾力があり量感に富む。ピアノの中高域は、輪郭が明瞭で一つひとつの音が小気味よい。

この曲はジャズクラブ、ヴィレッジ・ヴァンガードでのライブを収録したものだが、音が奥行のある空間に広がりながら消えていく様子までわかる。原音再生を強く意識した本格志向のサウンドはクラスを超えている。本当に10,000円前後なのかと、思わず耳を疑ってしまうほどだ。

一般的に10,000円前後で買えるイヤホンには、低域や中域の耳に残りやすい音が強調された、やや派手な色つけの製品が少なくないが、MA910Sはそれらとは一線を画す実力を備えている。

Official髭男dismの「ミックスナッツ」は、イントロから活き活きとしたベースが躍動する。ボーカルはサビでハイトーンが続くが、伸びやかで刺さる感じがない。ギターもホーンセクションも音にキレがあり疾走感が楽しい。ロックやポップスのような音数が多いサウンドも、曲の良さをさりげなく引き出しつつナチュラルに奏でてくれる。

プレイヤー側プラグはL字形状をを採用する

A&norma SR25 MKIIにAmazon Musicアプリをインストールし、ストリーミング再生も試した。映画『ONE PIECE FILM RED』の主題歌となっているAdoの新曲「新時代」は1音目から、ソロボーカルの迫力に圧倒される。解像度が高くエネルギー感に富み、ファルセット(裏声)も美しく伸びやか。目の前で歌っているかのように生々しい。

他にどんなジャンルの楽曲に合うのかを探ろうと、アニソンやシティポップ、クラシックなど複数の曲を聴いたが、ウェルバランスでどれも小気味よく丁寧に描く。この価格帯で、ここまで曲調に左右されず楽しめるイヤホンは貴重だ。



MA910Sの魅力は、低域から高域までフラットかつナチュラルにならす素直なサウンドにある。かといってモニター的な淡泊さではなく、ビブラートのような繊細な音を高解像度で細部まで描く緻密さや、低域がズンズンと迫るような力強さも表現できる。

これだけ高い実力を備えていながら、10,000円前後という価格設定は、“超高コスパ” といっても過言ではない。国内製造という安心感まで付いてくる。今まで数千円クラスのイヤホンを使っていて少し上のクラスも試したいというエントリー層はもちろん、数万円クラスのイヤホンを既に使っているというマニア層まで満足できる、完成度の高い逸品だ。



(協力:アユート)

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